3つ目のファイル 中古パソコンから発見されたファイル 下書き
どうも!皿野菊五郎です!この雑誌を読んでいるオカルト狂いなら、タイトル見てビビッと来たんじゃないかな?まあビビッと来てない人にも説明するために、今回取り上げる「中古パソコンから発見されたファイル」について解説していこう!
《令和に甦ったネット怪談!?!?》
これは去年から流行り始めたネット怪談だ。令和の時代にネット怪談?そう思う、オカルトマニアもいるだろうがまあ落ち着け。
確かに平成初期から中期にかけて、「きさらぎ駅」「くねくね」をはじめとする掲示板によるネット怪談は急速に広がった。実際この本をよむ君たちにも、それらに熱狂し、大学の単位を落としたものを多いのではないだろうか。
しかし、それらもSNSの対等により状況が変わる。写真を上げろだ、証拠を出せだ、オカルトに信憑性を求める一般人が増えたのだ。それら、純粋にオカルトを楽しまないものにより、怪談やホラー体験は令和のその時まで鳴りを潜めていた。しかし!それが去年ひっくり返ったのだ。
噂になっている怪談のあらすじを書こう。『とある都内に住む女子大学生は、大学の疲れもあってが、不眠が続いていた。ある日、友人から勧められたASMR的なヒーリング動画を見て眠っていると、不可解なことが起きて‥』これが、あらすじの全てだ。
《令和の怪談を考察する!?恐怖とはなんなのか》
なんだ、オチはないのかって?そりゃそうだ。この怪談は「牛の首的」な恐怖を楽しむものなのだ。
オカルト初心者もいるだろうから、説明しておこう。牛の首的怪談とは、語ることが禁忌の怪談。言うなれば、最後まで話を聞いたものが事故に合う、または、身内に不幸が起こる、幽霊を見る、そして、最悪の場合死ぬというような呪いじみたもの。重要なのは話の内容ではなく、書かれた内容を読むという行為そのもの。
今回紹介する「中古パソコンから発見されたファイル」も同じものである。ただ、物語を読むという、普遍的行為に怪談が潜んでいる。
SNSで何万字も毎日文章を読む我々にとって、これは『くねくね』で示された『だれもが行ったことのあるおじいちゃんの家』より、大きな臨場感を生む。また、読むことが禁忌の怪談であれば、テキストファイルやその他文章が見つからなくても、なんら不自然ではない。危険なもので、読んだら死ぬこともあるのだ。
「拡散されず、どこかで消さた」だったり「すごく小さなコミュニティでのみ見れた」などと言われれば、無限に広がる今のインターネットで、真偽を問うのは難しい。
また、そうやって鼻から存在しない(とされる)ものなら、それを創作しようとする動きも現れる。
実際一度、それと思われるテキストが広まったが、すぐにフェイクであると見破られた。そのことは、バックナンバーにはなるが去年の夏号に詳しく記している。気になったものはぜひ読んで見て欲しい。
ともかく、これらは令和の世に流行るべくして流行ったのだ。
《中古パソコンから発見されたファイルに取り巻く噂》
牛の首を聞いたものが受ける、不幸にバライティがあるように、今回紹介する「中古パソコンetc.」にも、紹介したあらすじに加えて、幾つかの尾鰭、言い方を変えれば真偽不明のバライティがある。今回はそれのパターンをいくつか紹介しよう。
①これらの文章は、神奈川県某所の中古品販売店にて、2000円で売られていたノートパソコンに入っていた、内容である。(これが、一番広まり、階段のタイトルになっている)
②歌舞伎町のホストに見捨てられた、若い女が、そのホストを怖がらせるためにSNSのウラ垢に書いた文章を、複数の人間が改変をし、その間によくない噂が生まれた(こちらの説も①と同じくらい、有力なもの)
③本当はファイルは二つあり、そのうちの一つは謎の怪文書である(一部ではもう一つの方に呪いがついているという話もある)
④もし、読んでしまったら「ひとみさまごめんなさい」と深夜0時に3回唱えると、呪われずに済む(被害を最小限に抑えられるという説もある)
⑤全ての内容を読むと、幽霊が現れ無惨な状態で殺されてしまう(行方不明になるという説もある)
どれが真実かはわからない。ただ、怪談は創作を持って完成するというのが私の説だ。ちょっとした見間違いを、大袈裟に話す、聞く、それをまた話す。時にはそれに尾鰭をつけて盛って話す。その営みの繰り返しが、幽霊を作り出す、というのが私の長年の経験による、オカルトが生まれるまでの仮説だ。
しかし、そう話を占めるなら、こんなオカルト雑誌の誌面の最初は飾れない。
なんと、手に入れたのだ。しかも、③で紹介した怪文書と思われるものとセットでである。これが、オカルト史、ひいてはネット史に刻む大発見であることは言うまでもない。どうやって、いつ手に入れたのか、どんな内容なのか、また噂の真相は本当なのか。全てこの身を持って、検証と説明をすることとするが、その前に、件の文章をお読みいただこう。
[ファイルの文章をそのまま挿入]
考察
なぜ、『創作怪談』ファイル内にて、「私」と「彼女」の二つの表記が存在する?(本人の怪談記録の可能性 創作を自称する理由)
なぜ、中古屋で買ったとされるのに、データが消失していなかった?購入時に店員は検査する?(要、取材 来月、16日予定/取り消し)
なぜ、わざわざ怪談として流布させるものを、2つのファイルに分けた?(分けることに意味があった 創作と語りをわける)
なぜ、私はメールで送られてきたこのファイルを、何も考えず開いて読んだ?(アドレスの確認ができない)
なぜ、私は声と、女の姿を見たのに、病院で病名の診断が降りなかった?(いまもいる)
なぜ、体が寒くて、指もおかしいくらいふえてるのに、もじをかいている?
なぜ、わたしはふぁいるをけせない?
たすけて
以上三つのファイルが、先日行方不明となったオカルトライター皿野菊五郎のパソコンから発見された、文章ファイルです。突発的に行方不明となった原因を追究するためにも、編集部内で、十分な協議を行い、この文章を紙面に掲載することとしました。現在、皿野菊五郎と連絡のつく方がおりましたら、誌面最後に印刷されている住所、電話番号、メールアドレス等にご連絡いただけると幸いです。
季刊誌「本当にあったネット怪談 冬の怪談スペシャル」より引用。
どこかのだれかの 遠藤なずな @endou117
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます