10年後のプロポーズ

白千ロク

本編

 出会ったのは14歳。つまり、進級に纏わるクラス替えの時。


 勉強に部活と忙しがったが、充実した毎日だったことをいまでも覚えている。高校生の時も大学生の時も所属している科や学部は違ったが、度々会いに来てくれた。相変わらずお互いに文武に時間を取られていたけども。


 ゆっくりとした時間を得たのは社会人になってからなのは笑うしかなかったよ。就職活動はキツかったんだけどさ……。


 またお互いに部署は違うが同じ会社に入り、いまに至るわけですが、ゴールは見るわけだ。出会って10年。口には出さなくとも言いたいことが解る距離感になってはいるが、それでも全て解るわけでもない。話してくれなければ一切解らないこともある。


 そう、自分に対しての気持ちとか――。


 同居しているし、嫌われていないことは雰囲気から察することができていたが、不安になる時もあるわけで。


 嫌われていないとしても、好きかと聞くことはもうできない。いまさら感が強すぎて無理。


 24歳の誕生日の今日にしても、自分がどう思われているのか解らないで悶々としているわけで。客観的に見ると情けない話かもしれないが、自分にとっては大事なことなのだ。


 それでも決めていた。この時を逃すと遅いのだと。



「――私とこの先も一緒にいてほしいから、サインよろしく」



 夕食後のケーキを食べ終わって片付けをしてから婚姻届を目の前の男に差し出すと、『先を越されたか』と苦笑した。


 彼からは「遅くなったけど、俺も今日プロポーズしようと思ってた」と返ってきて、婚姻届を渡された。


 なにやらお互いに考えていたことは同じだったらしい。


 2枚になった婚姻届はといえば、1枚はアパートに、1枚は市役所行きになりました。ちなみに、自分の方は書き間違いがあるかもしれないと5枚はもらってきましたよ。あちらが何枚もらってきたかは解らないが、書き間違い用に2、3枚はもらってきただろうね。




(おわり)

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10年後のプロポーズ 白千ロク @kuro_bun

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