前章 表裏の狂人2‐6
「ふぅ。危なかった……」
強風に吹かれ、五階から落下しかけた月城蒼は、間一髪のところで、足場に手をかけることができた。腕の力に自信はなかったが、それに比例するように軽い体のおかげで助かった。
外では、強風が窓を揺らしている。
「こんな危険なこと、もう二度とやりたくない」
ただ、実際に行ったことで、わかることもあった。
整備用のはしごは、窓のどこからも見えない。足場も、ギリギリ見える程度だ。これでは、話を聞いていなければ自力で発見はできないだろう。
そしてこの話は、城西の三年にしか教えられない。つまり、学生が犯人なのであれば、三年生しかない。
危険もあるが、女の蒼も屋上へ行くことができたため、女子生徒でも犯行が可能。
本来は教師を疑うべきであるが、月城朱梨は優等生であった。蒼には、教師に動機はないように思えた。
なによりも教師ならば、わざわざこんな危険な方法を取らずとも、屋上へ行くことができる。それこそ、生徒会の仕事だ、とでも言って、鍵を使って屋上へ行く方が自然だ。ただその可能性は、あの扉によって消される。
そして、このはしごを使うためには、五階に行かなければならない。学校内に入ることができる人間にしか、この方法は使えない。
つまり、外部犯の可能性はほぼ否定できる。
壁を屋上まで登り切る人間がいれば、話は別だが。
「犯人は、城西の三年の中にいる」
蒼は、そう確信した。
その先へ蒼を急かすように、再度強風が窓を揺らした。
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