世界は偽善と無知でできている

主人公は全盲の学生。
世間からは憐憫という名の差別を受けていると感じている。
そういった偽善を感じない2人の友人は心の拠りどころだったのだが、ある時みんなで心霊スポットに出かけて行って……、という物語です。

間違いなく怖い話です。
が、どの辺が怖いかというと、怪異の恐さというよりは、閉鎖していくしかない主人公の心の旅路の暗さです。

盲者であるというだけで差別をされることが嫌なのは分かります。
でも、偽善を感じないという理由だけで選んだ友人たちは盲者に対する理解がなく、危険な場所につれ回しておきながら、どうやら主人公を守る意志もなさそう。その無垢さの正体は無知と蛮勇なのかもしれません。

差別か無知かの選択肢しかなかった主人公の世界はもともと狭かったわけです。
なのに、2人の友人を亡くし、怪異からも(おそらく見えないからという理由で)見逃されて、ここでも仲間外れ。残ったのは差別だけ。
おおう、ものすごぉーく怖い話だー!

現実的にはと考えるとツッコミどころも、まあ、あるんですけど。
それはどうでも良くて。
小説として実に読みごたえがありました。

こういう暗さをエンターテイメントの中で表現できるのって、ホラーってジャンルの良さだと思います。
いやあ、ホラーって本当にいいもんですねえU^ェ^U

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