主人公和多は、流行病にかかって床に伏せっていた。一人暮らしの学生にとって、闘病は地獄だ。ロクに食えもせず、風呂にも入れず、暖も取れず、ひたすらに床に伏せっていると、友人の天津が料理を振る舞いに家にやってくる。ガスコンロに火をつけ、鍋を作ってくれるというのだが……何の嫌がらせなのか、病床で朦朧としている和多に天津は人間の認識の正体の話をする。それは一種のプラシーボ効果のような話だ。後味も不穏になる物語でありながら、闘病中の弱った心の『あるある』に共感を覚える。ご一読を!!