第4話 プリっとした芋虫助けました。(4)

「…。」


顔の傷が無い。


呪いの様に、いつもまとわりついていた恨めしい傷。


それが無い。


鏡の中には、中学生の頃見た私だった。

少し大人びたのだろうか。

顔がシュッとなっている。


ゆっくりと顔を確かめる様に指で撫でる。


「ゔっ…ゔっ…」


込み上げる思いと、現実かどうか確認したい気持ちと、様々な気持ちが溢れ出てくる。


ふと後ろから温かく、そっと抱きしめられた。


優しくトントンとあやす様に。


「ゔわぁぁぁぁんッ」


その晩は、私の大好きなオムライスだった。

作る時間のかかるオムライスは久しぶりで、いつもより甘く、幸せな味だった。


✳︎


 顔の傷が無くなりエンエンと泣いてしまった翌日朝。私はリビングのソファで寝てしまったようだ。しかし私はしっかりと気持ちを切り替えた。


「うん。忘れてたけど、何かいるんだよね。よし、お父さん、こげ丸貸して。」


お父さんの膝の上で丸くなりブラッシングしてもらっていたこげ丸を奪い取った。


私は今から自室の謎の生物と対面する。

そこで少しでも安心をしたいのでこげ丸を抱きしめ立ち向かう所存だ。


扉を開け素早い動きで電気をつけた。


私のベッドにはモゾモゾと動いている何かがいる。くそう、お布団の中にいるじゃ無いか。


勇気を出してゆっくりとお布団をめくった。



するとそこには手のひらサイズの羽の生えた小人がスヤスヤと眠っていた。

その小人は、薄緑色のショートヘアで、角度によっては虹色に見える小ぶりな透明の羽に、ピンクローズのフワッとしたワンピースを着ている。


しばらく目を見開いてフリーズしていたがこげ丸が抱っこを嫌がったので、こげ丸を下ろしてちょっと冷静になった。


「…えっと。これってもしかしてのもしかして?え?妖精?!」


いや、冷静にはなっていない。

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妖精プルちゃん! ぱっちょ @0810mfmf

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