第11話 中学生みたいな悶絶をしてしまう29歳
今日も疲労困憊。一応、一週間の中間地点である水曜日は今週も無事に乗り越えた。
そして今はちょうど晩御飯も食べ終えて、あとは眠りにつくだけの状態で自宅ベッドの上でスマホを弄っている状況の俺。
眠い。これは、スマホを弄っている間に寝落ちする日の感覚...。
「......」
あ、そうだ。大塚さんが明後日のご飯に来ることを、あいつ等にも報告しておかないといけないことをすっかり忘れていた。
そんなことを考えながら、俺はスマホでぼーっとあいつ等とのグループlineでメッセージをタイピングする。
『明後日、大塚さんも一緒に飯食いに行くことになったからよろしく』
まぁ、不本意ながら明後日は俺が金を出してやるか。
さすがに割り勘は彼女に悪い。
にしても、もし本当に彼女が本田に好意があるのだとすれば、付き合うのは時間の問題だろう。さすがに今の彼女と別れてからでないと問題でしかないけど。
『おお、よかったじゃないですか。松坂さん』
何だ。中村からもう返事が返ってきたかと思えば、よかった?
『よかった?』
まぁ、彼女が参加することによって、いつも以上にボロボロにあいつ等からバカにされることもないのであれば、それはよかったのかもしれないが。
『はい。普通に大塚さん、松坂さんに脈ありじゃないですか。狙って行きましょうよ』
は?
何言ってんだこいつ...。
『いやいや、何言ってんだお前、さすがにその嘘に嵌められて暴走するようなバカな俺じゃないぞ』
本当に。
『そもそも、多分彼女がもし誰かのことを狙っているのだとすれば、この中だと本田のことだと思うぞ』
そう。彼女と別れる予定の本田。
そんなことを考えながらタイピングをしていると、今度はその本田からのメッセージがグループラインにあげられる。
『え? 何で俺? 正直、俺、大塚さんとプライベートな会話とかほとんどしたことないっすよ。仕事では何度か関わりましたけど、その時もほぼ絡んでませんし』
いや、仕事で何度か変わったのであればその時に何か思うところがあったのだろう。本田、超優秀で将来性ありありだし。
『それに俺、普通に彼女いますし、どっちにしろ駄目でしょ』
『いや、でも別れる予定なんだろ?』
『あー、何だかんだで仲直りしたんで、またラブラブです。何なら今は以前よりも仲いいです』
何だ...。結局、仲直りしたのかよ。糞ガキが...。
面白くない。
『てか、普通に中村くんの言う通り、大塚さんは俺ではなく、間違いなく松坂さん目当てでしょ。そもそも、お二人仲良いじゃないですか』
は?
『いやいや、俺こそ仕事で何度か関わっただけだし、なんせ俺だぞ。仲良いというよりは慈悲の心で優しくしてもらっている気はするけど、絶対にないだろ。お前ら、ちょっとまた悪い部分でてきてるぞ』
本当に。これで俺が大塚さんに特攻してフラれて爆笑したいのだろうが、さすがにそこまで俺は自分が見えていない人間ではない。
あいつ等、俺のことをこんな煽りに騙される、思春期の中学生だとでも思っているのだろうか?
「.....」
まぁ、確かに恋愛においては、悲しくも正直なところ、思春期の中学生以下なのかもしれないけど...
そして、そんなことを考えていると、今度は同じ部署の後輩である大久保からもメッセージが返ってくる。
『でも、僕が見る限りでも、松坂さんと話している時の大塚さん。かなり楽しそうですけどね。松坂さんは気づいていないかもしれないですけど、隣の部署から大塚さんが、松坂さんのことぼーっと見ている姿を割と頻繁に目にしますし』
いやいや、大久保まで。
てか、大塚さんが俺のことを頻繁に...?
こ、こいつ。また適当なことを。
『いやいや、大塚さんは誰と話している時でも楽しそうだから。それに、確かに珍獣を見る様な目で大塚さんから見られることは多々ある』
そう。彼女は誰と話す時でも楽しそうな表情をするし、それに俺の場合は笑顔を向けられているというよりは、笑われているだけ。
『もし、あれでしたら俺、直接、大塚さんに聞きましょうか?松坂さんに脈があるかどうか』
は?
『いやいや、絶対に止めろ。それはさすがに真剣に止めろ。ありえないから。もしそんなことしようもなら完全に絶交だぞ。本気で』
『はーい。とりあえず止めときまーす!』
本当に止めろ。俺としては何の勘違いもしていないのに、間接的に後輩使って自分に脈があるか確認しているダサい奴みたいに思われるのも絶対に嫌だし、そもそも何と言ってもだ。ちょっと優しくされただけで暴走してしまう、勘違い男みたいに彼女から思われてしまうことが何よりも嫌。
これだからアメリカ育ちは何でもかんでもストレートに...。
『でも、絶対にあの大塚さんの雰囲気、松坂さんに脈あると思うんですけどね。普通、少なくとも興味のない男に女性はわざわざ、別の部署からあんな風に頻繁に話かけになんて来ないですよ』
『それは俺も思う。松坂さん、この際ですから大塚さんいっちゃいましょうよ。彼女みたいないい子と付き合えたら人生大大大逆転じゃないですか』
『いっちゃいましょう!松坂さん!!!』
マ、マジでこいつ等...。
本当に性格が悪いな。悪すぎる。極悪だ。
何度も言うけど、これでもし俺がこいつ等の言葉を本気にして、彼女に特攻でもしてみろ...。
玉砕粉砕大喝采になって一片の塵も残さぬ消滅することは確実。
「この人、俺達の言葉鵜呑みにしてマジでいっちゃったよー」と腹がよじれるぐらいにギャハギャハと大爆笑しているあいつ等、3人の姿が鮮明に目に浮かぶ。
今だって、スマホの向こう側で奴らは絶対にニヤニヤと笑いながら俺のことをさっきから焚きつけているに違いない。
さすがに彼女が俺に好意があるなんてことは絶対にないし、あいつ等のそんな与太話を本気にしてしまうような俺では本当にない。
「......」
とか、思いつつ。
いや、違う。違うけど...マジかよ、俺。
な、何で...ニヤケてしまっているんだ。
いやいや、バカかよ。無意識とはいえ、マジで気持ち悪すぎるだろ、俺。
あの、社内のアイドル。大塚さんだぞ。
ないないないない。
なのに、何で今、俺は..。
あ、頭がお花畑すぎんだろ。
大塚さんが俺を...?
って、いやいやいやいや、冷静になれ。本当にバカかよ、俺。何をあいつ等の術中にまんまと嵌って...
だって、そもそも俺は彼女とlineすら交換すらしていないし、よくある脈ありパターンみたいな彼女の有無を聞かれたりしたこともない。ボディタッチだって全くされた覚えもないし、普通にないだろ...。
「.....」
駄目だ。バカすぎる。今日はもう寝よう。
「......」
いや、駄目だ。さっきまであんなに眠たかったのに、今や脳が完全に起きてしまっている。全く眠れる気がしない。
アホだ。アホすぎる。
マジで中学生かよ...。俺。
「......」
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