棘–2

ある日体に棘が生えた。


いつの間にか生えていた。


内側から発露した棘は、私を刺した。

手を伸ばさなくても、私は痛む。


ずっと、永遠に。

されど。

きっと、治る。


棘はどこから生えてるの?

根っこはどこに、葉はあるの?

いずれは枯れゆくのでしょうか?

棘はさっぱりなくなるの?

こんなに瑞々しい棘なのに。


その内に、砂のように消える棘。

さらさらさらり。

はらはらり。


私の肉が、虚を埋める。

いつかの私が、埋めると言った。

それまで私は生きるのか。

苦しいのに?

それでも私は生きるのか?

いつになるのか、わからない。

棘無き日は。

いつくるのか。


痛みのない日。

辛苦のない常。

自由な日常。


その日が無事にきたならば、くるならば。

痛む体とおさらばし、どこまでも行こう。

私の足で。

疲れた足を休ませて、水を掬って飲もう。

私の手で。


水滴のついた手をはらって、光を乗せた風を聴こう、そんな世界を眺めよう。

私の耳で。

私の目で。


腰を落ち着け、出会った友と語らおう。

私の口で。


いつかの日々を待ち望もう。


棘の生きる、この体で。

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眠れぬ夜は羊数えず言葉を浮かす 仄々忱(紫村彰) @honobonomakoto

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