小学校の休み時間を、長男と過ごして分かった「正直しんどい」

長男が学校で私の姿を見かけると「ママ、帰りたい」と言うようになったのは、小学2年生になってからだ。その理由がずっと分からなかったのだが、「あぁ、これかもな」と思う出来事に遭遇した。


入学当初から彼は、校庭の一角にある、小高い丘が好きだった。そこにはみかんの木や小さな池があり、渋谷という薄汚い街で珍しく、心和む空間だった。小学1年生の頃は、担任の先生から、彼が休み時間はよくそこで遊んでいると聞いていた。


でも、小学2年生になってから、そこは上級生たちによって「整備」されることになったらしい。上級生以外は立ち入り禁止となってしまい、残念だと聞いていた。


12月になったある日、小学校に行くと、長男から「小高い丘が新しくなって、入れるようになった」と案内してくれた。ちょっとした花壇ができたり、倉庫に絵が描かれていたり、まあまあキレイになっていた。


最悪なのは、以前と違って、上級生たちが「見守って」いることだった。


小学4年生のAくんは特にひどかった。長男が枝を拾い、落ちている木の破片を触っていたら「(木の破片を)触るなよ!ぶち殺すぞ!」と脅してくる。落ちている木を触って、何が悪いのだろう? 


長男が地面に落ちていた石を蹴ったら、Aくんは「あ、ちょっと!ここ花壇と同じだから!石とか蹴らないの!」と、またすっ飛んできた。ここまでいくと、神経質を通り越して病的である。


そして、長男も懲りない。長男は池の中に、枝を投げ入れた。そしたら案の定、Aくんは「こいつ!枝を池に落としてんじゃねえよ!」とブチ切れて、周りの友達に通報した……。すると「お前、池に入って拾えよ!」と上級生たちの合唱が始ったので、(大人気ないと分かりつつ)さすがに睨みをきかせたら、大人しくなった。


長男が小さな声で「ママ、もう帰りたい」とつぶやいたので、私は黙って彼の手を引いて、その場を離れた。これはしんどいよな、学校に行きたくなくなるのも無理はないな、と思いながら。


ちなみに、長女のクラスにも、学級委員タイプの男の子がいる。長女が木に登ると「危ないからやめなよ!」と叫ぶような子だ。でも彼の場合は、嫌な感じはしない。目線が「子を心配する、お母さん」なのだ。長女が「え? 危なくないよ。〇〇くんも登ってみなよ。手伝ってあげるからさ」と誘うと、おそるおそる登ってみて、最後には一緒に楽しそうにしていたりする。


でも、この上級生たちは違う。たぶん何かムカつくことがあって、それを弱い者にぶつけているだけだけだ。


でも、これって私も同じことをしていないか?


子どもがたいして悪いことをしていないのに、イライラしているときは、つい怒りをぶつけてしまう。そうだ、めちゃくちゃ思い当たる節がある。あんまり、あの上級生たちを責められないぞ、と思った。「都会の小学校はきちんとした親が多いから、うるさい子どもが多いな。子育てしにくいな」と田舎の小学校に通わせることすら考えたけど、違うのだろう。なぜなら、どこにだって、イライラしている子はいるから。


だから「ま、いいか」という結論に至った。もし長男が、上級生の言うことを大人しく聞くタイプなら問題だけど、本人は全く反省していないみたいだし。「世の中には、色んな人がいるんだな」と学ぶのも大事だ。むしろ、あそこで「じゃかしいわ!ボケェ!」と叫んで、木に登っておしりペンペンするような子に育って欲しい笑。


子どもと同じ景色を見ると、何が嫌なのかよく分かる。でも大人は「分かってあげる」ことしかできない。他人は変えられないから。まあ、せめて私はあの上級生はみたいに「石を蹴るな!」レベルで怒るようなことはないように、あんまりストレスをためないようにしよう。そう思って、ひとまずたまっている仕事は置いておいて(やりなさい)、帰り道に予定を変更してサウナへ行くのだった。

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