方向音痴編 3
王様の視点
「セリヌンティウス…」王は冷徹な表情で、死にゆく友人の前に立つメロスを見つめていた。メロスが無事に戻らなかったことは、すでに予測できていたが、ここまで壊滅的な結果になるとは思わなかった。
メロスが、最後の瞬間にセリヌンティウスの命を救えなかったことに心底悲しんでいることが、王にはよくわかった。だが、それをどうすることもできなかった。彼の怒りと絶望が一気に爆発するのも無理はない。
メロスは今、何を考えているのか。それが、王には恐ろしい予感として襲ってきた。
「お前のせいだ、すべてお前のせいだ!」メロスが突如として叫び、身の回りのすべてに向かって暴れ始めた。
王はその声を聞いても、冷静でいられなかった。王国全体にメロスの怒りと憎しみが浸透していくのを感じる。彼の言葉がまるで雷のように響き渡り、その怒りの矛先がすべてを破壊しようとしているのがわかった。
「早く止めろ!止めろ!」王は叫んだが、メロスはもう誰の声も聞かないようだった。
メロスの視点
「セリヌンティウス…!」メロスは両膝をつき、無力感に押しつぶされそうになった。どんなに走り、どんなに努力しても、彼の命は救えなかった。それどころか、途中で引き起こした混乱と破壊が、ますます悲しみを深める。
「どうして、どうして間に合わなかったんだ!」涙が頬を伝う。しかし、それだけでは足りないと思った。セリヌンティウスの死が、自分の力不足のせいだと思えてならない。
その怒りと無力感が爆発し、メロスは立ち上がった。体中に怒りがみなぎり、冷静さを失っていた。誰もが見守る中、メロスはその力を抑えきれなくなっていた。
「全てを壊してやる!」メロスは叫び、足を踏み出す。その一歩が、地面を揺るがすほどの力を生み出し、王宮の塔の一つが倒れた。次に足を踏みしめた瞬間、街の壁が崩れ、商人の店が爆発的に吹き飛ぶ。
「もう、後悔なんかしない!」メロスは暴走し、怒りのままに走り続ける。彼の足元から、ひび割れた地面が一層深く、広がり、ついには近くの橋が崩れ落ちていった。
すべてがメロスの怒りによって引き起こされていることを、王は目の当たりにした。それと同時に、王国が次々と崩れていく様子を見て、彼はどこか無力感を覚えた。これがメロスの暴走の結果だ。
王様の視点(続き)
王はメロスが次第に手の付けられない存在になっていくのを感じ、思わず震えた。メロスが暴走し続けるその軌跡は、まるで爆発的なエネルギーが無限に続いているかのようだ。その怒りは制御不能で、王国のあらゆるものがメロスの走りによって破壊されていく。
「やめろ、メロス!どうしてこんなことを…!」王は叫んだが、その声はメロスに届かない。メロスの走りはもはや王の言葉も耳に入らず、彼が通るところにはすべてが崩れ落ち、炎が燃え上がる。
王宮の大広間が崩れ、衛兵たちが倒れ、民衆の声が絶え間なく響き渡る。メロスが一歩踏み出すごとに、王国が壊れていくのだ。道路が割れ、塔が倒れ、村々が崩壊し、王国全体が、今やメロスの怒りの下で無惨に崩れていく。
「すべて…すべてはお前のせいだ!」メロスの叫び声が響き渡る。
そして、王はついに理解した。メロスはもはや救いようのない存在になっていた。暴走した彼の走りが引き起こす破壊は、止められるものではない。王宮すらもその渦に飲み込まれていった。
メロスの視点(暴走の極み)
メロスの目の前に広がる王国の姿は、もはやかつての栄華を留めていなかった。王宮の塔が崩れ、街の中心が大きな亀裂を生み、炎がどこからともなく湧き上がっている。
「これで、すべて終わる!」メロスは再び全力で走り出した。その走りによって、王国の最後の城壁が崩れ、地下道にまで影響を及ぼす。
「もう誰も…止められない!」メロスは自らの怒りを全身で表現し、王国が完全に崩壊する様子を見守ることしかできなかった。
そして、王国の広大な領土が一気に崩れ去り、無数の瓦礫が大地に沈んでいった。王国は、かつて栄えた文明と共に、メロスの一歩によって消え去った。
その瞬間、メロスは自分が失ったもの、そして今失われたものの大きさに気づく暇もなく、再びその足で荒れ果てた地を踏みしめた。
王様の最期
王は、その時ようやく理解した。彼が犯した過ちと、メロスが追い求めた怒りの先に待っているもの。それは、無意味な破壊だけだった。
「これで終わりか…」王は呟きながら、目の前の瓦礫の中に消え去った。王国の崩壊を目の当たりにし、全てのものが崩れ去ったその瞬間、王もまた、自らの責任を感じながらその命を終えた。
〜〜〜
メロスが責任転嫁してて草
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