核戦争後の人類にもたらされた異性の福音は、救済か、試練か?【近未来SF】異星リングと人類の業 〜Alien Ring and Humanity’s Karma〜
カミオ コージ
はじめに
「異星リングと人類の業」
“Alien Ring and Humanity’s Karma”
人類の歴史は戦争の歴史でもあった。あらゆる時代、あらゆる地域で、人類は争い、領土を奪い合い、資源や信念を巡って衝突を繰り返してきた。戦争は単なる暴力ではなく、文明の進化と共に高度化し、戦略、技術、そして政治の中枢に組み込まれることで、人類社会に深く根を下ろしてきた。20世紀以降、核兵器の発明は戦争のあり方を根本的に変え、それまでの戦争と決定的に異なる「人類全体の存亡を賭けた戦争」の時代をもたらした。
しかし、核抑止という理論の下に維持されてきた冷戦構造は、結局のところ戦争を完全に防ぐことはできなかった。局地戦争、代理戦争、経済戦争、サイバー戦争など、その形を変えながらも人類は争い続け、21世紀中盤においても戦争は決して終焉を迎えることはなかった。そして、ついに2056年――核廃絶を実現させたのは人類自身ではなく、異星文明の介入であった。
この事実は、人類にとって何を意味するのか。人類は自らの手で戦争を終わらせることができず、外部からの圧倒的な技術と力によって強制的に武装解除された。この出来事は、人類の「進化」として捉えるべきなのか、それとも「依存」や「支配」への第一歩だったのか。
「戦争」という人類の「業(カルマ)」が取り除かれたとき、人類は本当に新たな存在へと進化したのか、それとも戦争なき世界に適応できず、別の形での対立や混乱を生み出したのか。本論文では、2056年の介入が決定的な転換点となった今、人類がどのような選択を迫られたのかを考察する。
本論は、この問いに答える試みである。
2073年12月
Dr. シーク・ヨサノ(稚内総合大学 未来文化研究学部)
※ 本書は英語で書かれたものを、ヨサノ研究室のトノザキ・ノボル研究員によって和訳されたものです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます