第41話 みんなのマナを分けてくれ!

 そして私達四人はその場で服を脱ぎ始め下着姿になった。お母さんも大層驚いた様ではあったが、何も言わず見守ってくれていた。私は、お母さんに仰向けにベッドに寝てもらい、掛け布団をはずした。お母さんの左腕には持続点滴のチューブや、モニターのカフが付いていて見ていて痛々しい。


「お母さん、リラックスして仰向けでじっとしていてね。途中、ちょっと気持ち悪くなるかもしれないけど、我慢出来ないくらい苦しくなったら教えてね」

 私は、お母さんの寝着の上着の腹のところのボタンをはずし、お腹を出しておへそが見える様にした。そして下に履いているネルのズボンと下着を、ギリギリ十五cm程下げて、下腹部の丹田部分を露出した。お母さんの白い下腹部を見て、一瞬、あの夏の午後を思い出したが、お母さんは何も言わず眼を閉じてくれていた。


「ミュウさん。若葉ちゃん。それじゃお願い」

 私はベッドサイドに直立し、そのまま右掌をお母さんの丹田にそっと添える。そして立っている私を挟む様に、両脇からミュウちゃんと若葉ちゃんが膝立ちで私の身体に密着した。

 ミュウちゃんが、私の横腹を胸でなぞるようにゆっくり動き、彼女の柔らかな胸の感触とブラのワイヤーの固い感触が交互に私の脇腹を刺激する。そして若葉ちゃんは私の太腿を自分の胸に抱え込み、両手で上下に撫でている。そして二人ともどんどん息遣いが荒くなる。

 

 キュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンキュン

 マナ生成がたちまち彼女達でのMAXに達する。


「それじゃ始めます。アストラルアビスフォーカス!」

 ミュウちゃんと若葉ちゃんに貰ったマナと、予めみのりちゃんと造って蓄えていたマナを使い、私はお母さんの深層意識とのリンクを試みる。表層意識のどこかに、深層に通じる間隙があるはずで、それを探すのだが、表層意識を外部から触られるのは、正直あまり気持ちのいいものではない。お母さんも「んっ」とか「くっ」と、時折ちょっと苦しそうに唸る。だがここで手を緩める訳にはいかない。ミュウちゃんと若葉ちゃんが造ってくれるマナにも、彼女達の体力にも限界はあるのだ。


 そして一時間ほどが過ぎ、私はようやくお母さんの深層意識への糸口に到達した。

「二人とももうひと頑張りお願いします」もう二人ともヘトヘトに違いないのだが、イメージ的にはその糸口に手を突っ込んで広げる様な感じでマナを注ぎこまねばならないのだ。二人の身体の動きがさっきよりも大きく激しさを増し、造られるマナも増えてきた。

「それ、もう少し……いいぞ……こい! リンケージ!! やった。シンクロ出来た! 二人ともご苦労さま」

 はあっと大きく息を吐き、ミュウちゃんも若葉ちゃんも床にヘタりこんだ。


 だが本番はこれからだ。シンクロしたお母さんの深層意識を使って、今度は私がお母さんの身体の中の浸潤したがん細胞をサーチし浄化せねばならない。

「それじゃ、お姉ちゃん。真打ち登場って事でお願い!」私はお母さんの方を向いたまま、後ろで待機している姉のみのりちゃんに声を掛けた。

 みのりちゃんは、私の後ろに立ち、両手を私の腹側に回してぎゅっと私を抱きしめた。そして姉の柔らかな胸の感触が私の背中に伝わるが……えっ?


「お、お姉ちゃん……もしかしてノーブラ!?」

 コロコロしたものが確かに背中に当たっている。

「あき君。絶対後ろ向くな! ……ミュウも若葉ちゃんもあんなに頑張ってくれてて、私が頑張らない訳にはいかないじゃない。それにあんた達をずっと見てたら、なんか興奮してきた……」

「ははっ。ありがとうお姉ちゃん。お陰でマナがバリバリ湧いてきたよ。それじゃあ作戦の第二段階を開始するね」


 ◇◇◇


 私はお母さんの深層意識でアストラルアビスレコグニッションを使って、お母さんの全身をスキャンする。イメージ的には頭から足先まで、順にCTスキャンの様な輪切りイメージを取得し、そこにプロットされた、浸潤したがん細胞を魔法でしらみ潰しに浄化していくのだが、当初の想像以上にしんどく、かなり地道な作業だ。時計は午前一時を越えたくらいだろうか。


「あき君。進捗はどう?」うしろで胸をゆっくり私の背中にこすりつけながら、姉のみのりちゃんが尋ねた。

「うん。今三分の一位かな」

「マナは足りそう?」

「このまま作業を続ける分には問題ないんだけど……このペースだと朝までに予定量の浄化が終わらないかも」

「どうする? とりあえず途中まででも良しとする?」

「だめだめ。予定通り、九割方は浄化しないと、かえってリバウンドが心配なんだ。お姉ちゃん。しんどいとは思うけど、もう少し頑張って」

「そっか、それじゃもうひと頑張り」そう言ってみのりちゃんは私の胸に両手を回し、私の胸をそのか細い指で擦り出した。

「あき君。どう?」

「うん。さっきよりはキュンキュンしてきた……」


 その会話を足元で聞いていた若葉ちゃんが口を挟んだ。

「まだマナ足りないの? 途中で切り上げたとしても、こんな事、後で早々出来る訳ないし……それじゃ勝負かけるわよ!」

「えっ? 若葉ちゃん。勝負って一体、何するの?」

 私も若葉ちゃんが何をするのか予測がつかなかったのだが、若葉ちゃんの逆サイドにいたミュウちゃんが、いきなり私の左足に抱き着いた。しかもこれ……もうワイヤーの感触がない!?


「若葉ちゃん。こういう事でしょ?」ミュウちゃんがクスクスと笑った。

「わかってるじゃんおばさん。もうだいぶ休憩したから私達も参戦してマナ増やせば、多少は作業もはかどるでしょ?」

 ああ、そう言う事か。だけどもう二人とも疲労困憊のはずなのに……


「ありがとう二人とも。僕もお姉ちゃんももっと頑張るからね!」

「うん。みのりもガンバ! あーあ、でもさっき下着替えたばっかりなのに……また汚れちゃうねぇ」ミュウちゃんがぼやいた。

「何よ。私なんかそんなの気にしてないわよ!」そう言いながら若葉ちゃんは、いきなり私の膝の裏側をペロペロ舐めだした。


 ふひゃあっ……ギュンギュンギュンギュン……

 

 そして午前三時を回った頃、作業的には三分の二を超え、浄化のペース自体は持ち直したが、肝心のマナ生成がだんだん弱くなってきている。さすがにみんなの疲労の色が濃くなって来たのだ。

「お姉ちゃん。さすがにこれ以上みんなに無理させられないよ。出来るところまでで手じまって、後は天に運を負かせるしかないかも」

 私の言葉に背中のみのりちゃんも考え込んでいる様だ。

「そうね。でも出来るだけギリギリまであがくわよ。さっき若葉ちゃんが言った様に、こんな事、そうそう出来ないからね……そうだあき君。左手貸して!」

 私の右手はお母さんの丹田に密着していて動かせないが、左手は空いていて自分の身体を支えていただけだったので、そのまま後ろに回して姉に掴んでもらった。


 すると、みのりちゃんは一旦深呼吸した後、その私の左手をおもむろに自分の下着の中に突っ込んだ!

「えっ、お姉ちゃん!?」

 今、私の左手は、間に布切れ一枚挟まず、姉の股間に密着している。

「いいからあきひろ。作業に集中しろっ! もう……お姉ちゃんの一世一代の大サービスだよ!」

「うわー、みのり大胆! それじゃ私ももっと頑張るね」

「あー、おばさんだけずるい!」

 そしてみのりちゃんに刺激され、ミュウちゃんと若葉ちゃんまで、私の弱い部分を刺激し始める。


「ふわーーー……」ギュンギュンギュンギュン……

「どうあき君。これで何とかなりそう?」みのりちゃんが、息も絶え絶えに私に問う。みのりちゃんだけじゃなく、ミュウちゃんも若葉ちゃんも、かなりマナでしびれてきてるよなこれ。確かにみんなの奮起でマナの生成はまた上がったのだが、やはりこれだけでは、最後まで作戦を完遂するのは難しいだろう。


「ありがとう。これで行けるところまで行くけど……朝までに九割方やり切るのは微妙かも……あとは、どのくらいリバウンドが来るかは運任せしか……」


「くそーーーっ! せっかくここまで頑張ったのに……何とかならないのかなぁ……」みのりちゃんの悲鳴とも嗚咽ともつかない切ない声が病室に響いた。

 

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