十界を巡る少女の冒険譚:光も影も越えて世界を繋ぐ約束を果たします!

清泪(せいな)

十の約束

 遥か昔、世界は『十界じっかい』と呼ばれる十の異なる領域に分かれていた。

 それぞれの界には独自の文化や魔法が存在し、人々は自らの界を守りながら平和を保っていた。

 しかし、千年前、『破界の災厄』と呼ばれる大戦争が起こり、十界は分断された。

 それ以来、界を越えることは禁じられ、人々は自らの領域に閉じこもるようになった。


 光の都と呼ばれる第一界『リュミエール』の都では、すべてが輝く魔法で包まれている。

 そこで生まれた少女──エリスは、幼い頃から祖父に童話として語られていた他の界に強い興味を抱いていた。

 エリスは祖父の本棚から取り出した古い本で『十の約束』という言葉を知り、それが破界の災厄の原因だと考えられていることを学んだ。

 しかし、詳しい内容は祖父の持つ多数の本のどこにも記されていない。


 ある日、エリスは都の外れにある古い図書館に訪れた。

 都の書店には『十の約束』について詳しく記されているものが無かったためである。

 利用者も少なく寂れ老朽化した図書館の奥、何かに導かれるように辿り着いた本棚に一冊の隠された書物を見つけた。

 そこには、こう書かれていた。


「十の約束が守られたとき、十界は再び一つとなる」


 さらにその後には、十の領域それぞれに対応する試練が記されていた。


「十の約束を知りたいなら、風の声を聞け」


 書物の記載された指示に従い、エリスは祖父の反対を押し切り界を越える禁を破る。

 界を護る守り人に見つかれば、罪と裁かれ命の危険さえある。

 そんな恐怖心はしかし、幼き頃から育まれた好奇心が上回った。

 恐れをものともしない好奇心は『光の都』に隠された影達アンブラにエリスを引き合わせた。

 影達アンブラの協力によりエリスは光の都を抜け出した。

 簡単には帰って来れない。

 そんな忠告も『十の約束』に惹かれる彼女には、深く届くことは無かった。


 第二界──風の谷『アウレア』にエリスは辿り着いた。

 そこでは風精霊が空を舞い、常に心地よい風が吹いていた。


 谷を歩いていると、精霊の一人がエリスに話しかけた。


「約束を求める者よ、君が試されるのは『信頼』だ」


 試練の内容は、風精霊の中に一つだけ嘘をつく者がいるので、それを見抜くことだった。

 エリスは耳を澄まし、彼らの言葉を注意深く聞いた。

 最終的に嘘つきの精霊を指摘し、試練を突破する。

 すると精霊たちは光り輝く宝石を一つ差し出した。


「これは『約束の石』。次の界へ進む道を示すだろう」


 宝石に導かれ次に辿り着いたのは第三界──水の国『リヴァイン』だった。

 エリスはそこで『忍耐』の試練を受けることになる。

 氷の迷宮を進みながら、冷たさや孤独に耐え抜き、ついには出口に辿り着く。

 そしてまた新たな約束の石を手に入れた。


 第四界──炎の荒野『インフェルノ』。

 第五界──大地の国『テラノヴァ』。

 第六界──木の海『シルヴァリス』。

 第七界──影の領域『オブスキュラ』。

 第八界──音の城『ハルモニア』。

 第九界──空虚の浮島『アエテルヌム』。


 エリスはその後も他の界を巡り、それぞれの試練に挑んだ。

 『勇気』『希望』『犠牲』など各界で精霊から試練を課せられる中で、『光』に包まれ育った汚れなき少女──エリスは多くの困難を乗り越え、少しずつ成長していった。

 そしてついに最後の界『無の世界』へと辿り着く。


 第十界──無の世界『ニヒリティア』。


 無の世界で彼女を待っていたのは、一人の少年だった。

 彼はエリスにこう告げた。


「僕は君だ。そして君は僕だ。十の約束とは、すべての界の住人が互いを認め合い、繋がりを取り戻すこと。君が試練を越えたのは、その証明だ」


 二人が手を取り合うと、十の約束の石が輝き、世界は再び一つに繋がった。

 分断されていた十界は境界を失い、人々は自由に往来できるようになったのだ。

 

 エリスの旅は、十界の人々が忘れかけていた『共存』の大切さを思い出させるものだった。

 そして、十の約束が守られた世界は、新たな未来を築き始めたのだった。

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