二話「鬼との出会いは突然で」
現在俺、掴夢は。長い石の階段を昇っていた。
理由はその先にある鬼様を祀っている神社であいつを見つけるためで、居なかったら学校に行ってみて当時の情報を聞くとかしてみよう。
しかし、虫が多いい。下に視線を向けるとダンゴムシや蟻が所々いたり、周りに耳を傾けると、虫の羽音がなり続けていた。
都会に何年もいたせいか虫がそこらじゅうにいるのが少し新鮮だ。そういえば昔ここでアイツと虫取りをした思い出がある。
(....あいつが...虫取り?)
男勝りな性格だったか...あいつは?
いや、確か本当は...本当は?
脳内にあいつに関する新しい情報が幾度となく溢て出てくる。
それと同時に、頭の中に掛かった霧がくっきりと見えて少しつづ前が見えるような感覚を覚える。
近い感覚で言うなら...そう、ふと忘れ物をしたのを思い出して、何を忘れたのかを考えるために今日の出来事を思い返すような感じだ。
いやどんな感じだ?
余計に難しく説明してしまっ感じがする。見てる人に謝りたい。
さて、そんなことを考えながら石段を登っているとようやく鳥居が近くに見えてきた。
「ふぅ...」
登り終わり、神社の周りを見渡すが誰もいない。やはり感が外れたのだろうか...?
「ん?」
耳を澄ます。
「...っぐ...」
誰が泣いてる!!
俺は誰かが泣き混んでる声を聞いて、素早く場所を特定する。目の前にある本殿の中だ、恐らく誘拐とかだろうか?いや、仮説を立ててる暇は無い。
俺は鬼様にごめんなさいと謝りながら本殿へと続く扉を開く。
そこには...
白く長い髪を靡かせ、ポロポロと涙を零している...赤い鬼の角を生やしたあの子がいた。
「....勇鬼《ゆうき》?」
自然に言葉がこぼれ思い出した。
「....つ、つかむん...?」
「おう、俺だ」
そう言って振り向いた勇鬼に...抱きついた。
「えっ...?」
「...なんかあったんだろ?お前が泣いてるっう事わ」
そう言って軽く頭を撫でる。こいつはそれをすると安心するのか泣き止んでよく寝てたんだっけ...とても...なつかしい。
「...な、なんでわ、わす...と、というか...だ、だき...!」
「ダメか?」
「だ、だめじゃ....ないのかもしれないけれど...い、いいのかもしれない...」
「同じじゃねえか」
そう突っ込むと、勇鬼は「うん...」と俺に体重を預けた。
どうしよここから...まぁ...うん...なんとかなるやろ!!
しばらくして、調子を取り戻した勇鬼と共に本殿の外に出て木でできたベンチに座る。
「何があった?」
「...じ、...な、なんでもない」
「分かった、気が向いたら話してくれ」
「い、いいの?今聞かなくて...,」
「気になることは沢山あるぜ?だけど、俺はお前が気が向いた時に聞きたい。それだけだ」
「ありがとう...」
俺は勇鬼にニコッと笑顔を向けると、勇鬼もニコッと笑顔を作って返してくれた。
しばらく2人で、ぼーっとしているとそういえばまだ荷物を出してないことを思い出す。
「あ、俺帰るわ」
俺がそう言って立ち上がると、勇鬼は慌てて俺の服の袖を掴んで引っ張る。
「...ついて行っていい?」
「帰らなくていいのか?」
「家...無くなった」
「.....わかった、俺の家にこい」
「ありがとう...」
2人で立ち上がって共に石段を降りていると、前からおじいちゃんがやってくる。確かあの人は...
「おっ、掴夢くん!隣の婆さんから聞いたよ。警察になって交番勤務になるんだろ?辛いことがあったらわしらに沢山言っていいかな!」
そう言って、素手でクマを薙ぎ倒した伝説を持っている金じいちゃんは上へ昇って言った。
...あの人。俺の話はしたけど、勇鬼の事に関しては何も言ってなかったな...
チラッと隣を見ると、俺の腕を掴んでいる勇鬼がいた。じっと見ていると....急に鬼の角が触りたくなる。
「?」
勇鬼は首を傾げ、何かを言おうとした時に、俺は勇鬼の口に指を入れた。
「んくっ...!?」
あ、こいつ可愛い反応す....
次の瞬間...俺の体は宙を舞って...地面が急接近する。しかし焦っては行けない...空中で体制を戻し、足から...着地する。
はい100点。
「ふぅーー!」
勇鬼が威嚇する。鬼は威嚇するのか....そもそも鬼が威嚇する存在とかいるのだろうか?
まぁそんな疑問はいいだろう。
「...すまん」
「ゆるす」
早!?
「その代わり、私以外にそれするな」
「あ、していいんだ」
「むしろしろ」
「わかった、やる」
「やめて?恥ずかしから」
「なら辞める」
「...」
なんで俺たちは中学生がしそうな中身ゼロの会話をしてしまうのか。 きっと懐かしいのだろう、というかこういう会話を続けたい気持ちになる。人の脳って不思議。
お互い無言で石段を降りて俺の家に着き扉を開くと、荷物が置いてある広間でお互い正座した。
「...かえってきたんだね」
「うん、警察官になってな」
「....なれなくて....ごめん...」
「....何に?」
え?俺なんか約束してたっけこいつと...えーえっと....
「...忘れたんだ」
「いやまて...思い出す」
「何も約束してないけど?」
「....」
....意地悪しよう。
俺はそう考えると、素早く勇鬼の背後を取って、脇をくすぐる。
「うひゃぁ?!」
...今気づいた。なんでこいつ脇が丸見えの巫女服着てんだ?
「っ...んひゃ...や、やめ...ご、ごめん!」
すっと、脇から手を離す。
「...お前なんで巫女服着てるんだ?鬼の角生えてるし」
「み、巫女服はいいだろ!あの神社の管理者私だよ!?」
「あ、そうだった。なんで忘れてたんだ?」
「...つ、角のほうは...気にしないで」
「わかったけどさぁ....あ、そうだ。その代わりに俺今から荷物出すからさ手伝ってくれない?」
「分かったわよ...」
勇鬼はやれやれと言った様子で荷物を出して、色々手伝ってくれた。
ひと段落着いて、手伝ってくれたお礼に勇鬼が好きだったお菓子を渡す。
「んっ...いいのか?」
「手伝ってくれたお礼だよ。あ、そういえば俺明日から仕事だから夜まで帰ってこないんだけどその間どうすんの?」
「ここいるか、何処かぶらぶらするわ」
「了解。あぁ、俺がいる交番教えとくわ」
「ふーん...こいつうことか?」
「暇な時にな」
「へいへーい」
適当な会話をしながら夜ご飯何にしようか考える。....カップ麺しか無かったな....
「なぁ、勇鬼」
「なに?」
「明日お使いしてくれない?」
「はぁ..?いやなんです」
「3食カップメンになるよ」
「わかりました、色々買ってきます」
こいつの事だ。恐らく安くていいものを沢山買うことだろう。根は真面目だし俺よりよく周りを見てさらには正義感がしっかりしているのだから。
時間が飛んで夜。
おばちゃんが使っていた布団が残っていたからそれを勇鬼が使う事になりお互い隣になるようにお布団を引いて電気を消し寝る。
「修学旅行みたいだな」
「確かにそうね?まぁ、私とあなた寝る部屋違ったけど」
「せやなぁ...なぁ勇鬼」
「何?つかむん」
「...お前さ、他の人に忘れられてんのか?」
「っ...」
小さな声に俺の考えがあってたことにほっとする。違かったら笑われそうだし、なんなら嘘の事を教えこまれそうだ。
「あってるんだな」
「....」
沈黙。
「...俺もお前のことを忘れてた...だが今は思い出してる。だから...泣くな、昔のお前みたいにしっかり前向いてろ」
「うん...」
しばらく沈黙。
横を見るといつの間にか勇鬼はねていた。
そんなに疲れてたのだろうか、いやそれはそうか恐らくずっと泣いていたのだから。
俺は勇鬼の顔をじっと見る。その顔は数年前から、俺がお前に恋した頃から変わっておらず。可愛らしい寝顔ですぅすぅと寝ていた。
「おやすみ」
俺はそう言って、勇鬼のほを撫でながらゆっくりと目を瞑り、眠りに落ちた。
気になることは沢山ある。もちろん、それが全て明かされないかもしれないが...少なくとも、何があっても...こいつが泣かないようにしないとと心の中で決める。
だって彼女には泣き顔なんて似合ってないのだから、そう鬼が泣き喚くのと同じ位に...
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