第8話
そして、その日の帰り道で晴海に言われた。
「私、愛子先輩、苦手」
「え?なんで?」
「だって、怖いんだもん」
晴海の言葉が理解できなかった。
確かに愛子先輩はゆきくんの彼女だし、私も好きではない。てゆーか、ライバル?
でも優しいし、明るいし、綺麗だし、ましてや怖さなんて感じたことはなかった。
「だってさ、あの人、いっつも-」
そして私の顔を見て晴海が口を閉じる。
「……どーしたの?」
「何でもない!とにかく、怖い!」
話を流されてしまった。
「……ただいまー」
家に入ると女物の靴があった。
「おっかえりー」
「弥生ちゃん!」
私はリビングに居た弥生ちゃんの元に急いで駆け寄った。
「作戦会議しよう!」
私はそう言って弥生ちゃんの腕を引き階段を上がった。
「ただい、……!」
そのとき丁度秀が帰ってきた。
私の家の構造上、階段から玄関は丸見え。
「あ、秀ちゃーん。焼酎セットよろしく」
弥生ちゃんはそう言って私のあとに付いて行った。秀はがっくりうなだれている。
……ザマーミロ!
秀は弥生ちゃんの指示どおり、氷と焼酎とソーダを持ってきた。
「はい、よくできました。下がってよし」
弥生ちゃんはよく家に来るから自分の焼酎を秀の部屋の小さい冷蔵庫に入れてる。
「で、蘭ちゃん。幸也のハートは掴めてる?」
「それがさーあ、全くダメなんだよねぇ……。
ゆきくん、愛子先輩といるし」
その時、晴海の言葉がふと頭に浮かんだ。
「そうか、意外と手強いな、愛子。
じゃあさ、もう『ゆきくんと帰りたい!』とか言っちゃえば?
何も分かってないフリして」
弥生ちゃんは棒でお酒を掻き混ぜながら言う。
「二人になれたらどーすればいいかな?」
すると、弥生ちゃんがニコーと笑った。
「靴紐を渡す」
私は目を瞬きさせた。
「なんで?」
弥生ちゃんが一気にお酒を飲んだ。
「私が中学生の時と何も変わっていなかったら、靴紐の交換を好きな人とする、みたいな風習があんだよね。
でも恐らく交換は愛子とするでしょ?
だーかーら!幸也には『ゆきくん、気持ちだけでも受けとって!』みたいな感じでいけば、あぁ蘭ちゃんって健気だなぁ、って、確実にポイント上がるから!」
「そんな簡単にいくかなぁ……?」
私が呟くと弥生ちゃんは私に秀が後から持ってきた烏龍茶を注いだ。
「あいつの今まで付き合ってきた女はチャラチャラしたのばっかりだったから、蘭ちゃんみたいなのは新鮮で、ぐっとくるはず!」
……確かにゆきくんの歴代元カノは調査したとき、みんなチャラかったんだよね。
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