脱出マジック

 幼馴染が脱出マジックをすると聞いて、もちろん私は最前列の席を確保した。

 彼が入った箱が宙に吊られて、大爆発を起こす前に脱出するらしい。

 私たちが見守る中、幼馴染はめちゃくちゃ失敗して木端微塵に吹き飛んだ。

 脱出出来るかどうかというハラハラすら無かった。あんなの私でも出来る。マジシャンを舐めている。

 ちゃんと練習したのだろうか。こういうのは百パーセント成功させるまで練習するものだと思っていたけど。

 悲鳴と怒号が飛び交うショーケースで、私はよく知っていた男の子が掃除されていくのを眺める。

 人体消失マジックとして見れば、成功なのかもしれない。

 そんな事を考えていたらブルーシートを掛けられてしまった。せっかく四千円も払ったのに、最後まで見られないのか。

 こんな事になるのならいっそ、剣を何本も刺された箱から脱出失敗して欲しかった。

 それなら私が何本でも刺してあげたのに。

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