第17話

ずっと考えてた。


妊娠したと、あの人から伝えられた後。



時々思った。



もし本当に生まれていたら、その子は幸せなのだろうと。





金持ちの家で、何不自由なく生きてるんだと。




酷い仕打ちを受けてきたと聞かされた時から今日まで、考えていた。


この子が、幸せだと口にしてくれる日は来るのか。





「迷惑じゃない。誰か言ったか?」




そう言って、昨日の出来事を思い出す。


我が娘が言っていたと。




「蓮華が言った事、気にしてるなら気にしなくていい。

俺からもう一度話す。」




「此処の人はみんな優しいですよ。

蓮華ちゃんの言うことは最もですし。

私はいつも人の輪を乱すから…」




「それ、本気で思ってるのか?」




「え?」




「本当に、いつも輪を乱してるのはお前か?」





「もっと、自分の気持ちに正直になれ。

そんなに自分を蔑むな。

お前はいい子だよ。

いい子すぎる。

だから、そんなに泣くなよ。」




17歳の、小さな肩に、どれほどの荷物を担いできたのか。


俺には計り知れない。


でも、その涙は17歳の素直な涙だった。



田邊組 正和 side End...

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