第4話

学校ではきっと絶対に見ることが出来ない高梨の笑顔。心。感情。ちょっと悪戯心がある子供っぽい一面。


それがたまらなくくすぐったくて、もったいなくて、ずっと見ていたいと思う。


本当に、こんなはずじゃなかった。



「その言い方やめろって。ハゲたみたいじゃねえかよ」



何回もそう言ってんだけど、これからもそう言われるんだろう。それでおれも飽きずにそう返す。


おれが楽しいと思うことで高梨も同じような反応をしてくれる。



「まあたしかに今はふわふわだけど、いつか絶対ハゲちゃうと思う。だって髪の毛、痛そうだもの」



金に近い茶髪に染めた頭を見てしかめっ面を浮かべている。



「高梨の髪は、健康だよな」


「痛めつける理由ないもの。あ、今日ボタン取られてなくなったの先生に怒られてたでしょ」



うわ、そうだった。おれは家から持ってきた紙袋から制服のブレザーを取り出す。


あいつら、取れかかってたからって勝手に切って「優クンからもらった!」とか言って…ありえないだろ…。



「貸して。よかった、持ってきてくれてて」



貸して、と言われ、差し出す前にすでに奪われていた。


だけどクラスメイトにボタンを取られた時みたいに嫌な気分にはならない。

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