独白小説

闇鍋

痛い

言葉は意味をなさない


「寒いね」


と僕が話しかけると


「寒いね」


と君が返した。



冬の空はやや曇っていたものの、雲の隙間からは太陽の光が差し。一見すると暖かなようにも見えたが、吹き荒ぶ北風は強く。


見た目に反して、冬の強風にさらされた二人は「寒いね」と言葉をかけ合って、なんとか寒さを乗り切ろうとしながら、歩いた。





と、このように書くと読む人は、ここに書かれた二人はどんな人を思い浮かべるのだろう?


恋愛関係にある若い男女?


いや、男同士かも知れない。


少なくとも主語は「僕」であるのだから、この「寒いね」と話しかけた主体は、男であることが推察される。


しかし今の世の中「ぼくっ子」と言われる、自分のことを「僕」と自称する女性もいる。


ここで、この「寒いね」と言葉をかけたのが男性と安易に断定をしてしまうと、フェミニストを自称する人達から怒られるかも知れないから、注意が必要だ。



そしてまた。それよりもっと疑り深い人なら、これは人と人の会話ではないのかも知れない。例えば、これは野良犬同士の会話、もしかしたら虫かも知れない。トカゲである可能性もある。



物語とはまず舞台がどんな舞台で、そこにいる人物がどんな人間かを何となくでも良いので、記述しないとさっぱり訳が分からなく、誰も読まないものとなるだろう。


人生とは限りある時間のことを言い、その間に苦しい思いを味わいたいと願う人は少ないはずだ。


誰しもが面白かったり楽しかったりする時間で頭の中をパンパンにしたい。それが人間なんじゃないだろうか?


少なくとも自分はそうであるから、あなたもそうなんじゃないか?と思うのだけど、実はそうではないかも知れない。





私は病気を患っている。


常に身体のどこかが痛い。


常は言い過ぎた。


申し訳ない。


しかし、痛みが日替わりで襲って来るのは事実で、一見ふつうに歩いてるように見えても、内心では「痛い」と思ってたりする。


では、冒頭の言葉を置き換えてみよう。



「痛いね」


と僕が話しかけると


「???」


と君は不思議そうな顔をした。




おかしい。


分かり合えてると思ってた二人は実は分かり合えて無かった。


しかし、これは当たり前の話である。


「風が吹いて寒い」は誰もが感じる共通事項だが、「身体のどこかが痛い」は誰もが共感できるポップな話題ではなく、個人の話だから。



自分は、小説など書いたこと無かったが、ふとしたきっかけで何か書いてみようと思い、とりあえず文字を携帯に入力してみた。


何故そのようなことをしてるかと言うと、具体的なきっかけがあるのだが詳しくは後ほど書くとして、私は私の痛いを分かってもらいたくて、それを小説という形に出来ないかと思って、とりあえず導入の部分を書いてみた。


じゃあ、何が痛いのか?ということをこれから書いていこうと思う。



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