第16話 謎のマナ発生・・・

 その後、何回かミュウちゃんとデートをしたが、さすがに小学生の身で、そんなにボディタッチなど出来るはずもなく、あの時感じたマナの検証は全く進んでいなかった。それに……


「こらあき君。あんた私に内緒でミュウとちょくちょく会ってたでしょ?」

 お姉ちゃんにバレた。どうやら中学校で、ミュウちゃんがつい口を滑らせた様だ。

「あっ。でもエッチな事とかはしてないから! だからミュウさんの事怒らないで」

「当たり前でしょ。あの子は私の親友なんだから……まったくもう。あんたも今度は五年生か。ほんと色気づいちゃって。それにミュウだって中三ともなれば受験本番だし、邪魔しちゃだめだよ。そんなに女の子が好きなら、私がいっしょにお風呂入ってあげようか?」

「いや、いい。遠慮しておく」

「何よ。その言い方!」

 いや姉さん。あなたとお風呂に入ったりしたら、マナで身体がはじけ飛びます。


 だがどうしよう。これでミュウちゃんルートでのマナの調達検討は当面頓挫だな。彼女と大っぴらにエッチを試すには、やはり私が成人するしかないのか……。

 そんな妄想を抱えたまま、私は五年生に進級した。

 

 ◇◇◇


 五年生になり二か月ほど経った頃、学校で変な噂を耳にした。何でも私が六年生の乱暴者で有名な奴に目を付けられているというのだ。そんな恨みを買う覚えは全くないのだが……気にしても仕方ないので無視していたら、向こうから呼び出しを食らった。それにしても、放課後に体育館裏とかいつの時代の話だよ。


 私は、まあ普通の小学生並みに成長はしているが、腕力は少々心もとない。だが頭脳は現役賢者のレベルのままなので、たとえ乱暴者であったとしても小学生相手に気後れしたりはしない。そんな訳で言われるまま、放課後一人で体育館裏に行くと、たしかに頭の悪そうな上級生のガキが三人ほど待っていた。


「さとなかあきひろってのはお前か?」三人の中の、ボスっぽい奴がそう尋ねた。

「はい。それであなたは?」

「うっせー。口利くな! いまからお前をシメる」

「お前かって聞いて来たのはあなたですよね? だから答えたのに……それでなんで僕がシメられないといけないんですか!」

「だからうっせーって。お前は俺の大事な女二人も泣かせやがったんだ。ただで済むと思うなよ!」

「いや、その二人の女って一体……心当たりないんですけど」

「しらばっくれやがって。佐々岡ミュウと木下若葉の事だ! 知らねえとは言わせねえぞ!」

 ミュウちゃんと若葉ちゃんだって? いやいや二人ともここ数か月顔も見てないぞ。


「何かの勘違いじゃない? 二人ともしばらく会ってないし……だいたい君、どんな関係あるの?」

「畜生! 佐々岡ミュウは俺の姉ちゃん。木下若葉はクラスメートだ。分かったか!」

「姉ちゃんって……ああ、君もしかしてカツヤ君? それに若葉ちゃんもクラスメートだとは判ったけど、それで何で僕?」


「だーかーらー。お前が会ってやらなくなったら、姉ちゃんすっごいしょげちゃってて、体重も減っちゃってるんだよ! それに若葉は、せっかく俺が告白したのに、お前と将来を約束してるってほざきやがって……」

「あちゃー。でもそれは逆恨みでは……」

「うっせー。問答無用だ。歯を食い縛りやがれ!」

 叫びながらカツヤ君が僕に殴りかかってきたのだが、今の僕にはそれに反撃するだけの碗力はない。彼の拳はそのまま僕の腹のど真ん中を直撃し、僕はそこに膝を突いた。

「くっ……」

「今のは姉ちゃんの分だ。そんじゃ今度は若葉の分!」

 

「待ちなさいよカツヤ! あんたどういうつもり?」

 まさに二発目を見舞われ様とした時、後ろから声がして、振り向いたら若葉ちゃんがいた。

「なんだよ木下。おめえには関係ねーよ」カツヤ君がちょっと驚きながらそう言った。

「関係なくないわよ。それ以上あき君に手を上げたら、先生にチクるかんね」

「違うよ木下。お前がこんな下級生に入れあげて俺の誘いを断ったしするから……」

「ふん。あんたのそういう男らしくないところが大嫌いなの。振られたんなら、潔く認めて、男を磨いて次に備えなさいよ。ほらほら、さっさと散らないとほんとに先生呼ぶわよ」

 そう言いながら若葉ちゃんは、携帯用の非常ブザーを頭上に掲げた。


「くそ。いくぞっ」そう言ってカツヤ君たちはその場を後にした。


「あーあ。あき君。大丈夫? あなたも男の子なんだからもう少し頑張りなさいよ」

「ははは。すんません。暴力は苦手で」

「ま、それがあなたのいい所かな。久しぶりね。元気にして……ないわね」

 お尻が泥だらけの僕を見て、若葉ちゃんが苦笑した。僕は助けてくれたお礼を言って、その場を去ろうとしたのだが、若葉ちゃんに引き留められた。

「待ちなさいよ。せっかく二人になったんだし、久しぶりにちょっとお話しよ」

 

 若葉ちゃんは、その優雅な見てくれとは違いかなりの肉食系だ。私も小学生としての一線は越えない様に身構える。

「そんなに身構えなくても、取って食ったりしないって。それで……どう。お姉さんとはラブラブしてるの?」

「あ……いや。そんなにラブラブとは。でも仲はいいよ」

「何よ。あんだけあき君の子供産むとか騒いでたくせに……やっぱり成長すると、常識の枠に囚われちゃうのかな。でもそれは、私があき君と結ばれる可能性は大きくなったって事だよね? それとも……カツヤのお姉さんの方がいいのかな?」

「やっ、若葉ちゃんそれどこで?」

「カツヤは馬鹿だから、私が聞くとなんでも答えちゃうのよ。いいわよね。巨乳のお姉さんとも付き合ってたんだ」

「でも、お姉ちゃんにバレてもう会ってない……」

「ほんとにヘタレね。好きだったら自分で獲りに行きなさいよ。でもまあ、そうされると私は困るけど。それでそのカツヤの巨乳のお姉さんとはヤッたの?」

「ヤル訳ないでしょ! 僕まだ小学生だよ?」

「そうだよねー。うん、それじゃあき君の初めては絶対私が貰うから。それまで大事に取っておいてね。もちろんみのりお姉ちゃんにもあげちゃダメだよ」

「……あげないって」

「ふふふ。それじゃ、ここで私にくれる? 心配しないで。私も初めてだから」

「そんな……若葉ちゃん。そんなのダメだよ!」

 若葉ちゃんがゆっくり私の両肩に掌を置いて顔を近づけてくる。だが私はその両手を掴んで振り払い、丁度彼女と向かい合って両手を握る形になった。

 それにしてもすごい力だな。私が振りほどこうとしても若葉ちゃんの握力から逃れられない。ややもして、以前もあった様に彼女の頬が紅潮して眼が潤んで来るのが分かった。


 だめだ。このままじゃ食べられちゃう……そしてその時だった。

 握りあった両掌に、針でつつかれる様なくすぐったい様な感覚が伝わった、

 ああっ。これって……マナか!? ほんのわずかだが、これは確かにマナだ!

 どういう事だ。ミュウちゃんだけじゃなくて、若葉ちゃんまでマナが造れるようになったのか? 私の頭は混乱した。

 

 ああ。だが、このまま若葉ちゃんと成就したら……もしかしてマナが造れるのか?

 そんな思いがふと頭をよぎった。いや、だけどこれって未成年不純異性交遊……賢者として今、一線を越える訳には……


「ああ、木下ここにいたか!」大声を出して男の先生が駆け寄ってきたので、若葉ちゃんは私の手を慌てて振りほどいた。

「あれ先生。どうしてここに?」

「いやクラスの女子が、お前が佐々岡に引っ張られて行ったって言いに来てさ」

 ああ、先生。それ違います……とはいえ助かったな。今の私には、まだ一線を越える心の準備が出来ていない。それに起こりうる結果をちゃんと予測分析してから事に臨まないと、賢者の行いとは言えない。


 それにしても、ミュウちゃんに続いて若葉ちゃんまで、微量とはいえマナを造り出せるとは……早い事この謎を解かないと、なにか大変な事になりそうな予感ばかりが先に立った。

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