第7話

他愛ない話をしながら、倉庫へはすぐに着いた。



車を降りて、みんなは中へとぞろぞろ入って行く。


私の少し前を歩く虎を、私は呼び止めた。




「…ごめん。」




「どうした?やっぱまだ具合悪いか?」



主語のない謝罪は、虎を余計に心配させただけだった。




「ううん。そうじゃなくて…

少し前に…その…」




私の言わんとする事がわかったのか、虎は小さめにあぁと少し俯き気まずそうに自分の頭を触る。



「あの時は、本当にごめんなさい!」




「俺も、悪かった。」




「そんな!虎は全然…」




「そりゃ空がそんな状態だったのは知らなかったけど、俺ももっと気が利けばよかったと思ってた。」




虎が気が利いてないわけない。


心配して声をかけてくれて、私が置き去りにしたかばんを持ってきてくれて…


あの時あれ以上の気があっただろうか。




「でもさ、もしまだまだ謝るつもりでいるなら、今度困った事があったらまず困ってるって言えよな。

なんもできないで後からごめんって言われるより、最初から助けてありがとうって言われたいよ、俺は。」




「虎…」




「約束できるなら許してやる!」




にかっと笑って手を差し出してくる虎に、私はあの時払ったこの手を、強く強く握りしめた。

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