第3話

学年も違うのに。

存在が知られていることに愕いた。


本当にこれは、あの天才が描いたのだろうか。



こんな綺麗な絵を描けるのはこの学校にはあの人しかいない。そう頭では解っていても半信半疑になってしまうほど、わたしたちに関わりなんてなくって。



確かめるように絵の下を見ると、そこにはやっぱり天才・鈴木 創治朗すずき そうじろうの名前が記載されたプレートが添えられている。




同時に目に入った、もう一文。



‟作品タイトル【飛べないつばめ】”





「……飛べない?」




どちらかといえば優しい印象の絵とは正反対のマイナスな言葉に、戸惑いが隠せない。



なんとも言えない気持ちになり、そのタイトルを指さしながら助けを求めるように榛名を見る。


榛名は困ったような表情を浮かべ、わたしと目が合うと苦笑いをこぼし、なんのコメントもないまま先に廊下を歩き始めた。




え、無反応ってひどくない?



「ねえちょっと待ってよ榛名!まだ馬鹿にされたほうがマシなんですけど!」



無視して進もうとする榛名の背中を引っ張って引き留めると、どこからか控えめな声が聴こえた。


「鳥女、榛名くんに言い寄ってる」


…控えめ、というのは間違っているかもしれない。



迂闊だった。


聴こえるようにわざとささやかれた言葉に、わたしはもう耐性がついていてスルーできたけれど、榛名はそうじゃなかった。

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