パーティーガチャなんてスキルもろてもどうすりゃええんですかい
黒犬狼藉
第1話
「おい、渡す祝福間違うてるんちゃうんか?」
「間違っていません、アナタの祝福は『パーティーガチャ』です」
「うっせやろ? マジで言うてんの? 他が聖剣とか、そんなんやのに俺だけ『パーティーガチャ』ぁ? ちょっと見直してみぃや」
「何度も言わせないでください、アナタの祝福は『パーティーガチャ』です」
神に突っかかる関西弁の少年、あらため彼の名前は
クラス転移で異世界に行き、世界を救うために求められた26人の転生者の1人である。
そんな彼だが、貰った祝福に不満があるらしい。
困った様子で、神様に詰め寄っている。
「そないアホな話があるか、いやな? 別に強いモンを渡せつってるわけじゃないぞ? ただ使い方のワケも分からんモン渡されて戦えなんて、そないな話があるかいな」
「分かりました、ではオマケであなたの職業を『パーティーリーダー』に固定しておきますね。いい職業ですので、変更できないようにしておきましょう」
「なんか地雷っぽい雰囲気感じるんやが!? 気のせいか!? オレの気のせいか!!?」
「次の方ー」
さらに文句を言おうとする南の口を封じ、次々と処理をする神。
全員に祝福を配り終えた神は、そのままフガフガと叫ぶ南を含めたクラスメイトが光に包まれていく。
地面に浮かび上がった五芒星の魔法陣が回転を始め、彼らを包み込んでゆく中。
神は、最後に言葉を紡いだ。
「どうか、世界に巣食う罪禍の王に鉄槌を」
神の祈りか、或いは願いか。
神秘さを伴ったその相貌は、酷く彼らの脳裏に焼き付くだろう。
ただ一人、未だモゴモゴと叫んでいる南を覗いて。
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転移は無事に成功し、彼らは勇者召喚を行った王国に保護された。
そして彼らは王国が用意した迷宮へと潜り、自分のレベルを上げていく。
唯一、
「んで、何でオレだけ迷宮に行けへんのや!! もう三日目やぞ!! みんな装備が日々豪華になってるっていうのに、オレの装備は学生服ってなんやねん!! 鎧とか皮装備とかオレだってつけたいわボケェ!!」
「だから、貴公の職業では装備をつけた瞬間に重量過多で動けなくなってしまうと言っているだろう!!」
「分かっとるわ!! だから大人しゅうココに居るんやろうがボケェ!!」
「ならば黙っていろ!!」
彼は叫びながら地面に倒れ、汗だくのポロシャツを脱ぎ捨てる。
日差しが強く、そして気温が高い。
真夏日和、余りに厳しい日差しにため息を吐き捨てながら額に垂れる汗を拭う。
そして、南はため息を吐きながら上半身を起こした。
「ほんで、オレのスキルの詳細が分かったんやて? ちょ、教えてや」
「スキルというより祝福だ、ソレで名前は『パーティーガチャ』でまちがいないな? 過去に一度だけ保持者が居たという記録があった。そのスキルの効果を端的に説明すると、祝福のレベルに相応しいパーティー分のランダムな召喚獣を呼び出せるスキルだ。事前に確認したとおりだな、間違いなく」
「レベルアップ次第で結構化けるって考えたらわるくないんけ? 問題はオレの職業が『パーティーリーダー』でなければな」
男騎士の説明に理解を示した南は一旦胸を撫で下ろし、そして頭を悩ませる。
職業『パーティーリーダー』、これは上級職に分類される職業ではあるのだが……。
だが、その中でも最初に取るべきでない職業とされている。
「『パーティーリーダー』、確かに弱い職業ではない。むしろ、強いと言っても過言でないな。ただし、レベル上げができる環境でならば」
「話を聞けばレベルアップ補正が0.01とかなんやって? HPが100で職業レベルが1レべ上がって101にしかならないって訳やろ? フザケとんのちゃうんか? あの神」
「その反面スキルは優秀だ、その祝福込みでならば十分に有用だろう。問題となるのはスキルを入手するための戦闘が行えないほどに弱いという一点だ」
「何度も言うけど、どないせぇっちゅうねん」
天を仰ぎながら、南はそう愚痴をこぼす。
現在『パーティーガチャ』で召喚可能なモンスターはすべて弱い、スライムが3体とそのスライムよりも弱い南一人のパーティーでどうやってレベルを上げればいいのだろうか?
つまりは、そういう事だ。
「結論は変わらんな、今のままで第二等級の迷宮へ向かっても死ぬだけだ」
「しゃぁねぇ……、仕方ない。オレはこのままお荷物かいな、マジで」
「……提案はある、聞くか? ミナミ」
「お? そないな名案があるならさっさと言えや」
ため息を吐き、男騎士は首を振る。
そして、イヤイヤといった様子ではあるが男騎士は言葉を切り出した。
この状況を打開する、ある種の愚案を。
「貴公、私の股間を全力で蹴り上げろ」
そういって、男騎士は苦々しく。
顔を歪めて、そう告げた。
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