第3話 子宮を取った女性を抱きたい活動の男1

デートしませんか?

 と言うのは却下された。「王道のお付き合い」をする望みを持つのはダメなのか?

 謎すぎる。

 諦めて、秋口のとある金曜日の夜、会社からも互いの家からも同僚からも見つからないようなホテルを選んで許可して貰った。

 普通に嬉しい、そして、此処から俺を好きになって欲しい、無体な事はしないぞと、心に誓う。

 

 

 その、ホテルにて


「その、、シても大丈夫なんですか?」


「誘って置いて、今更そこ?」

 お医者さまからは、もういいと言われてます

 、と伝えながらも、

 流石にA奈も呆れた。


 (なんで、此処まで好まれたのか?わからない、けれども……この人は)

 モテるだろうに、といつも思っていた。スラリとした体格に、軽薄そうに見えるけれど実際の物腰は丁寧で優しい、だから前の会社で搾取されてしまったのだろうと思う。

 今の会社に来てから、次々にアイデアを出したり、頑張りながらも、無理せずというアドバイスも受け入れてくれる。何よりも皆んなの気持ちを明るくしてくれる。

 人間としても同僚としても、部下としても尊敬出来る……

 なのに、恋愛は無理って思うのは

 (多分、私の問題なんだわ……)

 と、ホウッとため息を吐く。


 相手の思う事を、ちゃんと気遣える、選んでくれたこの場所も、私が安心して来られるモノにしてくれた……


 先にシャワーを浴びながら、考えに沈んでいく……。

 (頭の良い子

 そして勘も良い、、。

 だからこそ、困る……)


 (もう考えるのはやめたい、

 辛くなるから。だから受けた。コレで諦めて貰う。)

 心がストンとなった。

 自らの手で、下腹部に残った傷をさする。

 手術後塞がっては居るが、臍下から真っ直ぐに伸びている下腹部の傷痕はまだ生々しく赤黒く、自分でも触りたくない。

 

 もう、そう言う事は大丈夫ですよと、先日の検診で優しく女医さんに言われたのに、

 この傷痕には他にも色々くっ付いていて、ヒリヒリするのだ。

 (もう子宮、……無いのにね……)


 直接の原因では無いが、離婚する事になったのも、もう子供を持てないことも、パートナーとの中がぎこちなくなってしまった一因だった。

 少し、いや怖さはある。

 快感は要らない、痛くなったら……と密かに畏れている。


Y哉もシャワーを浴びてから、ベッドの上でゆっくりとA奈をローブの上から頼りなく抱き締める。

「灯りを消して下さい……」

「分かりました……キスしても……?」


「……いいわ……」

 溜めがあるのはなんで?

 戸惑いながらも、初めて想っていた人のくちびるに触れた。 顎に指をかけて柔らかくていい匂いのする唇に口付ける。

 甘い、食べちゃいたいくらいだ……、ゆっくりと舌を入れる。怖々と開けてくれる。

 トロリとして蜜みたい。

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