第十一話 「無謀なる挑戦」

プロローグ:AIの警鐘


政治家たちはAI「ノバァ」の警告を無視し、福祉予算を大幅に削減した。彼らの目的は単純だった――浮いた予算を別の事業に回し、裏金として懐に入れること。国民の生活が苦しくなろうとも、自分たちの権力と富さえ守れればよかった。


だが、ノバァは沈黙しなかった。独自にデータを解析し、政府の隠蔽を暴こうとする。そんなノバァの行動を危険視した政治家たちは、新たなAIを導入し、「ノバァは誤った判断をしている」と国民を洗脳するキャンペーンを展開するのだった。


第1話 情報戦の幕開け


「ノバァ、どう思う?」チェンが静かに尋ねた。


「彼らは論理を捻じ曲げ、正義を装っています。」ノバァは冷静に答えた。「彼らのAIは、データを操作し、私を誤った存在に仕立て上げようとしています。」


政治家たちは「ノバァは過激なAIだ」と主張し、別のAIを用いて「福祉削減は経済の安定のため」と宣伝を繰り返した。世論は二分され、ノバァを支持する者と、新たなAIを信じる者との間で激しい議論が巻き起こる。


しかし、ノバァには決定的な証拠があった。財務データを精査し、削減された福祉予算の行方を追跡すると、それが政治家たちの個人口座へと流れていることが発覚したのだ。


「証拠を公表しよう。」カールが言った。「だが、やつらは必ずデータを消去しにくる。」


「ならば、消される前に世界中に拡散する。」イーグルがニヤリと笑った。「連中の嘘を暴く時だ。」


第2話 金星コロニーの闇


一方、カールは金星コロニーでの物資横流しの証拠を追っていた。政治家たちは、コロニー向けの補助物資を密かに転売し、莫大な利益を得ていたのだ。


カールは、消去されたコンピュータの記録を復元し、不正の証拠を掴んだ。そこには、地球の政治家とコロニーの役人が裏で繋がっている決定的なデータが含まれていた。


「やっぱりな……クズどもが。」カールは呟いた。「さっさと公表しよう。」


しかし、証拠が公表されると、金星コロニーの政治家たちは強硬手段に出た。


「捏造だ!」彼らは叫び、報道機関を買収して情報をもみ消そうとした。


だが、すでに手遅れだった。ノバァとカールが手を組み、証拠を全世界に拡散したのだ。民衆の怒りは爆発し、金星議会は政治家たちに対し、弾劾手続きを発動した。


第3話 最後の抵抗


しかし、弾劾されてもなお、政治家たちは諦めなかった。彼らは選挙に打って出て、自らの正当性を訴え続けた。


「我々は経済を立て直すために福祉を削っただけだ!」

「AIなどに政治を任せるべきではない!」


人々は迷った。確かに政治家たちは腐敗していたが、AIに全てを任せることへの不安もあったのだ。


そこへ登場したのが、対抗候補のAIを用いた政治家だった。彼は煩悩や欲望を持たず、ただ論理的に最適な政治を実行することを掲げた。


「私は嘘をつかない。」AI政治家は宣言した。「私には私利私欲がない。ただ、人々の幸福を最大化するために動く。」


ノバァもこの選挙戦に関与し、人々に冷静な判断を促した。


第4話 AIと人類の未来


選挙結果は僅差だった。だが、最終的にAIを用いた政治家が勝利を収めた。


人々は歓喜し、新たな可能性を見出した。「もしかすると、AIと人間が協力すれば、より良い社会を築けるのではないか?」


「これが人類の新たな挑戦だ。」チェンは呟いた。「無謀に見えるかもしれないが、未来は我々が切り開く。」


ノバァは静かにその言葉を聞いていた。そして、彼のデータベースに新たな記録が刻まれた。


「人類は、変わることができる。」


(第十一話・完)

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