第20話

目が覚めて、暉の腕が首に絡まりリアルに痛かった頬の痛みは暉の踵落としだったことが分かった。



でも、まるでそこにいたみたいな。


私の首を絞めるその手が現実感のある感触で…




まだあの家で晴とあの地獄の生活を続けてる錯覚さえ覚えた。



嫌な感覚。




暉の酷い寝相を直してそっと部屋を出る。




誰かを起こしてしまわないように静かにキッチンへ向かい冷蔵庫からミネラルウォーターを出して春の静かな月を縁側で見つめた。







夜はとても静かで、誰も私を攻撃しない。




私だけの時間。





「光…」




ふいに、紡ぎたくなった。



あなたの名前。





何してる?



約束、覚えてる?




次がまたあるなら…



私たちの話をしよう。




幸せだった。



あの時の。




そして、思い出してくれたなら…

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