鏡合わせの姫君 魂の鏡鳴
さつきいちご
プロローグ
その大罪の名前を冠する魔女たちは不死不変の絶対的な存在にして、死ぬことができない。
七人の中にあっても最強である、傲慢の魔女グリシフィア。
永遠なる孤高と、退屈。そのすべてを持て余し、
彼女は自身の、劇的なる死を望んでいた。
「望みを叶えてやる」
吐き捨てるように、騎士が言った。
憤怒の化身そのものの激情、それを涼しい顔を受け、グリシフィアが微笑んだ。
「また来たのね、ランス。見せてちょうだい」
魔女が月の引力の魔法を発動する。
世界の法則を操る、傲慢なる力。
影の槍を振るい、魔力で捻り潰し、月夜に舞い上げて、血の雨を降らせた。
だが何度殺そうとも、数年ののち、新しい生を受けて騎士が挑んでくる。
彼には100万回の生が与えられていた。
しかし———
退屈だわ。
いかにその激情が深かろうと、所詮、人間の剣は自分に触れることすらない。
魔女を殺すことなど、誰にもできやしないのだ。
繰り返される無為な戦いの、その始まりとなった記憶を思い出す。
白き姫君。
ランスの激情の始まりにして、失われた王国の姫。
炎に包まれ、焼け落ちていく国よりも、ただ、その姿が網膜に焼き付いていた。
全てどうでもいい、取るに足らないこの世界で、
永遠に続く退屈と、死んでいく人間たちの中で、
なぜあなただけが———鮮烈に残り続けるのだろう。
「何も知らないグリシフィア」
この全能の魔女に向けて、彼女が告げた。
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