指先の痺れ
きっかけは、二年前の四月だった。
左手の指先に痺れを感じるようになり「嫌だな」と思った。
しかし、私は慌てたりしなかった。
何故かというと、私は落ち着いた大人で、内面も重厚で、まるで100万円以上はするであろうかという革張りのソファのような。ビニールで革に似せて作ったようなエセモノでなく、いわゆる本格的。職人がカスタマーの要望を聞き取り、何年もかけて出来上がった手作りの。ソファとはそもそもインテリアのひとつであるが、それ単体としてもフォルムも美しく芸術品のごとく。まるでタワマンの最上階の部屋に置かれてても何の違和感も無いというか、もうそこまでいくと絵空事のようにも思えるかも知れないが、これは例えなので本気と取らないで欲しい。
決して、そのような重厚なソファのようなメンタルの男ではない。私は。
もし私がそんな重厚感あるソファのようなメンタルの持ち主なら、恐らくサイバーエージェントで働いてますと言ったような顔をして、何をしてるかよく分からないがやたらコミュ力だけは高い、ハイブランドで着飾ったすけべなだけで金のないような男に女性をアテンドしてもらって、キー局女子アナとねんごろになり、あとで不同意だっと言われ、その女性に示談金を支払ったものの、週刊誌に情報が流され、世間を大きく騒がして、一度は「女性との間でトラブルがあったのは事実ですが、既に解決済みで、これからも活動は継続していきます」と芸能人のような声明文を出すが、その横柄な物言いに対して世間の反感を喰らい、あまりにも炎上してしまって一週間後には「引退」を表明するといった間抜けな目にも合わないし、何を書いてるのか分からない。
話を元に戻すと、私は左手先の痺れを以前にも経験しており、だから「あ。また来たな」と思ったので、前にもかかったことのある整形外科へと行った。
その時も痺れを感じたので、骨の病気だろうと周りから言われ、地元の町医者に行ったら、そのように言われた。
要するに、首の骨の形が変形し、後ろに飛び出るような形になっていて。背骨の背面には神経が走っていて、骨が変形することにより、その変形した部分が神経に触ることによって痛みを感じてるんだと、その時は言われた。
「どうしたらいいですか?」と聞くと、医者は「安静にしてください」と言って、見慣れない器具を渡して来た。
いわゆるコルセットというやつで、従来ロリータ服を愛好する女子が腰に巻いたりするイメージがあると思うが、それの首バージョンといったら伝わるだろうか。
しかし、私が渡されたのはロリータ的なファッショナブルなコルセットではなく、肌色・・もっと厳密にいうとラクダ色みたいな、まるで昭和のジジイの肌着みたいな色をした如何にも医療器具といった見た目のアイテムだった。
こいつを首に巻いて、あとは普通に生活してくださいと医師から言われた。
見た目は悪いが、ビジュ的に病人感を演出することは出来たし、まるで骨折して松葉杖を付いて、痛いんだけど、特撮物のヒーローになったような気持ちもどこかにあったりして。
そうして過ごしていたら、二ヶ月で痺れは取れた。
今回もそんな感じだろうと、気軽に前にもかかった整形外科へと向かった。
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