30-32

熊埜御堂ディアブロ

30-32

 ▽30日▽





 灰色のアスファルトに、飛べなくなった蝉が一匹落ちていた。妹が近くにあった小枝でつっつくと、羽を羽ばたかせて地面の上だけを飛び回る。青色の空に見放されて、灰色の土に縫い付けられた様に、蝉はいくらもがいても、明後日の方向にしか進めていない。

 妹は小枝を手に持ったまま姉の手を握り、じっと蝉を見つめている。わたしも手を握られた意味を感じ取り、なんとなく一緒に蝉を眺める事にした。


 じ、じじじ。

 蝉は地面を飛んでいる。

 じじじ、じじ、じ。

 蝉は地面で鳴いている。

 じ。じじ。じ。じ。

 やがて蝉は動かなくなる。


 止まったのを信じたくないらしい妹は、手を握ったまま小枝で蝉を突っついた。ゼンマイのオモチャみたいに、不気味な音を立てながら蝉はまた動き始める。ほんの少し動いただけで、蝉はまた止まった。

 小枝の先を妹が揺らしたので、蝉がまた動かないといけないのを見たくない、反射的に口が動いた。

「だめ!」

 思考と言動が同時進行して共鳴する。妹の眼が、素直に姉の眼を見つめる。わたしは妹に、蝉の事をどう教えようか迷った。事実を事実として教えるのか、絵本みたいに教えるのか、それともごまかして帰ろうとするか。

「蝉さん。もう、休ませよう。」

 夏の暑さに頭をやられたか、わたしは適当なこじつけでその場を紛らわせようとしていた。申し訳ないけれど、暑いからさっさと家に帰りたい。

「休むの?」

「うん。蝉さんも、夏にずっと鳴いていたから、疲れちゃったの。」

「ずーっと、鳴くの?」

「夏の間、ずーっと、ずーっと、鳴いていないといけないの。」

「ずーっと……」

「蝉さんが、夏を暑くしているの。そうじゃないと、夏は夏じゃなくなっちゃうの。」

「じゃあ、すごくすごく、長いお休みなんだね。」

「うん。ずっと、お休みするの。」


 妹は小枝を投げ捨てて、わたしが即席で作り上げた夏の大使にお辞儀をした。どうしたのと尋ねたら、夏を貰えたからありがとうを伝えたの、と要約すればそう教えてくれた。本当、適当に作り上げた話の筈なのに、考え直して振り向けば、わたしも蝉にお辞儀をしていた。

 ゼンマイをギリリと冬から春まで巻いて、夏に力を発散する。そのエネルギーが夏の時間を生み出しているんだ、と冗談で言われても、きっと誰もが少しは納得してくれるだろう。妹が蝉の声を寂しそうに聞いている様子を見ていたら、先程まで夏の暑さをけだるく感じていた事が、とても申し訳無くなった。少し歩調を下げて、ゆっくり蝉のくれる夏を味わう事にした。





 帰宅後すぐに妹は、本棚から「蟻とキリギリス」の絵本を取り出した。夢見がちなのに質問ばかりして何かを求める妹に、わたしはいつもその場凌ぎの解答をしている。段々つじつまが合わなくなってくるのが難点だけれども、そこで食い違いが生じてもわたしは責任なんかきっと取らない。

「アリと、セミ。」

「蟻とキリギリスじゃないの?」

「ううん。まえにお姉ちゃん言ってた。」

 そういえば……学校で先生に教わったのだ。アリとキリギリスは元々、蟻と蝉が出てくるお話だった。しかし外国では蝉があまりにもマイナーすぎて、蝉の名前は誰にも伝わらなかった。だから、日本に来る頃には、蝉はキリギリスに変わっていた。外国人が日本に来た際、蝉の鳴き声を聞いて、

(木が鳴いている!)

 なんて驚いた経緯がある程らしい。日本では蝉の方が一般的に思えたから、木が鳴く、の言葉と一緒になんとなく教えた。

「セミ、冬がくるまで生きていられないのに。」

「……蟻は、冬を越す為に一生懸命働いたんだよ。」

 一生懸命なんて、夢のある人に嘘をつくように遣う言葉。普段は思い出す事さえない。言うだけ言うと疲れがどっと来る無気力な単語。

「お姉ちゃん言ってたじゃん。セミが、ナツを暑くするんだって。」

「うん。さっきの帰り道に、言ったよ。」

「そうしたら、アリはセミを怠けてるって馬鹿にしてる。でも、セミが消えたらナツが終わる。アリはセミに、ありがとう、なんて言わない……。」

「……蝉は、夏を暑くしてくれている。」

 驚いた。適当にわたしが言ったお話を繋ぎ合わせて、糸を紡いで布を作っている。妹は、わたしの適当を使って世界観を築き上げている。

「ナツが終わらなかったら、アリだって冬を越すために働かなくってもいいのに。」

 夏休みが、確かに終わりを迎えている。今日は八月三十日。妹は、わたしが夏の間に話した言葉を紡いで、蝉と夏に物語を見ている。

「あたし、ナツ、終わらせたくない。」

 妹は絵本を開いたまま、壁にかけられたカレンダーを見ている。明日か明後日には破かないといけない。九月になってから、八月がちゃんと終わってから破ろう。そう、妹に伝えた。





「夏休みももう終わりだな、洋子。」

 適当な話題しか振らないこの父親に、わたしは適当な会話しか返さない。父が適当さを込めて口を動かすのなら、その程度でしか返せないに決まっている。それは母に対しても一緒で、箸を進める事を主体にしている人が、そうまともな返答をする筈が無い。

「宿題とかやったの?」

「終わりました。」

 そう、とだけ言い、母はまた箸を進める。咀嚼する度に動く顎、ねちねちと肉を噛む父、そしてわたしの顔から何かを拾おうとする妹。

「優子は、宿題とか無いのか?」

「あるけれど、お姉ちゃんが手伝ってくれたよ。」

「なら、いい。新学期の準備をしっかり、しておくんだぞ。」

 肉を噛む。飲み込む。肉を噛む。飲み込む。

 箸を動かす。米を食べる。咀嚼する、咀嚼する。

 わたしを見る。何かを得ようとする。両親を、見ない。

「御馳走様。」

 食器を片づけた後、わたしは食卓に戻り、じっと両親の様子を見る。両親は苦労を積み重ねているのだろう。でも、わたし達を顧みてはいない。

「ごちそうさま。」

 妹が食べ終わると、食器の片づけを手伝い、すぐに二人の相部屋へと戻った。ただ少し見てくれればいいというのに、その兆候すらない。





「夏が、ずっと続けばいいのにね。」

 わたしは夕食の疲れから、そう無意識に漏らしてしまった。感情の無い食卓にせめて質問さえ無ければいいから、無理に作り出す会話は酷く合わない。その質問一つだけで全てが揺らぐ。長い夏の時間で気持ちが大きくなっているのか、反感の度合いもそれだけ大きい。

「ナツが続くの?」

「なって欲しいねって……。」

「なるもん。」

 何を根拠にこんな言葉を言えるのだろう。思い返すと、原因はやっぱりわたしの言葉にあるのだろうか。……わたしも、夏が永遠に続く物語が何処かにあればいいな、そう思っている。断片的に外へと飛び出し、それを妹が拾った。

「続くよ。セミがずっと、鳴いていればいいの。」

「でも、9月から、夏は薄れていくよ? 終わらなくっちゃいけないの……夏は。」

「終わってほしくないのに、なんで、終わるって思うの?」

 絶対に避けようのない、受け入れがたいが、そうせざるを得ない終わり。夏が、現実から少し離れた場所にいるからこそ、この曖昧な国境でずっとパスポートの端をいじる。


「お姉ちゃん、ナツが続いて欲しいって、思ってる。」


 そう言うと妹は、絵本を片手に布団へと入り、にこやかな表情を顔に張り付けたまま眠りについた。声をかけても返事はしない。わたしも布団に潜り、妹とは違う表情を顔に残しながら、目を閉じた。

 8月が終わり9月になる。刺す程に強い日差しと熱風。じめじめした夜の空気。足の裏に触れる砂の感触。ほんの少し暖かい海水。海の温度は時間と共に冷たくなり、色も落ち着き、曇りがかかるにつれ、風は冷気を帯び、夜はしんと静まりかえり、空気は緊張を増していく。

 まぶたが落ちる。蝉の音が、ぷつりと切れる。

 じじじ。じじ。じ。



 ▽30日▽



(夏は終わりを迎えます。夏は終わりを迎えます。)

 木をスピーカー代わりに、そう叫んでいた。セルロイドみたいな羽根はおもちゃみたいなのに、木々が鳴いている様子は、現実的だった。

(夏は終わりを迎えます。)

 声が一回。蝉が一匹、地に落ちる。宙を舞う事は二度となく、アスファルトの上に縛り付けられている。

(夏は終わりを迎えます。)

 声が一回。蝉がまた一匹落ちる。くしゃり、少しだけ湿ったプラスチックの音。

(夏は……夏は……。)

 幾度と繰り返される声。その度に、木々は鳴く事を止め、果実の代わりに蝉を落とす。アスファルトは蝉を土へは還さない。死に際の彼らを太陽は容赦なく照らす。湿った音が段々と、無機質で乾いた音に変わって行く。

 風が吹いた。葉が擦れる音はあんなに躍動的なのに……きっと木々を離れたからだ。蝉にとっても木々は生命線なんだろう。

(夏……夏……。)

 声が途切れ途切れにしか聞こえない。あの「終わりを知らせる蝉」は、ああして夏を終わらせるんだ。始まりを知らせるのが蝉なのなら、終わりを知らせるのも蝉。

(なつ、なつ。)

 足に力が入らない。羽根は動く。木に捕まっているのが難しい。鳴かないと、夏が終わってしまう。いけない。鳴かないと、夏は暑さを失ってしまう。

(……。……。)

 何も聞こえない。足に力が入らない。体が、何にも触れていない。振動すらしていない。背中からアスファルトに落ちれば、

(夏は終わりを迎えます。)

 目の前には、「終わりを知らせる蝉」がいた。青い空を仰げば、わたしが地から這い上がった時よりも、色が薄い。季節が変わるんだ、夏は終わらなければならないんだ。



「夏は、終わらないといけないんだ。そう思うよね。お姉さん。」

 姉は、夢の中だとわかりながらも、蝉に向かって躊躇いながら頷いた。蝉を地に落としていく様を傍観していた姉は、そこで眼をゆっくり開いた。





 時計を見れば、暦が変わってから3時間は経つ。真っ暗な窓の外を見ると、30日の終わりなのか、31日の終わりなのか、曖昧になってきた。日付を再確認しないまま、姉は再度横になる。

 もう夏が終わってしまう。8月何日かの夜の回想は全て、妹の強く握りしめる手の感触と、蝉の声が全て地面に落下する錯覚に包まれた。しかし隣で静かに寝息をたてる妹は、絵本を抱えたまま何かを見る。妹の顔を覗くと、落下した筈の鳴き声は息を吹き返した。

 じ、じじ、じじじ。

 蝉の声が広がる。



 ▽30日▽



 アリとセミが絵本にいる。アリは行列を作って、餌をせっせと巣に持ち帰る。セミは夏を暑くする為に、木に捕まってせっせと鳴く。アリがセミにこう言った。

(セミはいいですね。木陰でそうして涼んでいるなんて。)

 その絵本を見ていた妹は、声を出して、ちがうの、そう叫んだ。

(違う。どうして? 蝉は怠けているから、冬に死ぬんだ。)

(ちがうの。セミが必死に鳴くから、ナツを暑くするの。)

(知らないんだ。秋が来ると、やがて死に凍えるような冬が来るのを。)

 アリは以後、聞く耳をたてようとはしなかった。側で鳴いていたセミが言葉を発した。

「セミが夏を暑くする。秋はいろんなものが死ぬ準備をする季節。冬はいろんなものを弔う季節。」

「とむらう?」

「弔う。大きな、終わりが来るの。」

「終わり……?」

「終わり。受け入れるか、頑張って抵抗するしか無い。ワタシはこうして、『ナツはまだ始まっています。』と皆に伝えて、セミがナツを暑くする指示をしているだけ。」

「はじまり……。」

「妹さん……ね。夏、終わるのは嫌だよ……ね。」

「……うん。」

 アリが遠くで何かを言った。終わり、始まり、その二つの言葉だけ、絵本の持ち主は辛うじて聞き取れた。

「ワタシは、大きな終わりに殺される。そうすれば夏は終わっちゃう。」

「……始まりの、セミさんは。ナツが終わるのは怖い?」

 怖い。そう呟いた後に、始まりを知らせる蝉は続けた。

「大きな終わりの後にいる人はね、その緊張感をずーっと引き続けないといけない、って思っちゃうの。」

「きんちょう?」

「えっと……ゴムをね。ぎゅーって引っ張ると、どうなる?」

「のびる。」

「放すと?」

「ちぢんで、どっかいっちゃう。」

「放せないの。終わりが怖くて、ゴムを。」

「ふーん。はなしたら、どこかにいって、なくしちゃうもんね。」

「そう。だから、終わりの後は過去の中で生きているようなもの。昔の中で、今を進まないといけない。ワタシは過去に殺されて、八月の終わりにまた殺される。」





 夜が明けて、ナツが始まるまで待つ。





 ▽31日▽





 早朝から妹は、紙袋一つを持って近所の森へと出掛けていったらしい。朝食を作っている途中の母にそう教えられた。食卓の上に二人分しか用意されていない意味を悟り、わたしは妹を探しに向かう事にした。一緒にいるのが当たり前でしょ、と注意を喚起する母の眼を見ているのも嫌だとも思ったから、出掛ける時は黙って外へ出る。玄関で靴を履いている間、食事の音はハッキリと聞こえた。

 朝から太陽は疲れを知らず、雲で自らを隠す事も知らず、恥ずかしげも無く空に自らを晒す。熱気は家に籠もらない者を責め立てる。森の木陰を眼にいれるだけでも体感的に違うだろう、わたしは早足で森へと向かった。一歩進むごとに、蝉の声は絶え間なく、陽炎の音を幾重にも奏でる。

 森に着くと妹は入り口で、汗と土の混ざる池に浸かったような匂いを放っていた。わたしが声をかけると、四つん這いの妹は立ち上がり、脱力した体と声でこたえた。

「抜けがらを、集めていたの。」

「抜け殻……どうして?」

 理由を答える前に、森の奥へとゆっくり進んでいく。草いきれに飲み込まれていく妹が遠くに感じる。額を伝う汗が風で冷やされ、唇を伝う。見失う前にふと我に返り、咄嗟に後を追った。

 一本の大樹の前で立ち止まり、根本を探し始めた。傍らには、茶色い紙袋がある。既に溢れ出している程の、蝉の抜け殻。木々も土も、わたしも妹も湿っているのに、紙袋と抜け殻だけは乾ききっている。夏の熱気に全てを奪われた死骸。

「お姉ちゃん、そろそろ来るかなって。だから入り口に向かったの。」

「……お姉ちゃん、手伝ってもいい?」

「うん。まだ、足りないの、セミ。」

 紙袋には、朝食に使う食パンが入っていた筈。中身の所在をたずねれば、木の枝に掛けられたビニール袋に入っていた。一枚だけ食べたらしい。これを叱って来るのが母からの大使の役目だけれど、生憎大使は主人に反感を持っている。忠誠心なんか無い。

 欠けて砕けたものでもいいらしい、死骸も必要らしい。ひたすら蝉の面影を集めるのが、妹に誰かから科せられた行動。わたしは母から科せられた命令を無視したけれども……。潤い輝く眼は、まるで現実には無い物まで一緒に拾っている。日向日陰構わず動き回り、地面に這い蹲るこの奇妙な仕事。妹と共にしていると、不思議は今日中に終わる気がしない。袋には収まりきらない抜け殻は、紙袋から溢れる山を作り、崩し、作り、崩し。

「紙袋じゃないと、嫌?」

「紙ぶくろが、いいの。」

 一カ所に集まったきりで持ち帰れない抜け殻、死骸が広げたっきりの透明な羽根。寂しげで、持ち帰らないといけない責任感がのしかかる。わたしはパンを二枚残し残りを投げ捨て、ビニール袋に入りきらないものを入れた。パンはわたし達の口の中で、ぼそぼそ咀嚼され飲み込まれた。

「この蝉達も、夏を頑張って暑くしてくれた。だから、蝉自身が生み出す暑さで、渇いてしまったんだよね。持って帰らないのは、可哀想だもんね。」

 持ち帰る為の口実。妹にとっての真実。妹は最初紙袋を眺め、溢れて収まりきらない蝉に気付き、うん、と快諾する。離れがたい夏は、少し遠ざかって感謝の気持ちを示す程度に収まった。わたしがビニール袋に抜け殻をおさめる横で、妹は延々と、楽しげに探し物を続けていた。





 妹は、両親からの叱責にも笑って応えていた。叱りきれない衝動をわたしにぶつけ、自室へ行くよう急かされる。喜んで、それこそ心で笑いながら自室に向かった。

 すぐに妹は、袋の中身から綺麗に土を取り除き、無傷の蝉と壊れた蝉とを分ける。抜け殻をカーテンにひたすらくっつけ、死骸を枕元に並べ、壊れた蝉は土と一緒に紙袋に納めた。終始笑っているものだから、聞かずにいられなかった。わたしも一緒に集めたのだし。


「優子……これは?」

「セミ。ずーっと、鳴くの。」

 昨日読んでいた「蟻とキリギリス」の絵本を取り出し、表紙に緑色のマッキーで大きく、

『32』

 と書いた。部屋一面に、高温の熱風に晒されたような甲殻類。そして新たな題名を付けられた絵本。学校の支度をしてある鞄を衝動的に覗くと、中身は昨日見たのと同じ中身。

 学校には行くのだろう。今日が31日で、明日が9月1日。その筈なのに、きっと一日以上のブランクが何処かにありそうな程、時間がゆっくりゆっくりと過ぎていく。秒針さえも進む事を忘れてしまいそう。仮初めの準備、そう心がラベルを張ろうとするこの身支度。

 部屋のカーテンを閉めたまま窓を開け、クーラーを止める。一連の作業が、何の躊躇いもなく行われる。咄嗟に妹の肩を両手で押さえ、昨日見た夢を穏やかに言う。

「……夏は、誰かが終わらせてしまうの。きっと。蝉か何かが、自分から、夏を止めてしまうの。」

 でも、妹はついにわたしの言葉を拾わなくなった。





 ひたりひたり。足の裏が廊下にくっつく。手には土の匂いが残っている。抜けがらみたいに、皮膚はかわいていない。遠くからはセミの声。明日には耳元まで近づく。

 リビングの音。ドアを開ける。紙袋を持って行った時は何も聞こえなかった。お父さんとお母さんがいる。話し声はしない。セミだけが会話している。水が流れる音。少し涼しいキッチン。

「おかあさん。」

「なに?」

「ナツって、なんでずっとつづかないの?」

「あ?」

「その……。ナツ休み。」

「ああ、んー。えっとね、いつまでも休んでいると、馬鹿になっちゃうからよ。」

「休んでない、あそんでる。」

「ああ、これ、お父さんの食事に持っていって。」

 キッチンに向かったっきり背中しか見えない。お母さんは、こちらを向かずに小皿を一枚差し出した。厚さの不均等なネギが、野原の草より刺激の強い臭いを放つ。少し眼がしょぱしょぱする。それを両手で持つと、すぐにお母さんの手は元ある場所に戻るように、キッチンに置かれた。背中が都会のビルみたいに、高く無気質にあたしを睨みつけている。

「おやすみっていうのはね、優子、」

「うん。」

「疲れている人にしか必要じゃないの。」

「あたし、つかれてない。」

「だから、夏休みなんて、馬鹿になるだけなのよ。」


 とんとんとん。かたかたかた。

 疲れている人の、音。





「おとうさん……ねぎ。」

「ああ……。」


 光の反射で向う側が見えない眼鏡は、皺の深く淀んだ皮膚にぴったり似合う。執拗に納豆のパックを、二本の黒塗の箸でかき混ぜている。

「……31日か。」

「うん。31にち。友達がね、おしえてくれたの。」

「ああ。」

「終わりの後は、きんちょうしつづけないと、いけないって。」

「へぇ、なんで。」

「大きな終わりを体験すると、昔で生活しないといけないんだって。」

 箸を机に投げ出し、醤油タレの入った袋を指で切り、流し入れる。小皿に盛られた、荒切りのネギを入れ、また箸を持ちかき回す。その行為はお父さんと、あたしの間にある壁のようにも思えた。理解できない行動を理解できない理由でする……納豆を混ぜることは、あたしの話よりも、理解できる事なのかな。

 お父さんの疲れが箸に現れる。白米の上に、表情を最初から変えずに、納豆を胸の高さから落とす。ねばっこい糸が箸に絡み付き、固まった粘液がだらしなく異物のように落ちる。箸で小刻みに空中を切ると、パックと異物の間にあった糸は、弾力も無く縮み消えた。

「優子、」

「はい。」

 一瞬、お父さんの表情がこわばった。時間を進めれば口から牙を出し鬼のような形相になりそうだったけれども、何かが邪魔をしたらしい。すぐにいつもの表情に戻った。笑わない、お父さんの口元が動くと、

「馬鹿言ってるんじゃない、明日から学校だろう、さっさと寝なさい。」

 朗読するように言う。黒塗の箸をわたしの顔に向けて指した。二本の棒の間に、かすかに切れていく糸が見える。眼鏡越しの眼はテレビと食卓しか見ていない。

「優子。早く、寝なさい。」

「……はい」

 お父さんも、何か「終わり」っていう酷い体験でもしたのだろうか。それとも、わたしのまだ生まれていない頃の、過去の時間で生きているのだろうか。ねばっこい納豆はゴムとは違い、糸をつくると素直に消えるのに。





 ナツが降りてくる。

 もう鳴き声しか聞こえない。



 ▽##日▽





 日めくりカレンダーをめくらなくちゃ。



 8月

 31日

 水曜日

 大勝

 TAXI予約の際は、○○タクシーへ。

 03-XXXX-XXXX



 紙を千切って、古い紙をメモ用に取っておく。後で電話の隣に置いておかないと、母に怒られてしまう。メモに使うのなら、新聞のチラシでもいいと思うのに、母はどうしてもこれじゃないといけない理由があるのかも知れない。きっと、自分の基準を他者にも当てはめたいだけなのだ。

 びりっ。びりっ。



 8月

 32日

 □曜日

 □□

 □□□□□□□□

 □□□□□□□□



 あれ。32日なんてあったっけ。まだ9月じゃない……学校の先生は……では9月にまた会いましょう、それまで授業なんか無いからね。そう言っていたから、今はまだ夏休みなのかな。

 もしかしたら、昨日の夜になんとなく感じていた予感が、本当になっちゃったのかも知れない。9月が消えちゃった。学校が無いと思うと、毎日見ていた日めくりカレンダーも、役割を終えて9月にバトンタッチする筈の8月のページも、蝉の声を十分に吸い込んだのに、まだ足りない、と言っているように見えた。

 鴨井にかけられた時計に眼をやると、ある筈の針は消えていた。秒針の、カチリ、カチリ、と空気を締め付ける音も無い。針は虚空を指して、忘却の上を回っている。テレビの上にあるデジタル時計には何も表示されていない。裏の蓋を取ってみても、電池は入っているのに動かない。テレビの電源をつけると、砂嵐が音をたてて流れている。いつまでも終わりのない、意味のない番組。


 32日。ずーっと8月の夏休み。わたしだけ、9月から外れてここに来ちゃったみたい。


 改めて、家の中を探してみる。父の緊張しきった書斎には煙草の臭いだけが巣くっている。知らない歴史が押し込まれた押入れは、相変わらずの静寂の中で物品達が寝息を立てている。トイレは独特の湿っぽさがあるだけ。キッチンには母の背中が残した威圧的な感情が、面影として残っている。寝室には妹の姿は無く、絵本も、奇怪な抜け殻も無い。

 誰もいないのかな。誰もこの家にはいないのかな。リビングは、時間を止めて誰かを待っている。父の乱雑にいつも置かれた新聞も、リビングには無いし、灰皿は新品みたいにオブジェとしてここにある。母のいつも立てる、けだるい水の流れる音もしない。味のしない食事の痕跡も無い。


 わたしだけ、32日にきちゃったんだ!

 きっとそう、終わらない夏にいるんだ!

 夏が終わらなければいいなんて何処かで思っていたから。


 蝉の声も変わらないし、太陽から注ぐ強い日差しも変わらない。青空はずっと向うまで続いている。でもどうして、間違いのバス亭で降りてしまった時のような恐怖が湧き上がるんだろう。突然、32日の意味に気づいて、こころとからだが切り離されるような圧迫に襲われた。

 家の中に、居たくない。わたしの居場所じゃない。衝動的に玄関へ向かい、道路へ飛び出した。脳裏に、「くるまは きゅうに とまれない」って書かれたポスターが見えたけれど、車に轢かれる事より、今わたしの肩に冷たい手を乗せたものの方が、怖い。

 ひんやりとした家の中から、熱気に包まれた夏の中に入ると、恐怖は拡散するように振りほどかれた。車の音すらしない。アスファルトが足元にひかれているだけの路上で立ちどまり、冷たい手を乗せたらしい家を振り返る。形を持って確かにそこに居坐ってはいるけれども、中に誰もいない場所なんて、他人の家くらい無関係で不可侵なものに近い。わたしの名字がかかれた表札をじっと見ていたら、

「芹沢」

 段々文字は、意味と音を集めるのを止め、草の束を担いだ人と、汗を出しながら歩いている人に見えた。わたしの名字だった筈なのに、集団に対する単位の筈なのに、意味と音を表す筈の文字なのに。それはまったく異質な記号の集団でしかなくなった。


 あれ、わたしっていま、32日にいるんだよね。

 世界、という場所にいるんだよね。

 でも、わたしは今、どこにいるの?

 わたしを取り巻くラベルが、細胞が剥がれ落ちる。

 8月の夏が引き伸ばされたまま、放す事も出来ずに保たれた鳴き声。

 9月には行けない。

 8月を放したら、どこか知らない場所に行ってしまう。

 8月32日は、ずっと夏の終わらない場所。





 風景はやがて、家の近所を逸れた辺りから歪曲し始めた。数少ないピースをコピーし、無理やり凹凸を変えてはめ込まれたようで、既知の世界観が当てはまらない。青い天井は時折断裂を起こし、割れた空白には蝉の群が見え隠れしている。群は冬を越す虫のように、集合しながら大穴に埋め込まれていて、蝉がこの世界の外郭を包み込んでいてもおかしくはない。恐らく、32日を創造した主が、この周辺を見知った経験が無く、蝉が経験の不足を幻想で補っているから。

 木々が鳴いている。そこに蝉がいるのではない。風が吹き葉が擦れると、蝉の様々な種類の声に変わる。蝉がこの世界の外側を覆い、木々がこの夏を暑くしている。

 髪を伝う汗を拭う事さえ忘れ、素足を焼けるような地面に乗せる苦しさも消え、段々と聴覚はかすれ、木々の鳴き声は背景音楽と同化していく。なにかにたどり着かないといけない。終わりを探すわたしは、文字通り終わりを探して歩き続ける。

 やがて、一本の大きな広葉樹が立っている野原に至った。たった一本あるだけで、周囲にはそれ以外何も無い。根本まで歩み寄ると、微かに何かが震えた声を出す。蝉が、根本に近い幹にとまっている。初めて、生き物を見つけられた事が、何となく疑わしい。それに、鳴いているのは今までの木々とは違い、

「……セミ?」

 蝉だった。疲れ切った声で、独り言がにじみでた。蝉は鳴く事をやめた。

「……どうやって、此処に来たんだい?」

 声がした。

「ここ……ここって、どこ?」

 返事をした。

「32日。」

「カレンダーにも、そう書いてあった。日にちはわかるの、でもおかしい場所だって事もわかる。日にちが、場所を表しているっていうのも……なんとなく、わかるの。でも、どうして、32日なの?」

「ここは、夏の終わりなんだ。夏は蝉が作り出すもの、だから始まりを知らせるのも、終わりを知らせるのも、両方が蝉の役割。ここは、大きな終わりの控え室みたいなものだよ。ここに他の蝉がいないのは……終わりのセミである僕よりも、始まりのセミの場所にセミ達は向かったのかな。」

 迷子は、まずは頼れそうな人を探す。わたしには、このセミしか頼れそうな人はいないし、他に探そうとしても居なさそう。

「終わりなのなら、どうして秋が来ないの? 9月じゃないの、31日の次は1日でしょ?」

「それがおかしな事に、”始まったまま”でいるんだ。」

 終わりのセミは、納得のいかない様子で、ヒグラシの声で語った。

「夏は終わった筈なんだ、だから秋は既に濃密な死臭を鮮やかに放ちながら、冬へ備えるべきと周囲に伝えていく。でもどうだろう、まだ夏が来ているなんて空想を抱いたまま、蝉が鳴いているなんて幻聴に耳を傾けている。意味すら取り違えてしまいそうな状態なんだ。きっと時間の移行にすら盲目になりたい、そう本人達が望んでいるんだ。彼らは冬が嫌いだから、いつまでも夏に執着したまま季節を見る。」

 セミは、奇怪な物体の性質を冷静に分析したように事を告げた。濁りのない眼の光は薄く、そのせいかこの空間自体が薄暗く湿ったように感じられる。

「わたしも、夏にずっといたい。」

「うん。悪い事じゃないよ。でも、秋や冬に成熟を迎える者は、可哀想じゃないかな。」

「……。」

 わたしが押し黙るのを善しとしたのか、一言。

「夏はもう終わったよ。ここにあるナツも、じき終わらないといけない。冬に備えないと、君も凍えて朽ちてしまうよ。それを少なからず理解しているから、君は”始まりのセミ”では無く、”終わりのセミ”の元へ来た……そうだよね。」

 言い終えると、それ以上は何も語らなくなった。ふと足下に目をやると、蟻の行列が、せっせと蝉の死骸を巣へと持ち帰っていた。心なしか、葬儀の参列を行う喪服の集団に見える。静かに死骸を分解して、巣穴の中に引きずり込んでいった。





「内へと力を込める夏は、ホルマリンに浸る事を終えた体のように、物体としては凝縮されてはいるけれども時間を凝縮する事はない。どこかへと現実を揮発させているんだ。」

「内側へ……このナツの方向性は、どこの内側を向いているの?」

「終わりを避ける者は、始まりを絶対的な本流にしたいんだ。その種類の考え方は、過去の思考に執着している。始まったままでいようと望むのは誰なのか。検討はつくんだね。」

「……うん。」

「なら、ここから紅葉と、僕の羽根を一枚ずつ持って行くといい。木々を染め上げれば、木々は鳴き止みナツは消える。始まりのセミに終わりを告げれば、この日は暮れ、やがて9月に入る。でももう一つ……君が終わらせないといけないものがある。」

「妹に、ナツを与えたのは、わたし。」

「君の逃避を妹は、君が望む物語として見つけた。物語の中心線は、姉妹共に一緒だった。」

「わたしも、終わらせなくっちゃ。」

「そうだね。だから、戻らないといけない。」

 夏はもう過ぎないといけない。そう自分に強く言い聞かせながら、窮屈で圧迫感の強い終わりに袖を通そう。32日を終わらせようと決心すると、セミは幾重にも種類を重ねた鳴き声を一匹で合奏し、力強く体を震わせる。先ほどまで色濃い新緑を見せつけた大樹は、すぐに秋を吸い始めた。

 赤く染まった葉が一枚落ちてきた。拾うと、指からわずかばかりの振動が伝わる。音をまとい内側に何かを濃縮した一枚。触れる指先は、しん、と冷たい。それをすぐにポケットの中に仕舞った。

 その動作を確認すると、セミは大樹の頂に登り、叫んだ。

「夏は終わりを、迎えます。」

 大樹は枯れた。水々しさは消え、乾ききった色は蝉の抜け殻に似ている。枝は折れ葉は散り落ちてくる。突然の空間の異変に怖じ気付き、セミの声の穏やかさを思い出し、気持ちを落ち着かせようとセミを探す。セミは木から力なく落ちていて、濁りきった眼を何処へ向けるでもなく、渇いた甲殻を地に投げ捨てるように眠りについていた。急いでセミを手に取り、その場を離れる。容赦無く降り注ぐ枯れ葉はやがて地面を押し込み、野原全体を隠してしまった。バキリと大樹が折れる音、32日の秒針がやっと目を覚ました音。太い幹が倒れると野原は消え、アスファルトの道路が目の前に広がった。





 遠くから声がした。終わりのセミとも違う、細く高い声。始まりのセミはあたしの横でじっと動かないでいた。空を見て、と言う。見れば、青い天井が音を立てヒビ割れていく。亀裂は枝分かれし、細かく網状の模様を作り上げていく。

『ナツは終わりを迎えます。』

 木々の鳴き声が薄れた。葉が擦れる音が聞こえる。遠くの景色から、新緑が紅葉へと変わっていく。終わらない夏に、何処かから終わりがやってきた。

『ナツは終わりを迎えます。』

 やがて木々は姿を消していく。空間を補いきれない蝉達は、少しずつあたし達の周辺へ集まってくる。皆、口々に夏の終わりを拒絶している。風が吹くと、乾いた葉の擦れる音、冷たく皮膚を撫でてくる。草いきれは薄れ、木陰の濃密な光と影は薄れ、抵抗する蝉の鳴き声は薄れ。ナツが薄れる。

『ナツは終わりを迎えます。』

 声はこちらへと近づいてくる。始まりのセミがあたしに向かって、ここまでだね、と言った。

「ペンで線を書く時に、ペンを紙に下ろすのが、ワタシの出来る事。でも終わりは、下ろしたペンを指一本で上げてしまうの。いくら始まりをワタシが告げても、ペンを紙に押しつけるだけ。例え強く始まりで押さえつけても、やっぱり終わりは指一本。」

『ナツは終わりを迎えます。』

 景色が狭まる。日差しが傾き、夕暮れが辺りに橙色の光を落とす。風は強く、ヒビの入った場所をカタカタならす。あたしが天井を見上げると、皆が怖がる『終わり』が分かった。書いている線が、ぷつりと切れる怖さ。

「貴方はワタシにお辞儀をしてくれた。ワタシは貴方にナツを与えた。大丈夫。ずっと、休む訳じゃないから。」

「なにが終わるの? ナツ? 夏? セミ? 蝉? 先が暗くて寒くて、一人だよ。」

 青い天井が剥がれ落ちる。裏には真っ黒な何かがある。その裂け目からナツの暑さが逃げていく。空気はひんやりと冷え、気がつけば蝉の鳴き声は一つも聞こえない。

『ナツは終わりを迎えます。』

 日が暮れ、夜が降りてくる。天井が崩れ落ち、それに合わせて「終わりの何か」が一歩一歩と近づいてくる。染まる木々は目の前に近づき、遠くの木々は跡形も無い。ナツが狭まり消えていくけれども、何処へも逃げる事が出来ない。周辺に集まった蝉達が、一匹ずつ地に落ちていく。落ちたと同時に、蟻地獄のように、土の中に吸い込まれ消えていく。

『ナツは……。』

 見覚えのある、あたしとお姉ちゃんの部屋がフェードインした。足下には抜け殻と死骸。まだ始まりのセミはいるけれど、始まりを押しつける事は一切していない。

 やがてセミは、あたしでは無い何かに向かって語り始めた。

「物語の一部。あのセミも、ワタシも、物語の入り口周辺で鳴いていた。」

 部屋の中から、姿の無い声が聞こえる。

『始まりのセミ。終わりのセミの羽根を持って、ナツへと帰って。』

「物語。ワタシとあのセミは、一つのセミになるの?」

『始まりのセミ。終わりも、貴方が担うのがいい。』

 始まりのセミは、何処かから羽根を一枚拾う。そして、一言。

「さようなら、妹さん。」

 あたしの足下に落ちている、亡骸、死骸は気が付けば何処にもいない。始まりのセミは、そうして別れを述べた後、澄み切ったひぐらしの声で鳴き叫んだ。

「ナツの始まりは、終わりによって閉じられます。」

 暑さを奪い去った後の夜の日は寒く、窓から吹き込む風は湿ってはいるけれども肌寒い。布団の上に立ちすくむあたしに向かって、いつの間にか部屋にいる姉が、何かを言った。

「優子……終わったよ、ナツ。……ごめんね。」

 物語は終わり、姉の言葉を拾い集めた永遠の夏は、言葉を与えた本人によって崩される。体から力が抜けると、大きな終わりが心の中で爆発した。

 静かな夜の中に、セミはただ一匹すらも存在していない。部屋の中には、一欠けらのナツさえも残されていない。8月31の日めくりカレンダーを丁寧に破ると、9月1日が当たり前のように居座っている。幾ら9月以降のカレンダーを破ってみても、32日も8月もやっぱり、一枚として存在していなかった。

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30-32 熊埜御堂ディアブロ @keigu_vi

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