第3話

────6月13日


中学2年のなんてことないその日が、きみとわたしがカレシカノジョになった記念日だった。




「雨降りそうだね」



二羽いるにわとりに餌をあげる小旗こばたくんの背中にそう言うと、彼は特に空を気にする様子もなく、適当に「うん」と返事をした。


そうか、天気ネタはだめか。「梅雨だからね」「梅雨すきじゃなーい」なんてやりとりを期待していたんだけど、おもしろくないか。じゃあ…何か別の会話を…この流れも感じない沈黙、どうしようかなあ。



わたしと小旗くんは偶然同じ飼育委員になって、こうして月二回、放課後に飼育小屋と化学室の水槽のメンテナンスをすることになっている。


動物を飼ったことのないわたしがこの委員会に入ったのはただの気まぐれ。


それに対して小旗くんは、動物が可愛くてたまらないみたい。



にわとりはよく見るとちょっとエグいし、うさぎは弱々しくて見てられないし、水槽の魚は共食いをするからコワいんだけどな、わたしからして見ると。


でも小旗くんは、そういうところも含めてまるっと好きみたいだ。

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