第2話 接触、破壊、害意無し。

2話 接触、破壊、害意無し。


「…なんか騒がしい…?」


『騒がしいねぇ〜?』


「なにがあったの?」


静かに呟きながら冥界門を閉じ、物質世界に降り立つ。精霊は基本的に物質ではなく気体の様な存在だ。パトの様な大精霊や高位精霊になると常に人型ながら気体の様に動く事も可能だが、それは精霊の生きている年月がものを言う。生まれたばかりの高位精霊のシヲには無理な話だった。しかし、物質世界つく事で、魔力を固め物質として顕現できたのである。


「と、とまれ……!」


「…?」


冥界門の周りは森なので好きな方にシヲは歩き出そうとしたら数人の人間に呼び止められた。武装している。


「お、お前は冥界門から出てきたな…!何をする為に出てきたんだ…!」


「あぁ、そう言う」


主様から分け与えられた記憶から、昔主様が行った様な破壊活動をするかもしれないからだろう。


「私は、破壊活動は、しないよ?」


『シヲちゃんカタコト〜!』


『うるさい』


『痛!?』


物質世界で声を出すのは冥界門の付近で一度だけなので、慣れずにカタコトになってしまった。


「嘘を言うな!そ、その威圧感はなんだ!」


「え?」


そう、シヲは死の気配を撒き散らしていた。生まれたてとはいえ初めての死の高位精霊だ。生まれた時で既に大体の人間より強い。それこそ人間でも上位の人なら勝てるだろうが、年月を積めばシヲに勝てる人間はいなくなるだろう。


「悪いが、お前はここで殺させてもらう!」


「話、聞いてくれない?」


シヲは顔を引き攣りながら尋ねる。が、


「問答無用!」


瞬間、シヲは飛びかかってきた人間の攻撃をギリギリで避け、冥界門の上に行く。攻撃してきた人間は槍を使っていた為、その槍を投げてきた。先ほどは油断したが、次は当たらない。シヲは軽々しく避けるかと思いきや、反射でその槍を掴む。そのままどうしようか悩んでいると、声が聞こえた。


      『妹を傷つけるな』


瞬間、槍を投げた人間だけ、その場から消えた。いや、押しつぶされたとも行っていい。シヲが驚いていると、後ろから矢が飛んで来た。


『ちょっと、イザナ。何してるの。』


『妹を傷つける奴は許さないよ〜!』


問答しながら矢を素手で掴み、折る。冥界門の上から飛び降り、矢が飛んできた方を見ると、そこには既に誰もいなかった。暗殺部隊の様な物だろうかと考えながら先ほどから固まっている人間に向けて問う。


「私、本当に破壊行為しない。攻撃されるなら相手するけど、どうする?」


すると、隊長らしい男が諦めた様な顔をして前に出てきた。


「まず、無闇に攻撃した事を謝ろう。こちらの立場としても、貴方を討伐できるならしなければならない事を理解してほしい。」


「別に、いい。」


「そう言ってもらえると、ありがたい。それで、貴方は何をする予定だ?」


「記憶、探す。」


「…?よくわからないが、人間は傷つけないのだな?」


「向こうが、攻撃しなければ。」


男は腕輪の様な物に顔を近づけ、言葉を口にする。


「白き精霊、討伐不能、対人間害意無し。」


通信の魔道具なのだろうか。シヲはそれを眺めながら言った。


「もう、行っていい?」


「…あぁ、構わない。」


「そう。」


そう言ってシヲは歩き出した。男達がいる方向とは逆の方に。その様子を、男達は静かに見送っていた。


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冥界門担当部隊二番隊隊長のとある男は、白き精霊が去った事を確認して、その場に座り込んだ。


「しっっっっぬかと思ったぁぁ。」


男はビビリだ。ビビりだから、逃げて、逃げて、学びながら逃げて、少し他人より強くなった。今回だって逃げ出したい気持ちで今回の任務に当たっていた。


「よく生き残りましたね、我々…」


今言葉を発した男は長年を共に過ごした自分の右腕の様な存在だ。それなりの修羅場を潜った男だが、顔が引き攣っていた。


「あのバカ、命令を無視した時はどうなるかと思った……」


あの白い精霊が起こしたであろう魔法で死んだ男は、普段から問題児であった。命令を聞かず、功績もない。ただの嫌われ者だったのだ。実は男はシヲに攻撃を仕掛けるなと命令していたのだ。可能なら交渉を、と思っていた所をあの男全て台無しにした時は本気で殺そうかと思うほどだった。


「しっかし、これからあの精霊様のせいで荒れるだろうなぁ。」


男はそう呟きながら隊員に帰るぞ、と声をかけ砦の方に向かって行ったのだった。


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とある国の大教会の一室。


「冥界門から出てきた精霊は白く、人間を害す気はない、か。」


男はアマー教皇。ブラフマー神聖国のトップだ。彼は急に冥界門が開いた事にいつもより仕事に追われていた。新しい情報が来たが、それは討伐を願っていた彼の願いと違い、討伐不能、よって逃す。その様な旨が届いていた。その報告から、彼はまた忙しくなると思いながら、一人の女性に依頼を出そうとし始めた。


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????・アリア


「ん〜?」


その日、彼女は驚いていた。それもそのはず、彼女が滞在してる国のトップ、アマー教皇から依頼が来たからだ。


「冥界門から出てきた精霊の捜索、可能ならば討伐、不可能なら人に害がある存在か見極めよ、か…。」


ブラフマー神聖国のトップからの依頼だ。断るのは得策ではない。しかも人類最近の自分に頼んでいる事だ、あらかた砦の人間じゃ対応できなかったのだろう。


「受けてあげましょうかねぇ〜」


そう呟いた彼女は、立ち上がり探索者補助ギルドに向かうのだった。


シヲに対して、大きい力が動き出す。


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作者の甘茶です。読んでくださりありがとうございますー!⭐︎、ブックマークお願いします!


用語解説

探索者補助ギルド

冒険者ギルドの様な物。探索者も冒険者みたいな物。階級は上から特級、上級、中位一段級、中位二段級、下位一段級、下位二段級に分かれる。特級は人とは思えない強さを持っている。3人しかいない。ちなみにアリアは特級。

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