塔原島郷 ~魔法・魔術の幻想録~

水霊氷Water ice

第1話「世界の嫌われ者」

科学が大きく発展した時代。

ありとあらゆる事象は全て解明され、時間と共に妖怪・神などと言った存在・認識から忘れ去られた、人間種の時代。

そんな平和な世が4000年続いた頃、天気が悪く月明かりが隠れるほどの厚い雲に覆われた夜、

一瞬にして多くの建物が倒壊するほどの巨大な地震が発生した。

それと同時に各地の地中から赤く染まった光柱が現れるほどの地中爆発が発生し、甚大な被害が出た。

 光柱が数ヶ月出現したままで、生き残った科学者が調査を始めた頃、一つの柱が黒くなり始め異形の怪物が現れ周辺を暴れた。

最初は化学の力で撃退していたが、残りの柱も黒くなり、怪異が現れ始め対処できなくなっていた。

 数百年に渡り、人間種と異形種の戦いが起きたが、後に魔王と呼ばれる存在によって敗北。

地上は魔界と化し、生き残った人間種はこの地から逃れる為最後の技術を生かし、はるか上空に地上の一部を浮かし、一から生活を始めた。


「ーーこれが、この世界の過去であり、科学が衰退し、魔術が発展した歴史です。」

「魔王、、、、か、」

「?どうかしたの?玲依」

「なんでもないよ」

「?」

俺は、無月玲依。

五属性魔術が使えない、ただ魔力が高いだけの無能術師である。

そんな俺がなぜ、この上魔術高等学園に通えているのかと言うと、入学試験の際に現れた影のヒビから現れた魔獣を魔術を使わずに撃退したこと、桁違いな魔力値に学園側が興味を持ったからだ。

「ーーーーて、ねぇって、聞いてる?」

「え?、あぁ、ごめん、なに?」

「もぅ、さっきから話しかけてるのに、無視して、」

「ごめん、ぼーっとしてた、」

「あっそ、」

「?」なんだ?

たくっ、あんな大きな声で話しかけてきて、「隠」の札がなかったら教師に怒られるところだぞ、

授業中にも関わらず大きな声で話しかけてくるこの女子は、宮泉杏菜。

隣の席であり、初めの頃は冷たく話しかけても長く続かなかったが、日が経つにつれあっち側から話しかけても来るようになった。

「つまんないな、」

手に持ったいたシャーペンを机に置き、手を頭の後ろにやり背もたれに寄っ掛かかった。

「ちょっと、大丈夫なの?」

「なにが?」

「そんなことして、先生に見つかったら怒られるよ?」

「あぁ、それなら問題ないよ」

「?」


影のヒビ。

2年前に突然各地に現れ、そこから闇を纏う大きな獣が現れ暴れ回った。

すぐに魔術で対処していたが、ヒビから次から次へと現れる獣に苦戦を強いられ被害が大きくなったころ、国の最高期間が高い魔力を持ち強い能力を持つ者を集めた最高機関組織を作り、騒動を抑えた。後に、第一次進行と呼ばれた。

そして、三年間は平和な時代がつづいていたが、約半年前の入学試験の日に大きな揺れと共に、各地に過去最大のヒビが現れ、政府の機関組織でも対処に数ヵ月の時間がかかったほどの大災害が起きた。(第二次大進行異変)


ー2月14日「入学試験当日」ー

俺は魔術が使えなかった、使おうとしても魔法陣に亀裂が入り砕けてしまう。

何度も何度もいろんな魔術を試したがどれも同じ結果だった。

この世界では魔術は神である、ルシア・トウゲンにより寵愛を受けているとされ、過去にも魔術を扱えない者は呪われし者とされ世界から嫌われ、消されてきた歴史。

だが、そんな俺にも唯一使える力があり、それは人形の紙に術式を流すことにより魔術に近しい力が扱えた。

当然最初は周りから冷たい目を向けられ、親からは距離を取られ居ないものとして扱われた。

そんな事が続き、現実から逃れる為今日も人気にない村の森の奥にある隠れた草原に向かうため歩いて向かっていた。


「そういえば、今日は都市で有名な魔術学園の入学試験とか言ってたな、俺も一度でいいから学校ていうものに行ってみたかっな~」

独り言を言いながら森の中を歩いていると大きな揺れと共に膨大な魔力があふれ出し、さっきまで木漏れ日が差し込んでいた状況が瞬時に光を失い薄暗くなつた。

「なんだ、今の揺れは、しかもこの濃い魔力、、向かっている広場からか、、」

辺りが暗くなったにも関わらず玲依は走り出した。

草原に近づくにつれ、いつもの心地よい風とは違く、鳥肌立つ生暖かい風が強く吹いていた。

 しばらくして木々を抜け草原に着くと、今まで見たこともない魔力の渦が周辺を囲っており、その中心にはその魔力の元なのか黒く大きな塊?が空高く広がっていた。

「なっ、これは一体、、、」

「ホゥ、我ガ瘴気ヲ受ケテモ何モ無イトハナ」

「!?」

さっきまで、なんの気配がないところからいきなり声が聞こえ、驚き声が聞こえた方に振り向くとそこには黒いオーラを纏った巨大な獣がこっちを見ていた。

「いつの間に!」

玲依は札を取り出し、術の準備を始めた。

「我ト戦ウツモリカ、魔術モ使エヌ者ヨ」

「!?」

「分カナイトデモ思ッタカ、」

「何者だ?」

「貴様ゴトキ二教エテモ無駄ダト思ウガ、特別二教エテヤロウ、我ハ幻獣族、漆黒ノディアボロス。主ノ命二ヨリコノ島ヲ血塗ラレタ怨念二包マレタ地獄ニスル為ココ二来タ。」

「幻獣族だと?まさか、二年前の!」

「二年前、光ト闇ノ魔力ヲ持ツ者二我々幻獣族ト主ハ敗北シタ。」

「光と闇だと?」

「長イ眠リカラ主ハ目ガ覚メ我々、八第神二コノ世界デ脅威トナル六人ノ英雄ヲ始末スルノダ。」

「六人の英雄、、、、、、、聞いたことがないな。しかし、そんな大事な情報を俺に話していいのかい?」

「問題ナイ、英雄ノ事ヲ知ラナイナラココデ始末スルノミ!」

ディアボロスは周辺の闇を中心に集め始め、魔法陣と大きな槍を召喚した。

「あれは、まさか真属性か」

「ホゥ、ココデハソウ呼バレテイルノカ」

「人間では真似できない最上位の位階魔術」

「ソウカ、ナラバ人間ヲ遥カニ超エル我ガ魔術デ死ヌガイイ」

砕ケ散レ「ダークネスバースト」

闇の魔力が一瞬で草原全体を覆い、次の瞬間膨大な魔力爆破が発生した。

範囲外の木々が風圧に耐え切れず吹き飛び、被害は村を含め周辺の町や一部の都市が巻き込まれた。

「ハハハ、ドウダ、コレガ幻獣族ノ力ダ。」

爆発の影響で周辺は霧に包まれ何も見えない状況だが、先ほどまだ感じていた魔力がなくなり、爆破と共に蒸発したかと喜んでいた。

「コノ様子ジャ、吹キ飛ンダカ、ナントモ呆気ナイ。サテ、イレギュラーナコトガ起キタガ、我々ノ目的デアルゲート周辺ノ浄化ハ達成ダ、礼ヲ言ウゾ『コノ世界ノ嫌ワレ者ヨ』」


ー第二ゲート・魔術都市ー

「なんだこれは?先っきの大きな揺れと共に現れたぞ、」

都市の中心であるマナの泉の真上に空間を切り裂くような黒い紋様が現れた。

周りの人々がなんだ、なんだと集まり始めた。 

すると、大きな獣の姿をした影が亀裂から現れた。

「あら?世界のゴミが、こんなにもたくさんこれは当たりを引いたわ。」 

「人語を話す獣だと、」

「なんか気味悪くない?」

「あの、黒いの全て魔力なんじゃない?」

周りに集まっていた人々のヒソヒソ話を無視して、獣は独り言を続けた。

「まずは、この醜いゴミの巣を木っ端微塵に吹き飛ばすわ」

神術「神々の人化」

足元に巨大な紫色の魔法陣が現れ、獣は紫色の光に包まれた。

「この光は、、、?」

「あの色の光はまずい!」

「全員現場に到着、」

「よし、では行くぞ!」

建物の屋根を渡り、複数人の赤色の羽織を纏った物が謎の獣人を囲むように現れ、それぞれ刀を取り出し、詠唱を唱えた。

「Ⅴ位階「フレイムソード」」

「付与詠唱「ヘルフレイム」」

「木火魔術「フレイムトルネード」」

「Ⅹ位階「エレメンタルフレイム」」

高火力の魔術により大爆発が起き、その威力を最小かつ高威力に保つ為、竜巻が起きていた。

「こちら烈風隊(火)対象を竜巻で動きを封じました。」

「あの人たちは、まさか国家機関組織の!?」

「ほんとだわ、」

「しかも、あの赤い羽織は組織の中でも高い戦闘力を持つ精鋭部隊、」

「隊長、今のうちに」

「あぁ、そうだな」

「5部隊」

「は、!」

「今のうちにここにいる民達を避難させよ、

そしてここを立ち入り禁止区域にする。」

「わかりました。他の隊には?」

「私から伝える」

「了解しました。」

「では、我々もやるぞ」

「はい、」

「結界「ヘルフレイムフォール」」(第ⅩⅣ位階相当)

竜巻とその周辺の四方を炎の壁で囲い、結界が作られた。

「来るぞ、」

炎の竜巻から亀裂が入り、そこから人の姿をした無傷の女の子が歩いてきた。

「幻獣族、」

「フフフッ」

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