告白とお別れ

文化祭の日の放課後

皆が片付けをしている間に俺は思い出の場所に茜を呼び出すことにした

これは事前に有愛と話し合ったことだ

「やっぱり思い出深い場所がいいんじゃない?

恋人って要するにずっと一緒にいたい人でしょ

なら昭良のことを一番思い出せる場所がいいじゃない」

俺も聞いててそんな気がしている

それに思い出の場所が第二の始まりの場所として、より印象に残るのはいいな

俺たちの思い出の場所、迷うまでもなく答えることができる

保健室の前の桜…俺と茜が初めて出会った場所

今の俺ができるきっかけになった場所でもあり、茜との因縁とも友とも言える関係の始まり

そして恋人という関係になる始まりの場所(予定)でもある

問題はどうやって呼び出すか…だ

手紙?それともスマホ?

直接伝えるにはなかなか勇気がいる

いっそのこと、有愛に頼むっていうのは…?

いや待て俺、有愛に頼りすぎじゃねぇか?

そもそもこれは俺の問題な訳で…

でも有愛ならやってくれそうではあるんだよな…

マジでどうしよう

「つー訳で茜に伝えてくれ!」

「アンタ正気?」

結局俺は有愛に頼ることにした

逃げとかじゃねぇ…有愛から頼まれた方が成功しそうだからだ

少なくとも場所には来るだろ

勝負すらできないことの方が俺は嫌だからな

有愛はため息をつく

「絶対自分から言った方が成功するわよ」

「それは分かってんだよ!

勇気がねぇんだよ!」

白状してしまった

自分の心にすら嘘ついていたのにすぐに白状してしまった

有愛はまた大きくため息をついて肩を落とす

「ま、いいわよ別に」

「ホントか!助かる」

「…はいはい

先に行ってたら?アカネにすぐ行くように言うから」

「待て待て待て、早すぎる」

有愛は、またまた大きくため息をつく

「アンタは後伸ばしにするとやらなくなるわよ」

「…確かにな」

有愛が言う通りなのかもしれない

俺と有愛は似た者同士だからな…

有愛もそういうところあるのかもしれない

俺は有愛の手を掴む

有愛はすぐに俺の手を離して、そっぽを向く

「わかったから行きなさいよ」

「…おう、ありがとな」

そんなに俺に手を握られるの嫌なのか?

…まぁいいか

俺は少しもやもやを抱えながら例の場所に向かう


どうも皆さんこんにちわ

すみません、告白には行けません

俺は今、トイレの個室の中にいます…

ビックリするほどビビっています

個室に座って考える俺になってしまっている

目を閉じて考える

どうやって逃げようか

そんなことを考えているとスマホの通知が鳴る

内容を確認すると有愛から来ていたようだ

『逃げるなよ』

「何かしらで監視してねぇか⁉怖ぇよ!」

観念しよう

有愛に監視されているし…

逃げたら殺されそうだ

俺はトイレの個室を出て、手を洗う間に考える

…頑張って逃げれねぇか?

「よし、逃げよう」

「トイレに出て、一言目がそれでいいの?」

「jふぃlんhslzhgIG」

トイレを出るとすぐ横になぜか有愛がいた

俺をしっかりと睨んでいる有愛が…

俺は苦笑いを浮かべながら答える

「じょ、冗談ですやん…」

有愛はため息をつく

今日何回ため息つくんだ、コイツは…

スミマセン、俺のせいです

「早く行きなさい

茜を待たせてんじゃないわよ」

そう言って有愛は俺の背中をバンッと叩く

ふと有愛を見ると下手な笑顔をしていた

俺はそれを見ていない振りをして前を向く

「…じゃあ行ってくるわ」

「ええ、早く行きなさい」


俺は走って桜の木に向かう

なんでこんなにも有愛のことが気になるんだ!

今は茜よりも有愛のことが気になって仕方がない

告白の緊張より、もやもやが残ってしまう

「クソッ!なんなんだよ!」

俺の気持ちの整理がつく前に桜の木の下まで着いてしまう

そこには風でなびいた髪を押さえる茜がいた

やっぱり…可愛いな

俺は告白しようと息を吸って

「ねぇ昭良、本当にそれでいいの?」

「ぁ…?」

「昭良は本当に私でいいの?」

「お、俺は…」

「今、昭良の心にいるのは誰?」

「それは…」

「それが昭良の答えだよ」

俺はわき目もふらずに走り出す

どこに向かっているのだろう

教室に向かって走ると成実とすれ違う

「スマン!有愛見なかったか?」

「じゃーちゃんなら今帰ったところだよ?」

「すれ違ったのかよ!サンキュー成実!」

俺は靴箱に向かって走る

今までの俺は何かをずっと間違えていた

周りから避けられる理由を顔にして、茜の問題から目を背けて…無自覚とは言え、好きな人に悲しい顔をさせた

もう次は間違えねぇ!

俺は覚悟を決めて靴箱につく

そしてその背中を見つけて叫ぶ

「有愛ッ!」

振り返る背中に俺は言葉を紡ぐ

「好きだッ!」


「それでよかったんですかぁ?」

窓から覗く保健室の先生に言われる

どうやら一部始終を見ていたようだ

なかなか性格の悪い先生みたい

私は笑顔で返す

「私、親友ポジですから!」

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