第18話

門を潜り抜け一面白の世界に再び足を踏み入れる。そこは敗北を喫した苦い思い出が残る場所、そして今まさに巨大な白の人物像に飲み込まれんとしている音無めぐみがいた。像は膝立ちの状態にも関わらず高さ4mに迫ろうかという巨体で全身が上に向いた手が折り重なるかのように構成されていた。綺麗に揃えられた掌には何かを捧げるときの様な、本来敬虔であるべき姿勢が数を増す事により何かを求めて縋り付いているかのような印象に変わってしまっている。そして音無恵は人であればちょうど胸の部分にある琥珀の様なクリスタルにすでに半身を取り込まれている状況であった。だがメグミちゃんはもう動く気力も無いのか精気が失われた目で虚空を見つめていいた。


「おーやー?せっかく見逃してあげたのに。性懲りも無くま、た…。」


ミカエルと思しき人型の言葉が切れる、何故であろうか。まったくもって皆目見当もつかないが取り敢えず景気づけ、ここで相手の出鼻を挫くことが何よりも大事だと言わんばかりに啖呵を切っておく。


「よぉクソッタレの自称天使様よォ!お前をぶっ飛ばして世界を救いに来てやったぞ!この俺、御影相馬とお前と互角の反乱軍最強のルシファー様がなぁ!」

「…よ、よく一度敗北した相手の前に堂々と姿を晒す事が出来ましたね高々人間風情が!私こそは天国評議会『謙譲』担当!最も輝けるもの!ミカエルでありますわ!…それで、その…その恰好は…?」

「これこそがお前のたくらみを正面から打ち砕く最終兵器!魔法少女!ミラクル♡ソウマちゃんだ!!(ヤケクソ)」

「キラメキ☆ソウマじゃなかったっけお兄ちゃん。もうどっちでもいいけど。」

「止まりたまえ妹殿、もう相馬はッ…自分が何を言っているのかも定かではないんだ…!」


もうなんか好き放題言われる事によりすでに折れそうになっている心を奮い立たせながら勝ち誇った表情を作る。もうこうなっちゃったら雰囲気と勢いでゴリ押すしかないんだから。それに見ろよ、あの間抜け面、しょうじき今まであったことがないレベルの絶世の美女があんぐり口を開けているのを見れただけでこの恥を掻いた事を納得しかけているぞ。…いや、やっぱ割に合ってねえな…。


「…えーっと、ルシファー?こんなのが貴方の今の契約者と仰いますの?」

「んーとまぁ…形式的なモノの上では…そうなってしまうのかな…?正直全然認めていないが。これっぽっちも認めていないが。」

「おいやめろよルシファー俺達真名まで教えあった仲じゃねえか?そうやって契約者を知らないフリしようとするのは、良くないと俺は思うんだがなぁ…?」

「貴方こんなのに真名を教えてしまったの!?かつては私に並ぶほど麗明で壮麗だった貴方が!?」

「し、仕方がないだろう!私が今こんなに惨めな事になっているのは全部お前たちが原因じゃないかぁ!」


ふーむどうやらルシファーにとって真名を教えさせられるというのはもしかすると俺が今自主的に行っている魔法少女コスプレよりも恥ずかしいものなのかもしれない…。ここまで動揺するルシファーを見ているとなんだかかわいそうになってきたぞぅ。


「まぁそんな事はどうでも良くってだな。」

「どうでもいい…!?」

「ルシファーちょっと静かに。とりあえずだ、とっととメグミちゃん返せよ。そっちの政治的な成果とやらの為にあの子の未来をお前らにくれてやる義理なんざこっちには無いんだわ。あと帰れ、二度と来るな。」

「…へぇ、宣うじゃない。逆に聞くのだけれど、どうして私たちが貴方の言う事をはい分かりました~って聞かなくっちゃあならないんですの?この子一人が犠牲になって、天国とこの世界を繋いだら貴方達はこれからも変わらない生活を手に入れられるというのに?…もしかして、貴方ルシファーに嘘吹き込まれていないかしら?」

「嘘こけ、お前らは依り代を通じてこちらの世界に侵略しに来るんだろうが。」

「あーらら。まぁそう吹き込むしかないですよねぇ?情報源はルシファーだけなのだから、確かめる手段なんか無いですものね?」


そこで一息置きながら、嘲笑を滲ませながら宣言した。


「安心してくださいまし?私達天国の住民は決して今回発生してしまうメグミ様以外の被害を与えず、あなた方人間の世界を侵略しないと誓いますわ。これは私の立場を全てかけてもいい、嘘偽りのない不可侵宣言と取っていただいて構いません。」

「門だけ開いて終わりなのかよ…そうまでするメリットがあるのか?」

「ええ、もちろん!そうでなければ分霊とはいえ天国軍の最高軍務大臣の私が現場に単身で来ることなど有り得ませんわ~。」


サラッと明かされた事実にはルシファーも目を剥いていた、分霊?一体どういうシステムなんだ?もしかして本体は天国にいるのかよ、頑張ってこっちに来たルシファーがバカみたいじゃん。


「私達はあなた方の希望が絶望に反転する際のエネルギーを分けていただきたいだけ。あなた方ではただ悲しみと復讐を生むだけの物。されど私たちの元にあれば私達は長年悩まされてきた問題に終止符を打つことが出来る!見返りとして私たちはテレパシーでランダムな人間の方に様々な資源が見つかりやすくなる様に直観を一時的に冴えさせる形で補填を行おうと思っておりますわ。どうです?悪くない話でしょう?」


確かにパッと聞く限りはそんなに悪くない話のようにも思える。そう、思えるだけなのだ。こいつ俺を丸め込めるとかカスみたいな事考えてやがるな?舐めやがって。


「確かにいい話だろう…絶望が無いと大変な事になってしまうので門を女の子一人の命を使って作ります!そしてその罪滅ぼしの為に資源類が見つかる様に人間の脳みそいじくって直観を強化して皆さんに幸せになってもらいます…ってか甘いぜダボが。

なにサラッと次の火種巻いてんだボケが。人間は愚かでどうしようもないから目先の金に分かりやすく釣られて殺しあい始めちゃうんだぞ?定期的に資源が見つかる様になったらあちこちでバンバン殺しあっちゃうでしょうが。だからダメだ。」

「そうですか…では門をつなげるだけにしておきますわね?そちらがお望みになられた事、善意を断られる形になってしまいましたが過ぎた行いであったと聞き私猛省しておりますわ。」

「なに訳分かんねえ事言ってんだ?」


睨みつけながら言葉を紡ぐ。どこまでも自分本位なその態度にむかっ腹が立つなんてもんじゃない。そもそも話の前提を勘違いしている。


「俺は、そもそもメグミちゃんを生きて返して、とっととここから失せろって言ってんだぜ?」

「あら、土台交渉が成立しませんでしたか。ではもうこれ以上の言葉は不要ですわね?面倒ですがここで全ての禍根を断つ事にしましょう。」


そういいながらミカエルが指先をこちらに向ける。その指先には前回受けた光線とほぼ同じ熱量が込められている事が容易に察せられる。無論、黙って消し炭になってやる道理はこちらに無い。


「ルシファァァァアアアアア!」

「ようやく出番か!無駄に恥ずかしい思いをさせおって!」


俺の体の中に入り戦闘形態に変身する服は破け去ったがどうでもいい。胸の炎はとっくに燃え盛っていて気合は十分、前は真正面から受け止めたのがいけなかったのだ。腕に防護魔法を纏わせながら…!


「ッらぁ!」

「光を弾いた!?貴方結構無茶苦茶よ!?」


ルシファーに教えてもらっていた魔力で精製したものは魔力を纏えば弾くことが出来る、最初に聞いた時にはそんな無茶なと思ったものだがやっぱりやってみるものだなぁ!挑戦って大事だぜ!


「分かっているな!まずはメグミ殿の救出だ!この空間から出してさえしまえば奴はしばらく何もできまい!」

「そんな事をそんなに大きな声で言われて!私が通すと思っていらして!?」


あっさりこっちしか見なくなった。さてはこいつアホだな?追いかけられているのを振り切るフリをしながら横目で駆け出したアヤを確認する。当初の手はず通りアヤが単独でメグミちゃんを助けに行く作戦は俺がどれだけ時間を稼げるかにかかっている、ここは何でもいいからこいつの気を引き猶予を引き延ばし続けるしかない…!


「おい、アホ天使!お前天国の中で一番強いらしいがだったらなんでこんなパシリみたいな真似させられてるんだ!?そんななりでも偉いんだろう?部下の一人もつけずに出てくる事なんざ有り得なくないか!?」

「はぁ!?つ、使い走りではございませんわ!これは…そう!崇高な使命!資源の不足に喘ぐ民の為!私は今ここに立っているのです!それと部下がいないのは転送装置の都合ですから!人望がないわけではございませんわ!」

「そう思い込みたいだけなんじゃないのかー!」

「契約者、あまり言ってやるな。彼女はそのパワハラ気質とシンプルな暴力により有志が非公式で作成している「この人の部下に行ったらキャリアの前に人生が終わる!最悪上司ランキング」でトップ3から転落したことがない正真正銘のナチュラルボーンゴミくず女だ。人望が有ると思い込んでいるのは本人のみであるからそんな残酷な事は教えてはならないよ。」

「お待ちになって!?本当に私人望が無いの!?部下は確かに転送装置の容量的に私の分霊を送るのが精いっぱいだと…!」

「そんなの誰もお前と一緒に行きたくねえからだろ、なあルシファー?」

「転送装置のスペックが分からなければ何とも言えないが個人的には行動を共にしたくないと考える方が圧倒的に自然ではあるな。ミカエルの分霊が転送出来るのなら時間をおいて権天使クラスならこれそうなものだがな。」

「そ、それは!私がこちらに来た際に転送装置が故障してしまったのよ!だから私一人で全部やる羽目になって…!

「なぁルシファー嫌いな上司がいる出張先で自分が嘘ついたら罰なくそれを回避できるってなったら普通嘘つくよな?」

「私ならつくね。間違いなく。」

「そんな事ございませんわ!絶対!ぜーったいございませんわ!我が軍の統率を舐めないで下さいまし!」


クソ下らない話を続けている内に随分と熱くなってくれたものだ、やりやすくって助かるぜ。癇癪の次いでと言わんばかりに撃たれてる熱線が確実に即死級の威力をしているのは腐っても最強という風格を感じるが。どうせなら出せるだけ情報盗ってみるか、アヤはもう少し掛かりそうだし。

「随分と余裕だねえ、まぁ駄々っ子の癇癪のように振り回しながら撃っていれば当たるものも当たらないか。」

そういう事、もっと口撃していくぜェ!


「というかその転送装置が調子悪くなったにしてもお前ひとりだけでいる理由づけにはならないじゃん。お前偉いんだろ?だったら普通部下連れまわさなくっちゃ仕事になるもんもならねえよなあ?」

「わ、私は信頼されているのです!これほどの重大な局面に一人で向かわなければならないのは偏に私がいれば後詰も何も要らないだけの事!優れたものには相応しい苦難が与えらえるのでしてよ!」

「そうは言うが転送装置お前が一発目だったんだろ?それもう人体実験と変わらないじゃん。向こうは転移装置のスペックとか安全性についてちゃんと教えてくれたの?」

そ、それは…。せ、説明を聞き逃したので知りませんわ!」

「おい、ルシファーこいつ思ったよりアホだぞ。なんで本体じゃないとはいえ評議会の役職持ちの高官なのに人の話を聞けないんだよ。」

「悲しいがこれが彼女なのだよ。真正のアホ故に説明しても頭に入れないから説明も適当にされるんだ。だが持ち前の武力でここを吹っ飛ばせだとか皆殺しにしてこいとかは出来るから最強の鉄砲玉として扱われているのだよ。」

「命令一文しか無いやん…。頭が悪いというのは…罪なんだなって…。」

「侮辱ですわ!侮辱ですわ!今私は侮辱されているという事だけはハッキリと理解できましてよ!」

「侮辱じゃないよ、これはただの事実の確認だよ。」

「そうだな、事実を陳列されて恥ずかしい事になっている方が悪いのはもはや自明だものな。」

「だ、黙りなさい!私そろそろ堪忍袋の緒が切れそうでしてよ!」

「そんなものが君に存在したのか!これは歴史的な快挙になるぞ契約者!なにせあの能無し単細胞がわずかでありながらも自制というものを覚えたのだからなぁ!」

「ぶち殺しますわ!ぶち殺しますわ!ぜぇ~ったいにぶち殺しますわ!」


「わが契約者よ、こいつ何かがおかしいぞ。」

その声を聴きながらアヤの動向を確認する。もう少しでメグミちゃんが入っている琥珀っぽいものに辿り着きそうだ。4mのロッククライミングこの短時間でよくやったなお兄ちゃん誇らしいよ。それにしたってどういうこったよ環境が変わればアホで救いようがないミカエルちゃんもちょっとはマシになるかもしれないだろうが。

「それはそうなのだがこいつの性根は一朝一夕で変わるものではないぞ。明らかに精神的に弱くなっている…というよりも迷いが多くなっている。」

それがどうにかしたのかよ、慣れない異国の地で一人放り出されて仕事してたらちょっとおかしくなっても仕方ないだろ。

「以前のこいつはそもそも会話をしない。自分の中に答えがありそれにそぐわない事は全て間違いだと切って捨てる、そんな情も何もないただの暴力装置がこいつだ。なのになぜこんなにも情動が豊かになっている?」

悪役令嬢みたいな性格やったんやねこいつ。じゃあなんでこんな可愛そうな子になってんの?

「依り代の影響か…はたまたこの世界による影響か…、分からないが好都合なのは確かだ。利用していけ。」

おっしやるかぁ!アヤももうちょいで助けられそうだしラストスパートってことで!


「大体どうしてお前がこっちにいるんだよお前武力以外になんにもねえんだろ?上も取り敢えずなんかあったら武力で解決すればいいって感じにお花畑なのか?」

「私が一番槍になったのは元はルシファー追撃の為!一段目の追撃が失敗した際に貴様がまだ生きていると確信した私が自らの使命に殉じ推参したのですわ!」

「おいこいつ独断専行じゃねえか。通りで全部の段取りと部下の対応がぐだぐだな訳だよ。だって話通ってねえもんな、そりゃ全部一人でやる羽目になるわ。」

「アホだアホだと思っていたがまさかここまでアホだとは…。通りで無駄に全ての行動が早いわけだ。ちゃんと待機していればこちらは手の打ちようがなかったかもしれないのに…。」

「悪がそこにいるのなら、私が行かずに誰が行くというのですか!全ては悪を滅する我が使命に従っただけの事!無駄に話をこねくり回すハニエルやウリエルのように鈍重ではないだけでしてよ!」

「会った事無いけど絶対今あげた二人苦労人じゃん。地獄見てそう。」

「実際そうだった。ともに働いていた時はストレスでおかしくなってハニエルは味覚障害を患い、ウリエルはメンヘラになっていた。どう考えても人数に対してまともの比率が少なすぎたのが原因だが…。」

「どこも真面目なヤツにしわ寄せが行って壊れていくのは同じなんやなぁって。そこの奴は人生、いや天使生というべきか?その辺楽しそうだが。悩みとか特になさそうだもんな。」

「誰がアッパラパーですか!私もここに来てからは思い悩む事が増えましてよ!自身が捧げるものは本当に武力だけでいいのかとか、もっと愛を世界に満たすためにはどうすれば良いのかとか!」

「君が他者の為に思い悩むとは!本格的にラファエルに頭を見てもらった方が良い!これは歴史的快挙と言っても過言ではないぞ!」

「黙りなさい!ちまちまと避けるばかりで…!そういえばもう一人は!?」

「とうとうバレたぞ煽りのタイミングをしくったか?」

「時間で考えれば及第点といった所だ、むしろ色々知れた分差し引きで勝ちといった所かな?」


すでにアヤは目的地である良く分かんねえところに到達してメグミちゃんを引き上げようとしている。だが何か様子がおかしい、乙女が決してしてはいけない角度まで足を開き渾身の力で引き上げようとしている様子だがメグミちゃんが動く気配がない。というかなんか叫んでるようにも聞こえる。


「いたたたたたたた!!もげる!腰から下もげちゃうって!いったん力を緩めてってばぁ!」

「う、る、さ、い!こっちは今必死に頑張ってんだからメグミも根性見せなさいってば…!」

「根性とかそういう問題じゃないって!頑張ってこれどうにかなる問題じゃないもん!あ、ちょっと待って本当にダメ今ブチって言った!腰辺りが絶対ブチって言ったから!お願いだからはーなーしーてー!!」

「いやだ!(食い気味)大事な友達を!あんな奴らの為に死なせたりなんかさせないんだから!!だから!絶対助ける!」

「あっちに殺される前に今死ぬんだって!お願いだから止まって!止まれ!ちょっ…止まれっつってんでしょうがボケがァ!!ぶちまわすぞォ!!!」

「「えぇ…。(困惑)」」


とんでもない言葉の応酬、もといどうにかメグミちゃんを助けたいアヤとアヤのせいで死にかけているメグミちゃんの言葉による殴り合いが発生していた。どういうこったよ。美少女が恥も外面も無く全力で言い合っている様には一定の迫力があるのか先ほどまで命のかかった追いかけっこをしていた我々3人もつい足を止めて見守ってしまった。


「その…なんというか…美しき…友情?というわけですね…?いや、原因が私なのは百も承知なのですが…あの子ってあんなに激発するタイプだったのですね…。」

「果たしてそうなのかは疑問が尽きないところではあるがそれはそれとして一発かませばいいのではないか?」

「おっ、そうだな。らぁッ!!」

「きゃん!?」


取り敢えずミカエルの顔面に回し蹴りを叩き込み吹き飛ばす。やっぱりこの戦闘態身体能力が何十倍にも跳ね上がってるな。少なくとも人型の生き物を10m単位で吹き飛ばすとか出来ないもん。


「よし、いったんあっちに救助に行こうか。」

「君のそういう冷静な所は私は素直に尊敬したいと思っているよ。」

「ありがとサンクス。ほら行くぞー。」


人生で車でしか出たことが無いような速度を出しながら二人の元へ駆けつける。そして到着し喧嘩の仲裁を始める。


「はいお前ら騒ぐのストップ。どう、取れそう?」

「お兄ちゃんこれ無理そうだよ!メグミちゃんがクソ強情なんだから!」

「私のせいじゃないもん!何回も止めてって言ったのにずっと引っ張ってくるアヤちゃんが悪いんだもん!」

「あー落ち着いて欲しい。ちょっと戻っちゃってる、戻っちゃってるから。」

「私だってすんごい頑張ったんだよ!そんな事言わなくって良いじゃん!」

「あーはいはい、そうだね頑張ったもんね?でもやっぱり頑張りって方向性が大事だと思うんだよ俺。それが人に関わることに関しては特にね?」

「相馬、確かにこの状況にお兄ちゃん力があふれるのは致し方が無いのは致し方ないが時間を考えてくれ。」

「よし、ルシファー!とっとと解除よろしく!」

「いや無理だが?」


なんで?出来そうな雰囲気してたじゃん。お前嘘ついてんじゃないよ。


「無論嘘ではない、どうにもこれは囚われている者の心象に性質を変える様だ。故にその子の気持ちが一番の問題になる。」

「さっきまでの落差で風邪ひきそうになるわ。もうちょい気楽に説明してくれん?」

「メグミ殿が出たくないと思っているから出られないのだ。出すためにはメグミ殿が心の底からそこを出たいと思わなければならない。」

「よっしアヤ!今度は二人だ!全力で行くぞ!」

「待て待て待て待て!お願い待ってお兄さん!アヤだけならともかくその姿で本気で引っ張られたら冗談抜きで千切れちゃう!だから待って!もっとほかの方法があるから!」

「まぁ諦めてくれや。上半身だけになってもルシファーが治してくれるだろ。アヤ左手持ってせーので行くぞ。」

「了解!いくよー?」

「話聞けってばバカ兄弟がァ!え、ムリムリムリ!無理無理無理無理!!」

「待ちたまえ!さすがに下半身が千切れたのは無理だもっとこう…心に直接語り掛ける感じで…!」

「ンな事どうやってやんだよ!やり方説明するときはまず最初にやって見せろって東郷平八郎も言ってただろうが!」

「待ちたまえよ…!」


そういいながら何かの魔術を行使していかにもな魔法人を広げるルシファーそして視界に入るしっかり鼻血をたらしながらスプリント選手もかくやと言わんばかりのフォームで夜叉の様な顔をしながら駆け寄ってくるミカエルの姿を見る。足元にはいまだに言い合いをしているアヤとメグミちゃん。

情報量多すぎだろ。


「心象風景投影式展開、契約者の魔力炉心励起。マナよりオドへ、オドを式に。」


胸の炎がより一層燃え上がる。それと同時に視界が揺らぐ。


「ねえ、ルシファーお願いだから今から何すんのかだけ教えてくれよ!前の時に見たいにとんでもないことに成ったら洒落になんねえんだからさぁ!」

「術式対象者確定。ダイバー確認。ダイバーの自我希薄化ならびに対象者への表層意識までのルート確立。告げる、『汝の魂の安息の為に我は使者を遣わさん。』術式起動。行ってくるといい、時間は気にせずにね。」

「それってよォ!よくある覚醒イベントって…。」


俺の意識は突如暗転した。

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