第25話
「嫌だったら答えなくてもいい。」
「うん。」
「どうして、来たの。」
私から、奪わないで。
私の大切な人を。
「…暉を…」
彼女は庭を見つめてゆっくり呟く。
「娘を守りたかったの。」
17歳の、あどけない顔が。
「私みたいに、追い詰められるような、逃げ出したくなるような思いをして生きて欲しくなったから。」
しっかりとした母の顔を持っていて。
「なんて…言ってたら聞こえはいいけど。
ほんとはね、私が怖かったの。耐えられなかったの。
死にたいってあれほど思ってたはずなのにね…
あの日の痛みは忘れられないの。
痛くて痛くて、死が目の前に迫ってきてるのが怖かった。」
横目で彼女の顔を見ると、体を震わせて涙を流してる。
彼女の傷は、見た目の傷だけじゃない事を知った。
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