【カクヨムコン10短編】心に骨をもつ

ゆる弥

第1話 骨のなかったころ

「俺、服にはこだわりあんだよ」

 

 おれの前の机に腰掛けながら達也が口を開いた。

 達也は、いつもファッションリーダーを気取っている。その割りに、量産型の服を着ていることが多いのだけど。その辺は気にしてないのだろうか。

 

「服ならユニプロがいいぜ?」

 

「あっ。いいよな。ユニプロ。リーズナブルだしな」


 そして、いつものように達也の話に乗っていく。ユニプロは割りと安いし誰もが着やすいようにできていると思う。おしゃれな服装もできると思うから、悪いということはないと思う。


 だから、賛同するというのもあるんだけど。別におれはどこの服でもいい。親が選んで買ってきた服を着るくらいなのだから。

 

「だよなぁ?」


 達也は上機嫌で俺へと返事を返す。こいつに反対意見を持つなんて面倒なことはしたくない。波風立てないで過ごすのがおれの今の目標だ。学校では波風立てない方がいい。

 

「僕は、有印ゆうじるしがシンプルでいいなぁ」


 反対意見ではないが、自分の好きなブランドを話す優斗。コイツは顔が良くて人気があるのだが、私服がシンプル過ぎて女の子にフラれるらしい。別にいいと思うんだけどなぁ。

 

「あぁ! おれも好きだなぁ。着やすいよね」


 優斗の意見にも、おれは賛同する。実際、有印もいいと思うからだ。少し高いのが難点だけど。

 

「そうでしょ? やっぱり一番いいよ。少し値段は張るけどさぁ」

 

「で? お前はどこの服が好きなんだ?」


 優斗の話を聞けばいいのに、達也はおれへと返事を振ってきた。おれの考えなんて別にどうでもいいと思うんだけど。はぁ。適当に答えればいいか。

 

「おれ? んーどこもいいよなぁ」

 

「ちょっ! それは反則でしょ!」


 俺の回答が不満だったようで、優斗が反論してきた。

 別に反則ではないだろう。

 ブランドなんて興味ない。


 というか、服なんてなんでもいい。着られればよくないか?

 

「自分の好きなブランドの話だろ?」


 眉間に皺を寄せて不機嫌そうに達也が机を脚で小突く。

 

「いやー。安ければいいかなって」

 

「こだわり持てよぉ」


 こだわりなんて余計なものだと思っていた時代の話。自分の考えなんてこの社会に必要か?


 おれの考えなんて誰がしりたい?

 意見をいうなんて争いが生まれるだけだ。

 そう思っていた。

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