第4話 銀河暦6000年の祝いは地球にて

 火曜日には第一艦隊は金星から出発し、地球を目指していた。

 サムはタブレットを支給されたことで司令官となっていたが、機動隊員のうちの事務部員のひとりがどうしても地球に残りたいとのことで欠員が出てしまったため、急遽タブレットを返したサムが事務部員に配属になった。

 その一方でモルダは司令官長になった。

 司令官長とサムは休日が合えば一緒に艦内を散歩する。

 艦内は人工太陽で暖かく設定されている。サムも司令官長もこの春の陽気のような暖かさが好きだ。

 司令官長は散策をしながら、彼が司令官長を志したのが数年前の当時まだ司令官になる前の頃に、そのカッコ良さが魅力的な司令官長にかれ、あこがれるようになったのがキッカケだったという話をサムにしてくれた。勿論もちろん、これは他の機動部隊員や司令官長の右腕役も知らない話だ。

 司令官長自身がサムを気に入り、可愛がり、秘密を教えてくれたのである。


 そんな司令官長の話を聴き終えたと同時に、タブレットが鳴った。見てみると、第一艦隊の右舷うげん艦が少し傾いているらしいので、二人は走って司令官室へ戻った。

 司令官長は右舷艦の向きを元の正しい向きに直すよう指示する。

 中でも右舷艦は右に傾きやすいことで有名でもあった。


 間もなく、第一艦隊と第二艦隊が地球に帰還した。

 サムと司令官長はスーツで祝賀しゅくが式に出席した。

 式場は勿論、地球の日本で、しかも東京で行われる。

 サムたちふたり以外は皆、ジュースやワインやぶどう酒が注がれたグラスをここに持っている。

 サムたちも新品のグラスに飲み物を注いでもらった。サムはまだ未成年のためジュースが注がれた。

 出席者数は全世界式場100箇所が埋まるほど多い。

 地球人と異星人の割合は半々だ。

 司令官長のスピーチが終わると同時に昼食タイムに入る。

 ローストビーフやサラダ、ハムなどの豪華なフルコースを堪能たんのうしたサムは、司令官長に今後の自分の行動を司令官の耳元で小声で説明すると、両親に会いに行く。

 サムは数年ぶりに両親に挨拶あいさつし、ハグをした。

 その間、母親と父親それぞれ3分ほどだ。愛犬も元気そうでサムは安心して第一艦隊中央船に戻ることが出来た。


 第一艦隊に戻ると機動部隊にまたもや欠員が出たらしい。どうやらどうしても地球に残りたいという者がもうひとり現れたそうだ。

 結果、欠員が出た事務部員にサムが配属され、サムはその前に司令官長にタブレットを返した。

 司令官長はそれを受け取った。

 事務部員になったサムには、今日から新たな旅が、ロードムービーが始まる。

 

 

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