第4話 悪夢の映像
暴力による恐怖で思考を奪う。そんな予想が頭をよぎる強姦魔の行動。
ともかく、もう一度その動向を確認しなければ、全てを判断することはできない。
「話は分かった。さっきのメール、もう一度見せてくれる?」
「は、い……どうぞ」
その男と希美のやり取りを最初から見直してみた。
最初はレイプしたことを非難して、ホテルに呼び出されたりしていたようだ。
【消してください】【最低です】【人間のすることじゃない】【やめて、彼氏には言わないで】
そう言った抗議のメールが続いているものの、相手はまったく意に介していない。こういったことなど慣れているのだろう。
上手いこと転がされている印象を受ける。
聞いた風貌だと随分と粗野で荒い印象を受けるが、言葉巧みに希美を言いくるめて、段々と心を開かせている様子が克明に記されていた。
いや、これは心を開かせているというより、選択肢を狭めて思考を鈍らせ、相手の言うことに疑いを持てないように誘導されている。
大体にして、この男はどうやって俺にバラすつもりだったんだ。
初めは相手を罵倒していた希美だったが、生来の気弱な性格からあまり強い言葉を使うことを得意としていない。
それに相手はそんな希美の言葉など意にも介していないらしく、なんだかんだで言いくるめられている。
「なるほど……これは希美では言葉の掛け合いで勝てるはずもない」
こいつは、随分と話術に長けているようだ。
恐らく直接会っている時も、言葉巧みに希美の意識を誘導していたのだろう。
一種の洗脳だ。脅しで呼び出して、言葉巧みに希美を騙し、身体の関係を結ぶことが同意の上であると言わされてしまっている。
これは、果たして犯罪行為として成立するのだろうか。知識が無いから判断し辛いが、強姦した女性を逆らえなくしていく状況を示す証拠として効果はあるのだろうか。
乱暴な言葉と態度で希美に恐怖を植え付け、時折優しい態度で相手を飼い慣らしている。
DVをする奴の常套手段じゃないか。悪質極まりないぞこれは。
更に確認していくと、俺は一本の動画を見つけた。
「この動画……まさか、これ……」
「そ、それはっ!! ダメッ、見ないでッ!!」
「君の言っていることを確認する為だから……」
再生してみると、希美が相手のそれをしゃぶらされている様子が映し出される。
そこに映り込んでいる希美がしゃぶっているモノを見て、俺は目を見開いた。
「なんだこりゃ……デ、デケェ……」
相手の大きさに嫌な汗が流れる。
洋物のAVくらいでしか見た事のない、洒落にならない巨根が映し出され、乱暴な言葉を使ってしゃぶらされている希美が抵抗しながら従わされていた。
「クッ、こ、これは……クソッ、実際見るとキツいな」
俺は再び頭が沸騰しそうになる。
そこをグッと堪えて動画の音声に耳を傾ける。
そこから、動画は何本にも渡ってメッセージ上に載せられており、2ヶ月前から週に1本か2本のペースで送られてきていた。
ハメ撮りの連続。
乱暴な言葉と暴力的な行為で従わせ、段々と抵抗の意思を奪われていく。
俺とは一度もしたことがない行為を、その男と幾度となく繰り返している様子が撮影されている。
俺の知らない恍惚の表情。一度として引き出した事の無い艶かしい動き、喘ぎ声。
全部全部、俺が知らない希美がそこにいた。
希美はサイズの差に狂っていた。子宮を突かれるたびに、見たことのないアヘ顔を晒し、自ら腰を振って快楽を求めている。
しかもこれは……俺が希美に送った勝負下着。
誕生日に一緒に買いに行って選んだ、俺だけが知っているはずの勝負下着じゃないか。
「ん!?……んぐっ」
「アッ君ッ!?」
俺は耐え切れず、急いでトイレに駆け込んだ。
「うげっ、んげぇええええっ、ごっ、えがぁああっ、はぁ、はぁ……おぇえぇえええ」
とうとうせり上がってきた内容物をぶちまけ、吐瀉物をギリギリのところで便座に吐き出す。
「はぁ、はぁ、はぁ……クソッ……クソッ」
腹の底から湧き上がってくる衝動的な怒りが脳髄を焦がし、ヒリつくような痺れと共に喉から叫び声をひり出した。
「クソッ、クソッ、くそぉおっ! クソがっぁあああああっ!! うおおおアァアアアアっ!!」
俺は扉に拳を叩き付け、何度も何度も怒りをぶつける。
拳だけでは我慢できず、壁に頭を何度も打ち付ける。
「アッ君ッ、お願いやめてッ!」
「希美ッィイッ!!」
沸騰した意識が暴力的な衝動を引き起こし、視界に入った不愉快な女の胸ぐらを掴んで手を振り上げる。
「あぐっ!?」
「ふざけやがってッ! ふざけやがってッ! ふざけやがってぇえええっ!! 何だあれはっ!? なんなんだよアレはっ! レイプって話じゃなかったのかよっ! なんで自分から求めてるんだよぉおっ!」
「あぐっ、ううっ、んんっぎぃい」
壁に押しつけた希美の胸ぐらを掴んで締め上げる。
苦しそうに呻く彼女を見ても、憎しみの感情が霧散することはなく、激しい憎悪が渦巻いた。
「クッ……ぐぅっ、ぐぅうっ……ギギッ……」
視界が涙と怒りで真っ赤にゆがみ、握り絞めた拳から流れ出した血が床にこぼれ落ちる。
振り上げた拳を向けられた希美は、目に涙を浮かべながらも、それこそを望んでいた事のように微笑んだ。
「殴って……気の済むまで……どれだけ酷いことしてもいい……私を罵って……」
目に涙を浮かべ、小さく微笑む彼女の顔に正気を取り戻す。
「……くっ……」
ギリギリのところで理性を取り戻した俺は、強く掴んでいた服から手を離す。
「アッ君……」
「んんんっ! んがぁあああああっ!!」
ガツンッ!! ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!!
怒りにまかせて頭を床に打ち付ける。
希美が止めるのも振り払って幾度となくぶつけ続け、おでこを切って血まみれになるまでやめることができなかった。
「うがぁあああああああああああああっ! ッ!」
俺の意識は、そこで途切れてしまった。
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