6話 『壊れゆく日常』

「……立ち入り禁止、か……」


当然だ

昨日あれだけ破壊された商店街に入れるわけが無い

警察や検察の人たちが沢山いて商店街の入口には黄色の立入禁止を示すテープが貼られている

商店街に入れないため少し遠回りしなくてはならないが、頭の整理をするためにはちょうどいい


「あら、アキちゃんじゃない」

「!肉屋のおばさん」


商店街をただ眺めている俺に肉屋のおばさんが話しかけてきた

肉屋のおばさんはよく俺にコロッケをご馳走してくれた人でとても朗らかな人だ

いつもニコニコと笑顔なおばさんは気丈に振舞っているがいつもよりも顔が暗い


「今から学校?」

「まぁ……」

「そう……。気をつけてね。また商店街みたいなことにならないとは思うけど、念の為」

「……分かった、おばさんも気をつけて」

「ええ、行ってらっしゃい」

「行ってきます」


おばさんは俺のことを孫のように思ってる節があり、その顔には心配が浮かんでいた

その様子に申し訳ないと思いながらも、心配されてることの嬉しさが同時に湧き出てくる

少し後ろ髪を引かれる気分だったが、俺は学校へと更に足を進めた



──────────────

「晟!」

「田中。はよ」

「うん、おはよう……。じゃなくて!昨日大丈夫だった!?」


校門につき、いざ学校へ入ろうとした瞬間、聞き慣れた声が聞こえてくる

田中が小走りで俺に近寄ってきて、俺はいつものように「おはよう」と声をかけた

そしたら律儀に挨拶を返してくれる田中だが、すぐさま首を振り顔に冷や汗を浮かべていた


「昨日の!大丈夫だった?すごい騒ぎになってたけど……」

「ん?ああ、大丈夫だ。心配かけて悪かったな」

「……無事ならいいんだけど……」

「おう!見ろよこの見事な上腕二頭筋を!このムキムキボディがあれば傷1つつか……」

「ふざける余裕があるなら大丈夫だね。早く教室に行こうか」

「はい」


俺の渾身のギャグをスパッとぶった斬られ若干ショックを受けたものの、教室へ近づくにつれて浮かれた気持ちは落ちて、その代わりに胸を占めるのは緊張と恐れ

昨日の瑠璃の忠告

その意味と、何故未来を知っていたのかを聞く勇気が俺にはあるのか?

そんなことを考えていたらいつの間にか教室の扉の前に着いていた


「……」

「……晟?どうしたの?顔色が悪いけど……」

「……いや、なんでもない。大丈夫だ」


無意識のうちに手が震え、汗が吹き出してくる

顔から血の気が引く

くそっ……!腹を括れ金剛晟!

昨日のあの忠告の意味を聞くんだろ!?


「……っ!」


俺は、意をけして教室の扉を開いた

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