第3話 勇者 VS イケメン騎士!? 宮廷で決闘宣言!

「勇者様、お飲み物をどうぞ」

「勇者様、お料理はいかが?」

「勇者様、お疲れでは? 私がお世話いたしますわ」


宴会が始まってから、ずっと俺の周りは美女たちに囲まれている。

さっきからワインを注がれ、食事を運ばれ、マッサージの提案までされる始末。


(これ、絶対モテすぎておかしいだろ……!)


もちろん男として嬉しい反面、こんな異常な状況に慣れるわけがない。

すると――


「勇者様、よろしいですか?」


不意に背後から、鋭い声がかかった。


振り向くと、そこには見た目にも整った美形の騎士が立っていた。

長い金髪に青い瞳、完璧なプロポーションに、まるで貴族の肖像画から飛び出してきたような存在感。


騎士は優雅に片膝をつき、俺に向かって静かに言う。


「私は、第一騎士団長のレオン・ヴァルフォード。王国を守るため、剣を振るう者です」


「お、おう……レオンさん、よろしく……?」


妙にかしこまった態度に戸惑う俺。

しかし、次の瞬間、彼は立ち上がり、真剣な眼差しで俺を見つめた。


「勇者様、一つお願いがございます」


「え? なんだ?」


レオンは腰に差した剣を手にし、キラリと鋭く輝かせながら言った。


「どうか、私と一戦交えていただきたい」


「……は?」


ちょっと待て。今、何て言った?


「私は王国最強の剣士として、この国を守る使命を持っています。しかし、それでも勇者様が召喚されたということは、私では力不足ということでしょう」


レオンの目は真剣そのもの。


「ならば、勇者様がどれほどの力を持っておられるのか、この身を持って確かめさせていただきたい!」


「いやいやいや、俺、戦ったことないんだけど!?」


「勇者様は世界を救うお方……どうか、私と手合わせを!」


真面目に迫ってくるレオン。

さらに、周囲の貴族たちも「おお、勇者様とレオン団長の試合だ!」と盛り上がっている。


「やるしかないですね……!」

「これが勇者様の実力を見る機会か!」


一気に場の雰囲気が変わり、どう考えても逃げられない空気に……!


(どうする、俺!?)


このままだと決闘する流れになるが、俺には戦闘経験もなければ剣すら触ったことがない。


「勇者様、剣はこちらをお使いください」


侍女がすっと、細身の美しい剣を俺に差し出してきた。

受け取ったものの、当然ながら扱い方なんてわからない。


「お手柔らかに……」


と、弱々しく言う俺に対し、レオンは剣を構え、真剣な表情で応じた。


「全力で参ります」


――こうして、異世界に召喚されたばかりの俺は、最強の騎士といきなり決闘する羽目になったのだった。

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