第14話 堀之内視点

「帰ったぜー」


 カラオケから帰宅した堀之内はまず冷蔵庫を開けた。それからマグカップに注いだ牛乳に愛用のプロテインパウダーを一匙溶かし、ごくごくと飲む。


「あ、忘れてたぜ」


買ってきた牛乳を一本、冷蔵庫に入れておく。


仕事に出ている母から牛乳を買ってきてとスマホで連絡があり、コンビニで買ってきたのだ。


堀之内の母は最近、パートから正社員に復帰しフルタイムで働きはじめたので帰りが遅い。必然簡単な買い出しや消耗品の補充は堀之内が担当することが多くなっていた。


「よっと」


自室のベッドに鞄を投げ出し、ブレザーからスマホを取り出す。ファスナーが開き折り目のついた教科書が顔をのぞかせた。


『今話せるか?』


既読がつくと同時に返事があった。


『だいじょぶ。どしたん?』


相手は新大津という堀之内の彼女だ。所属するバスケ部のマネージャーであり、高一の時堀之内から告って付き合いはじめている。


『今日のカラオケの話回ってきたか?』


『ああ、超珍しくカラオケに参加してドラ○もん熱唱したっていう陰キャの話ね。祭りになってるよ』


言われて堀之内は一年の時のグループsnsを立ち上げる。


中は仁の話題で持ちきりだった。


『聞いたか?』


『ああ、カラオケでドラ〇もん熱唱した奴がいたってよ』


『久里浜ってやつだべ』


『意外~。去年同じクラスだったけど、付き合い悪くて笑ったのもほとんど見たことなか』


『俺その場にいたんだけどよ、でもノリノリやったぜ。意外と慣れてた感じ。陰キャが慣れないことして場を白けさせたって感じでもない』


『惜しい~。今日参加すればよかった』


 通話に切り替えたスマホから、新大津の笑いを押し殺したような声が聞こえてくる。


「こんな感じやな」


「そうか」


 それほど陰口を叩かれていないことに堀之内はホッとした。


「今更高校デビュー? バカ?」


「そんな言い方すんなって。キレるぞ?」

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不登校の従妹と同棲して彼女を元気にするお話。 @kirikiri1941

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