第38話
こうなってしまった以上、私の塾通いは目に見えていた。ただ、私は知っている。
あの場所が地獄に最も近いということを……。
「らんちゃーん、お邪魔しまーす!」
「……はーい」
ノリノリの弥生ちゃんが私の部屋に入ってきた。
「……?どーした、そんな暗い顔して。
らしくないよ?」
「……弥生ちゃーん!」
弥生ちゃんの顔を見たらなんだかすごく落ち着いて思わず抱き着いてしまった。
「ぅわ!なになに?!どーしたっ?!」
「大事件、発生だよー!」
私の話を聞いた後、弥生ちゃんは笑ってお酒を飲んだ。
「なんだー、そんなことか」
「そんなこと……?」
「だってそうでしょ?
勉強なんて頑張ればどーにでもなるよ」
……やっぱり、デキる人は違う。
「私は玄兄や弥生ちゃんやゆきくんとは違うもんっ!」
「玄や幸也はどうか知らないけど私は相当、頑張ったよ!」
思い出すように斜め上を見上げた。
「毎日、5時間くらいは余裕で勉強してたね」
「ごじかん?!」
「学校が四時くらいに終わってー、そんで塾が五時から。
二時間勉強して、帰宅してからご飯食べて、お風呂入って、そのあと部屋にこもって夜、十二時まで」
……なんでそんなに淡々とはなせるの……?
「だからさ、蘭ちゃん。絶対だいじょぶっ!」
笑顔でそう言うけれど、いやいや今の話を聞いて余計に不安になりました。
お母さんに夜、その話をするとなぜか秀にキレられた。
「お前、まじ受験なめんなよ」
……最近、こいつ機嫌悪いな。
「とりあえずギャラスタのライブは行ってる場合じゃねーよ。
それに、毎日毎日、弥生ちゃんとくっちゃべんのも辞めろ」
「言われなくてもライブは辞めるよ!
それに、弥生ちゃんはたまにしか来ないもん!八つ当たりしないでっ!」
「八つ当たりじゃねーしっ!まじふざけんなよ!」
「そーゆーこと言ったらいけないんだよー!」
「やめなさいっ!」
お母さんが怒鳴って、秀は食器を下げて上にあがった。
「……蘭、ホントに桐高に行く気なの?」
「うんっ!」
「蘭は秀見てるから分かってると思うけど……。
すごーく、大変なことなのよ?」
「分かってるよ。でも、私頑張るから!」
お母さんはため息をつく。
「……一学期の成績がオール3以下だったら桐高は諦めなさい。
塾の話はお母さんからお父さんにしておく」
「……はいっ!」
そして、この日から私の闘いは幕をあけるのですっ!
「へぇー、蘭も桐高かぁ」
「とりあえず、第一は」
「お兄ちゃんはお前の味方だからな」
私が玄兄と電話していたら、弥生ちゃんが参考書を持って部屋に入ってきた。
「……相手、玄?」
小さい声で弥生ちゃんが聞いてくる。
私が頷くとジェスチャーで電話を代わるように頼まれた。
電話をスッと、弥生ちゃんに渡す。
「…もしもし、玄??」
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