第2話 俺、異世界で勇者無双? それともモテ地獄!?

「それでは、勇者様の歓迎の宴を執り行います!」


国王の威厳ある宣言が広間に響き渡る。

さっきまで俺を囲んでいた貴族や騎士、そして美しき女性たちが、より一層熱気を帯びた表情で俺を見つめてくる。


「歓迎の宴……?」


俺が疑問を口にすると、そばにいたメイドの少女が微笑みながら言った。


「ええ。勇者様をお迎えできたことを祝して、宮廷の皆様が祝宴を開くのです。勇者様のために、最高級の料理や美酒をご用意いたしますわ」


「そ、そうなんだ……」


正直、異世界に来て早々に宴なんて、のんびりしてる場合じゃない気がするけど、断るのもなんか気まずい。

しかも、美しい女性たちの期待に満ちた視線を受けると、「まあ、いっか」と思ってしまう自分がいる。


「それでは勇者様、こちらへどうぞ」


王宮の奥へと案内される俺。


通されたのは、信じられないほど豪華な大広間だった。中央には長いテーブルが並べられ、煌びやかなシャンデリアが天井に輝いている。すでに料理がずらりと並び、香ばしい肉や芳醇なワインの香りが漂ってきた。


「うおお……すげぇ……」


本物のファンタジーの宮廷晩餐って感じで、圧倒される。


席に着くと、貴族の女性たちが俺の周りを取り囲むように座った。俺の右隣には、さっき俺の顔を褒めてきたエルフの美女。左隣には、腕の筋肉をチェックしていた令嬢風の女性が座る。


そして、二人とも俺の腕にそっと手を添えてくる。


「勇者様、よろしければ、こちらのワインをお注ぎいたしますわ」


エルフの美女が甘い声で囁く。


「わ、わざわざありがとう……」


俺が差し出されたグラスを受け取ろうとすると、隣の令嬢が「勇者様、お口に合うかしら?」と、さらに別の飲み物を手渡してくる。


「え、えっと……どっちを飲めば……」


俺が戸惑っていると、二人の間に妙な火花が散る。


「まあ、私が先に注いだのですから、勇者様はまずこちらを」


「いえ、勇者様には我が家秘伝の特製ワインをぜひ……」


二人の美女が俺を巡って張り合い始める。


(ちょ、待て待て、なんだこれ!?)


さらに向かいの席の貴族女性が乗り出してきた。


「勇者様、お疲れではなくて? どうぞ、こちらのローストビーフを召し上がってくださいませ」


そう言って、フォークに刺した肉を俺の口元に持ってくる。


「い、いや、自分で食べるから……!」


「まあまあ、遠慮なさらず♪」


とても拒否できる空気ではなく、俺はされるがままにローストビーフを食べることに。


「ん……うまい……」


めちゃくちゃ柔らかくてジューシーな肉に驚く俺。


すると、今度はメイド姿の女性が俺の背後から密着してきて、優しく耳元で囁いた。


「勇者様……どうぞおくつろぎくださいね。お身体がお疲れでしたら、あとで私どもがマッサージを……」


「え、マッサージ!?」


「はい。勇者様のご活躍のために、最高のおもてなしをさせていただきます」


――やばい。この世界、どう考えても俺に甘すぎる……。


モテモテすぎる状況に、幸せを通り越してむしろ困惑する俺だったが、この後、さらなる波乱が待ち受けているとは思いもしなかった。

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