この街は私の想像よりも遥かに都会からは程遠い場所だった!

みけねこ

第1話 羽芽

『見て下さい!この素敵で美味しそうな可愛スウィーツ♪、実はこの夏に登場したばかりなんです♪。』


『うわぁ❤』


『すご~い❤


『美味しそう~❤』


『それでは、リポーターの私、リホがさっそく頂いちゃいまぁ~す♪』


そんなやり取りがテレビの画面の向こう側では繰り広げられていた。


羽芽(うめ)は自分とは程遠い世界の中に映し出されている光景を、ただボンヤリと見詰めていた。


自分に取っては全て架空の世界の出来事なんだ。


羽芽はそう自身にずっと言い聞かせて日々を過ごして来ていた。


『でもな……』


と、不意に羽芽は声にならぬ不満を呟き

そして


「ふぅ……」


と、ひとつ溜息を吐いた。


が、そんな羽芽の青春の黄昏を


「羽芽ぇ~~~!はよ降りて来て、母さんの手伝いしなはれや!!」


母のその無遠慮な怒声が束の間の内にに打ち壊してくれた


自分に取っては今は遠い世界の事でも、大人のご都合主義でそこへ割って入られて来るとそれはそれで面白くは無かった。


そう、そんな些細な事であろうとも羽芽の不可侵領域に、大人に土足で踏み込まれてしまった。


その感覚が尚のこと羽芽の気持に障っていたのだ。


だから、羽芽はそんな大人に反発し


ピシッ💢!


と、怒りを露わに


「ムカつくなもう💢」


と声を零すと


人の怒りは時としてパワーになる。

を具現化しながら椅子からピシッと立ち上がり


「まったく何時も何時も……もうムカつく!!」


と、ボヤきながら


母親の口からの、やれ[勉強しろ!]だの[ちゃんとお風呂へ入れ]だのやれ[仕事手伝え]だの、何時もの決まり文句に、不満を抱きながらも


『あぁ、でも言う事聞かないと怒られるしな……』


そう自身に言い聞かせながら



仏頂面を露わに

部屋の扉を開いて


「解ったぁーーー、今すぐ行くからぁぁぁーーーーーっ!!」


と羽芽は階下に居る母へ向かって苛立ちの交えた声でそう答えた。









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