第2話 殺して解決②
定時に帰れるようになった僕は、暇になったのでソシャゲ、それも位置情報ゲームをやるようになりました。と言っても、職場から家までの帰路だけですが。いつもの帰り道がとても楽しくなります。自然と歩きスマホも増えてしまいます。歩きスマホは良くないですが、やっぱり気になってしまってついついポケットからスマホを取り出して歩きスマホをしてしまいます。
そんないつもの帰り道、後ろから思いっきり肩をぶつけられました。不意にぶつかった、ではなく明らかに悪意がありました。咄嗟の出来事にぶつかってから僕を追い抜いた人物を見たらその人も振り返りギロリと睨みつけてきました。「なんだ、文句でもあんのか」とその目線は語っていました。私はスマホをしまい、目を伏せて逃げました。
次の日の同じ帰り道でも同じ奴にぶつかられました。今回は僕も歩きスマホはしていませんでした。ぶつかられてからまた嫌な思いをするのが嫌だったので、そいつのことを見ることもなく端に逃げました。そいつは少し笑っているように見えました。僕は少し距離を空けてそいつのことを尾行してみました。そいつはぶつかるルーティンでも決めているように、歩きスマホをしている弱そうな人にぶつかっていました。僕は歩きスマホは良くないけれど、反論してこなそうな人をターゲットにして身体をぶつけるのも良くないことだと思い、いつものノートにそのことを書いてピローソリューションしながら眠りにつきました。21日後、今まで避けていた前の通勤経路を通りましたが、あの人はいませんでした。きっと反省して人にぶつかるのをやめたのだと思います。みんなハッピーになって良かったな、と思いました。
クソ、今日も何もいいことが無かった。現場監督にはどやされるし、変な爺さんにクレームもつけられるし散々だ。俺は職人だぞ。もっと社会が大切にしなければならない人材なんだ。それなのになんだ。会社もクソ、社会もクソ、家庭もクソ、早上がりできたから行ったパチスロも天井まで回したのに単発のクソ。クソ、クソ、クソ塗れだ。だから俺が社会の不条理を正して何が悪い。歩きスマホするやつなんていうのはクソ以下のクソなんだ。しかもヒョロヒョロしたナリで楽そうな仕事して、楽しそうに歩きスマホしながらゲームしてやがる。こんな奴らは俺が制裁すべきなんだ。ヒョロガリどもは俺のパワーで吹っ飛んだり肩を押さえたりするが、ガンをくれてやればビビって逃げていく。正義の執行はとても気持ちが良い。今日は5人に対して正義を執行したせいか、気分が良く酒を飲みすぎてしまった。すっかり終電の時間だ。早く帰らないと嫁にどやされるぜ。少し足下がふらつくな。
「ドン!」
ぎゃ、なんだこの野郎!うわ!いてぇ!線路に落ちちまった。クソ、ふらつく。う、眩しい!あ、しまった!
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