蛇足編一話 始まった物語
作者から
二話連続更新になっています!
先に蛇足編プロローグをご覧ください
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この世界は最悪だ
私が期待した春は桜が散って無くなる
私の涙が枯れても蝉は交尾のために鳴く
私の心がすさんでも桃色のコスモスは色付き枯れる
私の心が死んでも冬が来て、また春は来る
私が全てを失ったのに
五月になってあの日から一年が経つ
私は未だに狭い部屋に閉じこもっている
家族が家にいないときに部屋の外にトイレとご飯に出るくらい
私は誰ともかかわらない今の生活に満足…はしていないが納得はしている
こんなに汚れた私には誰も触れさせたくない
「喉乾いたな」
今日も家族がいないときに水を飲みに台所に向かう
家族の声がする時は寝ている
それが私の罪だから
そう言えば妹は今、学校かな
四月に妹が部屋の前で泣きそうな声で
「私、中学生になったよ」
と言ってきた時は流石に心が痛んだ
そしてそれから妹の声を聴いていない
…私には眩しすぎる
汗が気持ち悪く感じたため台所に向かう前に風呂に入る
嫌でも鏡に自分が映ってしまう
ぼさぼさになって輝きを失った金色の髪
ガリガリに痩せた体
顔にも生気というものは宿っていない
そして何よりも…視線を下に映す
「汚い」
私は私が嫌いだ
風呂から上がって下に降りると真っ先に机の上に置いてある料理が目に入る
近づいて見てみると焼きそばのようだ
そしてその横に手紙が置いてある
『私たちは
いつもだ
私が家に籠るようになってから、いつも手紙か言葉をくれる
そんな家族に感謝している
それと同時にこんな自分が不甲斐なく感じ、涙が一筋流れる
「ありがとうね…」
ご飯をレンジで温めている間にそふざーの恥に座り、テレビをつける
何も面白くないバラエティーの笑い声だけが静かな空間に流れる
たかが50秒がとても苦痛だ
テレビをつけても何の気も紛れないと気づき、すぐに消す
またしても静寂が私を包む
たまにカーテンから漏れる光だけが眩しい
特にすることもなく膝を抱える
ぼさぼさの髪が目に当たって鬱陶しい
それでも少し気を紛らわせるからよかった
唐突にガタッと音が響く
温め終わったのかな
それにしては何か大きな音がしたような
不意に台所の方向を見る
そこには玄関と…唖然としている知らない男性がいた
…見られた
汚い私を見られた
男の人にこんな私を見られた
そう思った時だった
「…美しい」
「……え?」
思わず顔を上げる
こんな汚い私に…美しい?
きっと気のせいだ
「これだ…
これだ!僕が求めていた美しさ‼」
「…」
間違いなく言ってる
何だこの人は
困惑している私を置いて男の人は話を進める
「アナタを絵のモデルにしてもいいですか!」
「…えっと」
「ただいま
先輩、ありまし、た…
お姉ちゃん…」
妹もどうやら帰ってきたようだ
久しぶりに妹のことを見た気がする
中学校の制服だろうか
とてもかわいく着こなしている
久しぶりに妹と会話しないと…
どうしよう、と考えていると男の人がお構いなしに話してくる
「あなたに一目惚れしたんです!
是非あなたのことを絵にしたいんです!」
「あの…先輩」
「なんだい
僕はこの人のことをスケッチしたいんだ!
邪魔しないでくれるかい!?」
「ちょっと!先輩⁉」
「なんだよ五月蠅いな」
「いやいや私のセリフですから!」
そう二人が言い争っていると玄関の方から声がする
「成実さん?まだですかー」
「ナーちゃん?無かったの?」
たしか妹の友達のモブ君とソウちゃん…だったかな
そうか
あの子たちももう中学生なんだ
私だけが、止まってる
「その表情いいですね!
デッサンしていいですか⁉」
「ちょっと!先輩最低ですよ!
お姉ちゃん困っているじゃないですか!」
「…別に、いいよ」
「ほらお姉ちゃんだって嫌がってますよ!
…あれ?」
「いいんですか⁉」
「…別に
どうだって…」
そう言うと男の人は鞄からスケッチブックを取り出す
「ちょっ…先輩⁉
私達どうすれば…
あぁ!こうなった先輩止まらないんだよ!
モブ君!ソウちゃん!学校戻ろう!」
そう言うと妹は文句を言いながら家から出て行く
帰り際に一言
「先輩!道具は持っていきますから!」
とだけ
また沈黙が流れる
…今度は鉛筆が走る音が響き渡っていた
うるさいわけでもなく、落ち着く
日が落ちかけた頃、ようやく鉛筆の音が止む
「すみません
ありがとうございました!」
「…ん」
「これコンクール出していいですか?」
「…別に」
「ありがとうございます!
それではこれで失礼させていただきますね!」
そう言って出て行こうとする彼を呼び止める
「…ねぇ」
「何ですか?」
「名前」
「ああ!そう言えばまだしてませんね!」
彼はそう言うと振り返って
「
「そう…」
「あなたは?」
「…
成実の…姉です」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
作者から
ということで今まで謎だった成実姉の物語です
また体育祭編終盤で名前だけ出てきた秋徒君も登場です
結末が予想できて不安ですねー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます