ダンクシュート

斗花

第1話

やっぱり言えない……!

俺は毎日学校に行く度に同じように悩んでいた。


「伊達、はさみとってくれる?」


「えっ?!あ、あぁ……」



二学期が始まってはや二週間が経つ。

俺達D組は文化祭でお化け屋敷をやることになった。



俺の名前は伊達だて朝長ともなが

もう引退したけどバスケ部のエースだった。


……なんでも良いんだけど、自慢は挟んでおきたい。



「伊達、ちょっと良いか?」


野上に呼ばれ作業中、廊下に出る。



野上というのは野上優二のこと。

中学からの友達でサッカー部のキャプテンだった。


高校では三年間、同じクラス。



「お前、告白したんじゃなかったのかよ?!」



廊下に出た瞬間、野上に小声で怒られる。



「……できなかった」



「はぁ?!

一昨日あんだけ練習して流星に迷惑かけたのに?!」


「……まぁ、なー」


「まぁなー、じゃねーよっ!流星!ちょっと来い!」



名前を呼ばれて頭をかきながら四谷流星が廊下に出てくる。


「なんだよ?」


「聞いてくれよ!」


流星はマジックをまわしながら野上の話を聞いていた。


「……まじかー、言えなかったかー」



そして流星は俺の肩に手を置く。



「まっ、焦るな。自分のタイミングで、な?」


「……りゅうせい!」



流星は優しい。しかし、野上は厳しい。


「流星!甘やかすな!

こいつはもっと焦った方が良いんだ!」


流星は野上の言葉にダルそうに答える。



「だって、少がねーだろ。言えないもんは言えない」


「だけど、こいつが俺達に『明日こそ告る』って言ってからもう、三週間近く経ってるんだぞ?


こいつの明日は何回来るんだよ?!」


「あっ、スズー!」



野上の言葉を完全に無視して流星は自分の彼女に話しかける。



「流星先輩!お昼、誘いに来ました!

……あ、でも、お話し中でしたか?」


流星の彼女は一個年下の坂本鈴音すずねちゃん。


「いやー、今終わったから。さぁ、行くかっ!」



そう言って彼女の肩に腕を回す。

……とにかくラブラブなんだよな。



「先輩!皆、見てます!」


「えー?」



そして、購買に向かいながら流星が俺に言った。



「彼女もいいもんだぞ?」



しばらくするとクラスメイトの横溝美波が俺と野上の間に入ってくる。


「もう片付けるよ」


「おぉー、今、行くー」


野上は片手を挙げて教室に入りかける。


「あ、あのさ、野上!」



そんな野上を横溝が引き留める。



「文化祭の一日目、良かったら一緒にまわらない?」


「あぁ、良いぞ」


野上は迷うことなく笑顔で答える。


ちなみにこの二人は付き合っている。


目の前で連続でカップルのイチャイチャをガッツリ見せ付けられて、俺は一人廊下に残されてしまった。



「……伊達?何やってんの?」


「……山本。いや、別に……、」


「早く中入りなよ」


「えっ?!あ、あぁ」



野上に怒られる原因を作った女子が俺を呼びに来た。



「あ、あのさ、山本」


「ん?なに?」


「……いや、その……。文化祭、頑張ろう、な」


「?うん、頑張ろう」



そう言って戻ってしまう山本を見て俺は肩を落とす。

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