病院のお見舞い

リラックス夢土

第1話 病院のお見舞い

 私の好きな彼はクラスの学級委員でスポーツも得意だし勉強もできた。


 多くの女子が彼のことを好きだと言っていたけど私の彼に対する恋心は誰にも負けないと思っているわ。


 そんなある日。私は道を歩いていると角から飛び出してきた自転車とぶつかってケガをしてしまった。

 骨折した私は病院に一か月も入院だと言われて泣きたくなったの。


 でも病室に私の好きな彼がお見舞いに来てくれた。

 なんと私とぶつかった自転車を運転していたのは彼だったらしい。


 彼はかすり傷で済んだようだったけど私にケガをさせたことに責任を感じて毎日学校が終わると病院にお見舞いに来てくれた。


 私が思ってた通り彼はとても優しかったの。


 病室で彼と二人きりで過ごす時間は私の宝物になった。

 永遠に骨が折れたままでいて病院に入院していたかったけど私の退院の日は来てしまった。


 学校に登校した私に彼は「良かったな」って言ってくれたけど、ただそれだけ。

 病室で二人きりで話したのはまるで夢だったかのように彼は他の同級生と遊んでばかり。


 その日から彼が私に声をかけることはなくなってしまった。

 私は彼と過ごした病室での一か月が忘れられない。


 そうだ。また彼の自転車にぶつかって骨折をして入院すればいいのよ。

 そうすればまた彼は私のお見舞いに来てくれるはず。

 彼はきっと照れ屋だから私と二人きりにならないと私と話せないのよ。

 だったらまた二人きりになれるようにすればいいのだわ。


 私は彼が自転車に乗り坂を下りて来るのを確認して角から飛び出した。

 自転車が私に当たって激しい痛みを感じて私の意識は途絶える。


 意識が戻った時は病院のベッドの上だった。

 私は再び骨折をして今度は二か月の入院をすることになった。


 良かったわ。これで彼はまた私のお見舞いに来てくれるはず。

 そうすればまた二人の時間を過ごせるわ。


 でも次の日もそのまた次の日も彼はお見舞いには来なかったの。

 なぜ彼は私のお見舞いに来てくれないのかしら。


 私は不思議に思ってお母さんに尋ねた。


「ねえ、お母さん。私とぶつかった自転車の彼はどうしてお見舞いに来ないの?」


 その瞬間、母は涙目になって私に言った。


「あなたにもいずれは話さないといけないと思っていたんだけど、あなたにぶつかった自転車を運転してた男の子は道路に頭をぶつけて死んでしまったの。でもあなたが責任を感じることはないわ。これは事故だったんだから」


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