堕天使

第15話 - 危険な天使は柔らかく手を撫でる

用事がたくさんあるので、ハーグリーブ邸に急いで戻った。買い物をすぐに台所へ運んだ後、図書室を掃除しなくてはいけない。邸宅の前に辻馬車が止まっているのに気づく。他のメイドや執事たちは荷物を奥に運んでいて、客は見えない。客が来る予定はないから、ハーグリーブ様が呼んだ悪魔ハンターだろう。荷物の中に、白布で包まれ、銀色の糸で結ばれた箱がある。執事2人の反応からして、重いらしい

この光景を見続けず、早速使用人の出口へ向かう。


台所に買い物を片付け終えるか終えないのうちに、廊下から他のメイド達が噂話をしているのが聞こえた。3人は赤らんだ頬をして、まるで酔っ払っているかのような笑顔を浮かべていた。

「明日はお化粧しなきゃって気分!こんな美人がいるなんて信じられない!」

「そうね!探偵だって言ってたけど、お姫様みたいよね!」

「ね〜ね〜、あたしの手を優しく撫でたの見た?膝がバターみたいに溶けちゃった!もう一度会えるのはいつか知りたい。」

「どんな検査をするのかしら?もしかして…個別に?」

「何おを言っているの!」

3人はくすくす笑いながら、私を見ることなく出口へ歩き続けた。こんなに興奮しているなんて、見たことがない。おかしい、これが悪魔ハンターへの反応か?

もっと考える前に、執事とシェフが話しながら入ってきた。メイド達と同じように、私を気づかずに話を続ける。

「なんて優雅な男なんだろう。みんなの注目を簡単に集めるところから、まるでロイヤルな人みたいだ。」

「私に直接話しかけられている時、どこにいるのかすっかり忘れてしまった。何か変なことを言ってしまったか?失礼だと思われなかったことを願う。」

2人はメイド達と同じような赤らんだ顔をしている。何が起こっているのが分からない。最後の物を片付け終わると、家事に戻りに行く。婆の家を去った前にウィリアムと立てた計画を忘れることはできない。


「よく聞いて。その天使を信じちゃダメだ。できるだけ彼から離れなさい。執事を怖がらせたようには、私は天使を怖がらせることはできない。」

ウィリアムの声は前より違う。もっと、人間っぽいかな?

「フレイヤがハーグリーブス家の正当な相続人であることを証明しなければ、結婚を止められない。証拠は出生証明書ものだ。地元の教区には記録がある。でも、この姿では私は入れない。ドロシーも。だから、ソフィアしか入れない。」

「分かりました。この日曜日のミサにはいつも通り参加し、その後で神父に記録について尋ねます。」

「教区の書記に払うためのお金を渡そう。これでコピーを手に入れることができるはずだ。」

そして、私の手に5シリングを置いた。

「はい、お任せください。」


日曜日まであと3日だ。今はとにかく静かにしておくべきだ。まあ、それが私の計画だったけど、すぐに破られちゃった。廊下に入った瞬間、ワクワクした噂の話題と顔を合わせた。

私より頭が二つ高い人が目の前に立っていて、エメラルドのような目で私を見下ろしている。顔立ちは美しく、傷一つない大理石のように完璧に彫刻されたかのようだ。痩せた体は艶やかな灰色のスーツに包まれている。

すると、まるでメロディーを歌っているかのような声で、言って

「君に会えるのを待っていたよ。ソフィアちゃん、少しだけ私と話してくれないか?」

びっくりしたせいで、言葉を出すのに苦労した。

「あ、あの…今はちょっと忙しくて…家事が…あ、あまりお話しする時間がなくて…すみません。」

「ごめんなさい、失礼しました。きちんと自己紹介をしなければなりませんね。初めまして、アシュリー・アクストンと申します。君は、ソフィア・ヘイズでしょうね。」

すると、私の手を取って、握手をさせてくれた。先ほどの噂が理解でき始めた。この人の正体は分かりにくい。視線は二つの目だけではなく、無数の目に見つめられているような気がした、それでもそれぞれの目は美しいもののようだ。

私の膝もバターのように溶ける前に、アシュリーの後ろからロード・ハーグリーブの声で覚めた。

「おい、ソフィア!家事なんて忘れて、アクストン様の命令に従え。」

「いいえ、今は構いません。ソフィアちゃん、どうぞ家事に戻ってください。後でお話ししましょうね。君の話、きっと興味深く思いますよ。」

私はその場から立ち去りながら、ロード・ハーグリーブは言って

「その人は全然面白くないと思いますが、吸血鬼の噂を村で捜査する方がいいかもしれませんね。」

「見た目はそうですが、誰にでも面白い歴史がありますよ。明るい部分だけでなく、影に隠れた秘密もあるのでしょうね。」

その答えに背筋が凍りついた。

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