蛇足編三話 変わった日々
梅雨が過ぎ去り、本格的な夏が訪れた
あれから私は変わった
具体的には気分がいい
ご飯も食べるようになったし、家族と話すようにもなった
この前は髪を切りに行った
妹と買い物にだって行った
部屋に籠ってばかりだった一年前の私からすると考えられない変化だ
それもこれも全部…
「あ!
「
「んーん、全然だよ」
「ならよかったです!」
そう言うと秋徒君は満面の笑みを浮かべる
それと同時に私の心臓が高く跳ねる
私は今、恋をしている
「今日はどこでスケッチするの?」
夏に入ってから外に出てスケッチすることが多くなった
秋徒君はまだ中学生だから土日のどちらかだけしか時間が取れない
それに私がスマホを持っていないから連絡も取れない
だから秋徒君が行きたい場所についていくのが自然になった
「少し遠い場所にですが向日葵が綺麗な場所があるんですよ
今日はそこに向かいましょうか!」
「うん、わかった」
今日の恰好は白いワンピースに麦わら帽子
丁度いい感じになるだろう
「まずは駅に向かいましょうか」
「結構遠いね」
「そうですねー
車でもあれば色々な道具を運べて楽なんですけど…
今日は忙しいとのことでしたので」
この関係も、もうすぐ三カ月たつけど秋徒君の親御さんに会ったことはない
きっと仕事が忙しい方たちなのだろう
早く親御さんたちに挨拶したいなー
…実は挨拶を済ませたら秋徒君に告白しようと思います
親御さんにまで会わせてくれたら流石に行けるでしょ!
ていうか「惚れてる」とか「美しい」とか!
これで行けなかったら秋徒君はタラシだよ!
でも勇気が出ないー!
「咲花さん?顔赤いですけど大丈夫ですか?」
「えっ⁉な、ナンデモナイヨ
…さ!行こ行こう!」
「あ、はい」
どうやら顔に出ていたらしい
恥ずかしい!
電車に乗って数十分
それから結構歩いたことろに、それはあった
「…うわー!凄く綺麗!」
「ですよね!」
そこにあったのは辺り一面の向日葵
今日が快晴なのもあって向日葵が輝いているようだ
「…これ私、負けない?」
「大丈夫ですよ
咲花さんは、とっても美しいですから」
「…そう言うところ」
「いだっ!」
背中をバシンッと叩く
照れ隠しである
そんなことを露ほども知らない秋徒君は言葉を続ける
「なんですか⁉」
「察しろ!バカ!」
「ホントに何ですか⁉」
「…ばか」
「えぇー?これ僕が悪いんですか…
まぁ、よく察しが悪いとは言われますけど」
「女心とか知らないもんね」
「それもよく言われます…」
だけど私はその言葉で笑顔になる
きっと今まで彼女なんていたことないだろうから
この人は私だけのものなんだ
スケッチをしている間、私は暇をしている
この時の秋徒君は話しかけても集中しているのか聞いていないからだ
かと言って不用意に動いたら動いたらで秋徒君が不機嫌に注意してくる
昔は、それでもよかったけどなー
今は少しそわそわしてしまう
スケッチされたことある人にはわかると思うのだけど、今どこを見ているのか結構わかるものである
他の人はどうか知らないけど、秋徒君は顔から書いていく
今は腰のあたりを書いているようだ
もうすぐ終わるかな
そう思った時だった
「きゃっ」
強めの風が吹く
私は帽子が飛ばないように押さえた
それが間違いだった
「あの、咲花さん…」
「ん?どうかし、た…」
スカートの裾が向日葵に引っかかって、あれが丸見えだった…
私は秋徒君を涙目になりながら睨みつける
「エッチ…!」
「これは僕悪くないですよ!」
「ちょっと…咲花さん!
いい加減、機嫌直してくださいよ」
「…ぷいっ」
「こうなったら、どうしようもないんだよなー」
今、私達は近くのバーガーショップでご飯を食べている
今の今まで私の機嫌は直っていなかった
心では別に秋徒君が悪くないと分かっている
でも、それはそれ!これはこれ!
それに今日に限って別に可愛いパンツじゃないし…
「あ…」
「どうしたんですか?」
「いや、見られても何とも思わなかったなって」
「いやいや!絶賛不機嫌じゃないですか」
「それはそうなんだけどね
それとは違うの
…私が引きこもった理由って言ってないよね」
「…ええ、まぁ」
「別に気持ちのいい話じゃないけど聞く?」
「気になると言えば…そうですね」
「まー別に秋徒君にはいいか
黙ってる方が気持ち悪いだろうし
…私ね、大学入ってすぐ、レイプされたの」
「……」
「最初は優しいサークルの先輩だったんだけどね
なんかお酒やら色々なもの飲まされて
目を覚ましたら裸の私に数人の男たち…
その人たちは大学を辞めさせられたんだけど私の心はどうにもならなくてね
ずっと自分は汚された、自分は汚れているって思ってたんだ
だけどそんな私に秋徒君は美しいって言ってくれた
その言葉が私のことをどれだけ救ってくれたか
…ねぇ秋徒君」
「…はい」
「幻滅した?」
「そんなわけがない!
あなたの美しさは僕が一生保証します!
だから自分を卑下しないでください‼」
そう言って私の手を力一杯握ってくれる
「…ありがと」
やっぱり…好き
あれから数日
私はずっと笑顔だった
秋徒君が私の過去を知っても嫌いにならなかった
私は汚くないんだ!
その事実だけが私を救っていた
「今日も~秋徒君とデート~!」
「お姉ちゃん…浮かれすぎだよ」
「だって夏休み初日に中学校デートだよ⁉もう気があるってこれは!」
「じゃあそうなんじゃない?」
「妹が冷たいー」
昨日、
「秋徒先輩が明日の昼一時に中学校集合だって」
と言われたときは流石に大興奮した
秋徒君の(ついでに妹の)中学校!
なんかワクワクする
「じゃあ行ってきます!」
「はいはい
車には気をつけなよー」
「はーい!」
秋徒君の中学校は私が通っていたところとは違う
私は少し街の方にある中学受験で入れる頭のいいT附属中学校に通っていた
それに対して秋徒君の中学校は地元の公立中学校だ
近所だから通ることはあっても中に入ったことはなかった
「楽しみー」
「あ…!咲花さん!」
声のする方を見ると校門で手を振る秋徒君と大人の男性がいた
…秋徒君のご両親かな?
「秋徒君、それに親御さんも、こんにちは!」
そう言うとお義父さん(気が早いかな?)が困った反応をする
「あはは、僕たちはご近所さんなんだ
秋徒君の親は海外で仕事をされてるから、たまに道具とかを運んでるんだよ」
「そうなんですね!」
秋徒君のご両親は海外かー
帰ってくるまで待てるかな?
いや、今日告白しちゃおう
二人きりで学校とか最高のシチュだし
「じゃあ僕たちはこれで
いつもありがとうございます!
帰りもお世話になります」
「全然気にしないで
お互い様だろうし
夕方には着くようにしてるから」
そう言うと、ご近所さんは銀のワゴン車に乗る
「それじゃあ僕たちも行きましょうか」
「そうだね!」
二人きりの学校
楽しみだなー
この日、私の運命を狂わせる存在に出会う
コイツさえ…コイツさえいなければ!
私は幸せな人生を送れたのに!
「ここが美術室です」
「ここが…秋徒君が部活してるとこ、ろ…」
木材の匂いと共に視界に入ってきたのは一人の女子生徒
年齢は秋徒君と同じくらいだろうか
その子は…悔しいほどに可愛かった
「あっくん、もしかしてその人が?」
「あぁそうだよ
…咲花さん、紹介しますね
彼女は僕の弟子兼助手の…」
「
その笑顔は…眩しかった
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――作者から
メインヒロイン、キターーーーーー!
そんなことより…本編よりラブコメしてないですか⁉
温度差で死ぬって!
あ、言い忘れる前に…
次回で蛇足編終了です
咲花さんのストーリーを最後までお楽しみください
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